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(No194) 京都・らくご博物館【夏】〜納涼寄席〜 鑑賞記 その2
          

 平成22年8月27日(金)、ハイアットリージェンシー京都 ドローイングルームで開催された落語会の鑑賞メモの続き。

 



桂 雀松 「片棒」

 高座に出てきた雀松、やたらキョロキョロと左右を見回しながら礼をし「秘密クラブにようこそ」。ホテルの地下の一室という雰囲気にあったひとことだった。

 「結婚を前提に・・・」といういつものくすぐり。
 
 先ほどはわけの分からない歴史物語でございましたね。

 世の中、混沌としてまいりました。
 株安円高・・・・ゆうんですか。円高なんて私らには関係ないように思えるんですが、えらいもんで、円が少し高くなるだけで輸出している企業なんかは、何億、何十億と損をするそうですな。

 一方で、円高になると海外旅行が安く行けたり、輸入品が安く買えたりもするそうです。

 こうなると円高も悪いんだか、ええんだか・・・・・・・・・・・。 

 最近は、ええ、あの・・・・・・真夏日ゆうんですか、体温より気温の方が高かったりするんですね。(えらく口ごもったので、きっと「猛暑日」という単語をど忘れして、仕方なく「真夏日」と言ったんだと思う)

 つまり裸でおるより、人間同士抱き合ってる方が涼しいゆうことです。
 特に私、他の人より体温が低いんです。基礎体温ゆうんですか?いや、ちゃう、ちゃう。平熱です。平熱。これが35度なんぼかしかない。

 そやから、私と抱き合うと、ものすご涼しい。25歳以下の方、受け付けますよ。(と、会場を見回し、挙手を求める)
 仕方ない。30歳以下!

・・・・・・しょうもないことゆうてる場合やない。この頃、変な事件が多い。幼児虐待とか、100歳以上の方がいなくなるとか。・・・・・・この時期なのに、阪神が優勝争いしてる

 後のまくらも、長寿社会とか、東京の落語家とか、松之助師匠のバタフライとか米朝師匠の孫のあまねちゃんとか前に聴いたのと同じ。

 本編も、前に聴いたのと同じ。

 しかし、実にこなれた感じで、聴いていて快い。


 


桂 米平 「天狗裁き」


 体重が110kgと告げ、場内が「おお〜」とどよめき、私は「百獣の王(110のおう)」と呼ばれていますというくすぐりは平成16年に初めて聴いた時と同じ。

 こない太るとしびれが切れやすく、長い落語ができません。25分が限度です。

 また、太ると着る物に制限が出てきます。ステテコのサイズもそうです。まあ、和装なんでMとかLという表示ではございません。

 小、中、大、そして特大。で、特大の上は何や思いはります?「肥満」ですよ、「肥満」。和装の表示は、えげつない。何や履いてるステテコに馬鹿にされてるような気がする。 

 こないだ街、歩いてますと、とうとう相撲取りに間違われまして。いえ、大人やのぉて、親に手ぇ引かれた子供やったんですが。もちろんまげも結うてないし、着物も着てなかったんですが、身体でそう思たんですなぁ。

「お母ちゃん、見て、見て!ほら、お相撲さん!」
「あっ!えらいすんません。もう!違うのよ!この人はお相撲さんやないの!この人は、ただ太ってはるだけ
・・・・・・お母さんの方がよっぽど失礼や。


 私、実は生まれた時、未熟児でして。1800gしかなくて。今、110キロですからな。これが株やったら大儲け。

 夜、寝る時は本性が出るようでして。布団一組しかないとこで、男二人が寝たゆう話がありまして。寝る前はお互い気ぃ使
(つこ)て布団を譲りあっておりますが、寝てしまうと深層心理ゆうか本音が出て、引っ張り合う。片っぽがくるくると巻き取る。また、それを奪い返す。一晩中、そんなことばっかやってるうちにヘトヘトになってしまいまして。どちらともなく、声をかけて「おい!そろそろ起きて休もか?

 冬の話ですが、道を歩いてると小判が落ちてた。ところが、道に凍り付いて、どうしても取れん。そこで考えたのが、温度でこれを溶かして取ろうと。・・・・・・・お分かりですね?う、う、う・・・・・・(と、小便をかける格好)よし!これで・・・・と思ったとこで目が覚めた。ええ?小判は夢で、小便はほんまもんかいな

 そして本編の「天狗裁き」に入る。

 要は、旦那が寝ていてうなされたり、ニヤニヤしたり。それを見た女房は、「どんな夢見たん?」
 しかし、旦那は「いや、見てへん」
 女房は「何やの。隠し事せんかて」と怒り出す。「見てたらゆうがな。ほんまに見てへんもんは見てへんとしか・・・」

 しょうもないことで喧嘩すなと仲裁に入った友達。女房をなだめて、おもむろに「どんな夢やってん?」

 友達と喧嘩になったところで仲裁に入った大家。店立て(たなだて。貸家を追い立てること)をくらわすと脅かし、お白州へ。

 次はお奉行。怒り出した奉行は木に縛りつけ拷問を。

 それを救い出したのが天狗。「しゃべりたいと言うなら・・・・・・聞いてやってもよいぞ」
 それでも言わない(てゆうか「言えない」)男に天狗の爪が・・・・・という噺。

 まあ、繰り返しでダレるとゆうか、どうしても先の見えてしまう噺。しかし、米平は、その太い眉をぴくぴくっ!と動かすことでよく表情を作れていたと思う。まずまずの健闘・・・という感じ。


 


