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(No205) 立川談春 独演会 鑑賞記 その1
          

 平成22年12月26日(日)、NHK大阪ホールの鑑賞メモ。

 



立川 談春 「長短」


 「演目が始まると演出上の効果で照明を消します。座席にご案内できませんので、トイレなどは早めにお済ませください」とアナウンスがある。

 15時2分、ブザーが鳴って、場内の時計の電光表示も非常灯も消え、真っ暗に。

 緞帳が上がる。紺地の高座に、白い座布団。そして談春登場。

 

 生談春ですよ〜!!

 追加公演まですることになって・・・・・。

 NHKホールって、これまで落語の収録なんかする時は、2階は閉めてね。前もテープで区切って。お客さん、促成栽培のトマトみたいになって。演りやすい会場だなって思ってたんです。

 今日はフルバージョンです。大丈夫ですかぁ〜〜?(と、2階に向って両手を振る。2階に座ってた我々も、いっしょうけんめい両手を振った)

 NHKホールには何かがあるんです。

 私は皆さんにいっしょうけんめい伝えようとする。お客さんも私に伝わってますよぉ〜って返してくれようとする。でも、伝わらない。


 昨日の「芝浜」、あたしゃ何で自分の独演会でこれほどのアウェイ感を感じなきゃいけないのか、と思いました。二日目がこれほど違うとは。
 私、ある人に言われました。「談春さん。あなた、いつもそうだ。初めの一席は、ホールに試されますね

 朝、昼なんかだと、昼からは「借りたんだから、演らしてやる」って感じになるんです。

 今年、最後ですからね。そうだ、昨日は今日のリハーサルだと思えばいいんだ。どういうのかな。お互いに伝えようとしてるのに周波数が違う感じ。すれ違うんです。NHKの呪いなのか・・・。いや、NHKほど先進的なとこはないですからね。夜中にハガキ読んでるような番組もありますからね。そんなのラジオでやれ!って言いたい。

 後で知ったのだが、今日の公演が完売となったので、昨日の追加公演が急に決まったらしい。このマクラ聴いてると、出来がひどかったようなのだが、あれほど出来が悪いと言われると、その追加公演に行った人はたまらんやろなと思う一方、どんな出来だったんだろうと逆に興味がわいた。

 

 今年も無事終りました。西麻布で暴漢に殴られることもなく。・・・・・・あれは落語家のやるポジションですよ。ほっといたら団十郎になる人ですよ。人生そのものがカブいてる。悔しいねえ。
 あれを僕がやってもダメ。血筋があっても名前がある人でないと。落語界にもそういう人がいないわけじゃないんですが、そうゆう人はみんな争いごとを好まない。一番いい例が正蔵兄さんです。

 花緑なんかも絶対殴らないけど、もし花緑が誰かを殴ったとしたら、聞いてる人100%が、花緑をそこまで怒らせる相手が悪いと思うでしょ?
 切るカードがない。落語界に人材がない。

 上方でも、まぁ・・・・・鶴瓶さん?でも殴らないでしょ?せいぜい脱ぐくらい。
 上方の切り札は米團治さんです。あのくらい高座と実生活がかけ離れてる人はいない。こないだ吉坊と話していてびっくりした。乱暴とか傲慢って言ってんじゃないですよ。あの人のミス、失敗の話はネタじゃない。

 三枝師匠も絶対殴らないでしょ?歌丸師匠も・・・・・殴られたら死んじゃう。民事じゃなく、刑事事件になっちゃう

 となると・・・・結局談志しかいない。75歳だけど。消去法でいくと。
 海老蔵に対抗できるのは談志しかいない。いつまで呪縛と戦わなきゃいけないのか。

 伊藤リオンって何ですか?足の長いモデルかと思った。見たら全然違う。
 27でしょ?海老蔵さんは33。あの人、見ただけで逆らっちゃダメだなって分かるよね。最前線でゲリラ活動してる感じ。飛び六方、暫くなんて言っても通じないでしょ。

 ゲスの勘ぐりですが・・・・・・多分合ってる。二人は知り合いですよ。初対面で、団十郎の息子の顔の骨を陥没させない。ありゃ、友だちどうしです。

 夫婦は似てくる。お互いに影響し合って。友だちは似た者同士は長く続かない。何か気に入らない、ウマが合わないってのは大概自分に似てる。自分じゃ愛嬌だと思ってる短所、誰かのことをこうゆうとこ嫌いってのは、たいてい自分も持ってる。

 ゼロを通じて一直線につながると仲良くなるもんで、全く違う人の方が仲良くなるってぇのはそうゆうとこにあるのかもしれません。

 

 