桂 米紫 「ねずみ」


 元気よく高座に出てきて、扇子でぱん!と裾を払って座布団に座る。

 
 これまで都んぼという名で16年間活躍してまいりましたが・・・・・・・まあ、そない活躍はしてません。(計算したギャグというより、マジで「活躍してきた」と言ってしまい、慌てて直した感じだった)

 今月の6日より四代目桂 米紫を襲名させていただきました。(場内から大きな拍手)

 噺家の芸名とゆうのは、本人には何の相談もないんですね。
 私も、師匠の桂都丸、師匠も桂塩鯛を襲名いたしましたが、その都丸に弟子入りして、ある日いきなり都んぼ・・・て言われたんです。

 こない申しますと必ず、「とんぼ・・・。覚えやすぅて、ええ名前やないか。文句ゆうやて、ばちが当たるで」とかおっしゃる方がおられるんですが・・・・・・・その方は、昆虫の名前になったことがないから、そんなことが言えるんです。
 「お前、明日から小林バッタやで」とか言われはったら気持ちが分かると思います。

 東京の方の若手の落語家に三遊亭歌ぶと(さんゆうていかぶと)というのがおりまして、今は彼も”歌太郎”に改名したんえですが、仲良ぉさしてもろてて、私が東京に行った時は東京で、彼が大阪に来た時は大阪で二人会をしたりしております。

 先日も島本町・・・・ご存知ですか?大阪府の島本町、京都との境んとこにある。その島本町でのイベントに彼と二人で出させてもらいまして。
 町
(ちょう)の行事やさかい、町の偉い人が出番前に挨拶に来てくらはりまして。こっちもあわてて自己紹介しました。
「あ、どうも。とんぼ
(都んぼ。蜻蛉)です」「かぶと(歌ぶと。カブト虫)です」そしたら、向こうの人が「ちょうちょう(町長。蝶々)です」

・・・・・・・・・昆虫図鑑か。
 よぉでけた噺である。

 これは実話だが、私の前の職場に田守さん、井森さん、矢森さんという人がいて、互いに挨拶したら「タモリです」「イモリです」「ヤモリです」。

 また、岐阜の方に揖斐川って川があるが衣斐(えび)さんという人がいて、田井さんに電話をかけたら「もしもし、エビです」「はい。タイです」・・・・・・という話を思い出した。

 で、米紫のマクラは、左甚五郎の出てくる噺なので、最初の名前ネタから「名人」に関するものに。


 どんな世界でも1000人おったら一人は上手(じょうず)がいてて、さらに上手1000人おって、やっと1人名人が出るらしいですな。

 落語の世界でも昔の名人、東京の方に”たちばなやえんきょう”という噺家さんがいたはったそうで、その方の逸話です。
 私も漫画で読んだ話なんですが、真夏に冬の噺をしたところ、最初「暑い、暑い」とウチワをぱたぱたしていたお客さんが、噺に聞き入るうちにそのウチワがぱたっと止み、さらに聴いていくうちに着物の襟を合わせ、しまいには、ぞくっと震えはったんやそうです。

 ”たちばなやえんきょう”とメモにはあるが、録音してないんで自信はない。

 なお、上記の逸話は私が持っている古谷三敏の『寄席芸人伝』の1巻冒頭に出てくるが、そこでは柳亭左楽となっている。

 名人になると舞台が消える・・・てなこと言いますなぁ。

 最初は高座も舞台ももちろん見えてるんですが、そのうち、噺に夢中になってしもて、もうその噺家しか見えんようになる。舞台が消えてしまう。

 さらに名人になると、噺に引き込まれて、もう噺家自体の姿も消えてしまって、名人の語る噺の世界しか見えんようになる・・・・・・・・・・・・・。

 えらいもんですなぁ。私ら、噺してて舞台が消えるどころか、噺の途中でお客さんが何人か消えることがある。

 
 ということで本編に入る。

 「ねずみ」については、以前都丸(現在の塩鯛)と五郎兵衛で聴いたので内容は繰り返さない。

 結論から言うと、米紫は「都んぼ」やったということ。
 これは当たり前の話で、襲名後1月もたってないのに、芸風が変わるわけもない。
 要は「都んぼ」なのだ。
 もちろん、まだ名人ではない。だから舞台は消えない。本人も消えない。それどころか、本人ばかりが前に出る。
 元気は元気だ。非常に元気はいい。
 それゆえに落ち着きはない。
 間とか味わいにも乏しい。

 貧乏宿屋の客引きの少年が左甚五郎に「布団要りますか?」とか「ご飯、食べますか?」とか訊ねる。

 そして「ええ?当たり前やろぉ?そんなんも無いんかぁ?」なんてことで甚五郎がずっこける場がある。

 宿屋で必須要件(まあ、素泊まりなんてのもあるが)の寝具や食事を確認するだけで充分分かるんで、少し間をとるだけでおもしろさは伝わる。
 しかし、米紫は、「えっ!ええっ〜〜〜!!!」とか絶叫しながら、肩を何段階かに分けて落としていきながら、高座前方に実際に「ずっこけて」いく。
 そこには「ねずみ」という噺の左甚五郎は「消えて」、映画や演劇の俳優も志望し、いろいろ活動しているという「都んぼ」の姿ばかりが前面に出てくる。

 襲名記念でトリをとっているというのに、きついことを言って申し訳ない。 

 


 

 どうも、お退屈さまでした。いつものことですが録音はしてません。殴り書きのメモとうろ覚えの記憶で勝手に再構成してます。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。  
 



 

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