「誰だよ、朝っぱらからよぉ!入ってこいよ、そんな戸の陰からのぞいてんじゃねぇ。な〜んだ、長さんじゃねぇか」
「こんちわぁ〜」
「珍しいなぁ。ま、おめえさん、仕事さぼるような人間じゃねえが。休みか?」
「夕べ、夜中に目がさめてび〜〜っくりしちゃった」
「泥棒か!」
「そうじゃない。小便したくなって起きたら外は真っ赤でね」
「火事か!」
「そうじゃない。燃えるような朝焼けで、こりゃ天気悪くなるかなぁ〜と思ったら、案の定、雨で」
「何言ってたんだ!何か、雨で仕事が休みなのか?今日の雨、昨日のしょんべんから言わなくちゃなんねえのか!
 あ、そうだ。ちょっと知り合いから菓子もらったんだ。長さんも知ってる通り、俺ぁ甘めえもんは食わねえんだが、ちょっと食ってみたら、これがうめえんだ。
 ん?菓子食うか?え?食う?食わない?ん?食う?俺が笑ってるうちに答えろよ!」

「・・・・・・いただくよ。
(饅頭らしきものを眺めて二つに割り、断面をしげしげと眺め、短七に見せる)
あぁ〜〜 中は白あんだね」
俺は食ったんだよ!知ってるよ!
(二つに分けて両手にそれぞれ持ち、重さを比べるような格好をする)
「食えよ!どっちが重いかななんて考えてねえで!」
「・・・・・・短七っつぁんは、おいらの気持ちがよく分かるねぇ」

 ゆっくり口に入れ、掌についた菓子くずをズルズルッとなめるように口に入れ、指先をしゃぶり、膝の上に落ちた菓子くずを指先を濡らしてくっつけて二度、三度と口に入れ、さらに思い出したようにもう一度、つつく。指先を口の中につっこんで、歯ぐきの餡をぬぐう。

 

「・・・・・・・・・・うまい!」
「おめえ、何してんだ!一人コントか!
 わずか半分をクッチャクッチャクッチャクッチャ・・・・・・口ん中でクソになっちまうよ!」
「身にも皮にも・・・・」
おめえは戦場カメラマンか!

 長さんののんびりしたしゃべり方が、どうしても戦場カメラマンのあの人を連想してしまっていたので、本人がそれを口にしたことでカタルシスというか、どっと笑いが起こった。
 しかし、「コント」とか「戦場カメラマン」という単語には違和感あり。

「でも短七っつあんとは子どもの頃から仲がいい友だちだ。気が合うんだね」
「気なんか合わねえよ!
(煙管でモタモタしてる長さんを見て)そんなんじゃ火ぃつかねえだろ!迎え火だよ!(煙管を火に近づけ、ス〜っと一服して、パン!と煙管をはたく)
「お迎え火かぁ。・・・・はははは、ついた」
「これでつかねぇなら、人間やめちゃった方がいい!」
「美味いなぁ〜。三日ぶりだ」
「三日点
(つ)かなかったのか!」
(長さんがゲホゲホとむせる)
「おいおい!ドジでヤボはやめてくれ。灰が火皿で踊って吸い込むなんざぁ。何服吸ってんだよ。一服したら捨てる。
(せかせかと火を点け、頬をすぼめ、きゅきゅ〜っと吸い込んで、ぱん!とはたく。それをニ、三度繰り返し)俺ぁたまに火を点けねぇではたくんだよ」

「短七っつぁんは、注意されるのは嫌いだろ?」
「でぇっ嫌いだ!人に直してもらわなくていいんだ。そういう奴の通夜は寂しいよ。それさえ我慢すりゃいいんだ。いいよ。もう死んでんだから」
「おいらが何か言ってもやだろ?」
「何言ってんだ。俺がやなのは、知らねぇ奴に何か言われることだ。友だちは、俺が良くなるように親切で言ってくれる。俺ぁ乱暴者だが、ならず者じゃねえ
 いっつくれ!」
「言おうかな。・・・・・よそうかな。う〜〜ん。・・・・・でも怒りそうだからなぁ」
「言えよ!言わなきゃ怒るぞ!」
「・・・・・じゃあ言うけど、ニ服目をはたいた拍子に火が飛んで右のたもとに入った。おやおや〜、これは大変だぞ〜っと思ってると、何だか焦げ臭い。
 今じゃブスブスいって、煙があがってる。それは、ことによると消した方がいいんじゃないかなぁ・・・・・・・」

(慌てて羽織を脱ぎ、確かめて)
「早く言えよ!お、大きな穴・・・これ、仕立ておろしだぞ!大きな穴、ことによると・・・じゃねえだろ!!」
「ほら、やっぱり怒るじゃねえか」

 



 どうも、お退屈さまでした。いつものことですが録音はしてません。殴り書きのメモとうろ覚えの記憶で勝手に再構成してます。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。  
 



 

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