移動メニューにジャンプ

(No192) 城北にぎわい亭  鑑賞記 その2
          

 平成22年9月9日(木)の午後7時から旭区の城北市民学習センターで開催された落語会、第21回城北にぎわい亭の鑑賞メモの続き。

 



桂 雀喜 「桃次郎」

 出囃子は童謡の「桃太郎」。今日の噺に合わせたのだろうか。いつもなのか?
 
 よお同年輩の友達から結婚式の招待とか受けるんですが、こうゆう商売(噺家)してますと、何か面白いことやってくれるんじゃないかとゆう・・・・ぼんやりとした要望を受けてるような感じなんですね。実にやりにくい。

 ご存知のとおり、結婚式の披露宴とゆうとたいがいホテルなんかのパーティー会場。円卓なんですね。つまり、客の半分は前を向いてない。こうやって(と、身体を半身にして身体をひねって正面を見るような格好をして、片手にはグラスを持ち、やや眉をしかめ気味で)「何やっとんねん?」。これでは落語はできないんです。

 先日は、ある出版披露パーティーにお招きにいただいたんですが「いや、落語はできないです。謎掛けくらいなら・・・」ゆうてお引き受けしたんです。 

 今、謎掛けって流行ってますよね。Wコロンのねずっちさんですか?例えば、城北にぎわい亭とかけまして・・・満塁ホームラン2本と解く。その心は?発展(満塁ホームラン2本で「8点」)間違いなし・・・・。

 こんなんお決まりですから、こんなことゆう噺家信用したらあきませんよ。

 そのパーティーで謎掛けやれ言われたんが、予定が狂って、出番が乾杯のあと5分のとこ。・・・・・どうゆうとこか分かります?
 その日、バイキング料理やったんです。皆、皿持って料理のとこ並んで、だぁ〜れも聞いてへん。しゃあないから、「デミグラスソースをかけまして・・・・・・・・美味しくお召し上がりください」・・・・って何も整ってない。

 法事の席によんでもろたこともあります。

 こうゆう席も同じや思うんですが、私ら高座からは客席全体が見えるんです。ところが後ろの方は油断してはる。背伸びしたり、寝てたり。ところが、前より後ろの方がよぉ見えるんです。

 昔から噺家殺すに刃物は要らぬ。あくび三つで即死する・・・・てなことゆいますが、私なんか過去に5回即死してます。

 お寺さんもね、お年召した方が多いから、この頃は正座やのうて椅子を用意しはるんですな。膝が痛(いと)うて正座はしんどいゆう人が多いから。

 こないだびっくりしたんが、お寺さんの法事の席で呼ばれて落語やらしてもうてたら、突然、真ん中のおばあちゃんが席を立つなり、椅子の後ろにまわって足のストレッチ始めはったんです。

 ・・・・・・・今せんでも、ええやろ。私、考えるに椅子ぃ座って落語聞いてるうちに、家でTV見てる感覚になりはったんでしょうねぇ。・・・・・・・・・・私ら、生きてるんです

 

 ということで本編の新作落語「桃次郎」へ。

 おじいさん、おばあさんが桃太郎が鬼が島から財宝を持ち帰った時はバブル景気に浮かれていた(「頭に花咲いてしもた」とゆう表現が印象的)と反省するも当時を懐かしむ。

 何せ桃太郎は立派な「侍」に出世し、今や敵(かたき)の鬼の面をかぶる桃太郎侍として実家には寄り付かないようだ。

 バブル景気の再来を願う二人の願いが通じたか、またも「桃」が流れてくる。

 ところが、その桃に入っていた弟の桃次郎は、デビューが遅れたせいか、「おとんぼ」気性なのか、鬼が島へ稼ぎに行けと薦めてもグズグズと引き延ばしていた。

 かねて用意のきび団子をつきつけての矢の催促にやむなく腰をあげた桃次郎。

 少し行くと年老いた犬が懐かしそうに見つめているのにでくわす。


「昔はモテました。しやけど、すぐに”
ここ掘れ、ワンワン”のポチに人気をさらわれました。なんせあっちは大判、小判とゼニがある。

 逆に私はきび団子一つで身を売った裏切り者扱いですわ」

 今度は年老いた猿が、うき!うき!と言うが・・・・

「お前、いっこもウキウキしてへんな」

「悩んでるんです。鬼にも家族、人生があるんです。・・・・・正義って何だ、悪って何だ?それからは猿回しの劇団に入って日々『反省!』の毎日です」

 剥製にしたら高く売れると追い回され歌を忘れたカナリヤならぬキジになっていた「きじ」を連れて鬼が島へ。

 すると、子煩悩な鬼が、寝る前に子供に絵本の読み聞かせをしていた。

「いつまでも、ごんたゆうてたら、こわぁ〜〜い桃太郎(鬼の国なので、悪役は「桃太郎」)が来るでぇ〜〜!!!

・・・・・はははは、怖いことない、怖いことない。お父ちゃんとこおったら大丈夫や。安心して寝ぇやぁ。よしよしよし・・・・。」

(鬼の国の緊急放送で)

「大変です!桃太郎が犬、猿、きじを連れてまた攻めてきました!」
「なに〜〜?門番は何しとんねん?」

「もしもし、私は桃太郎の弟の桃次郎です。私は、鬼の皆さんと仲直りに来たんです。友愛の精神で。あなたたちの国を略奪したりしないことを神に誓います」

「・・・・本当ですか?では、神でなく、閻魔に誓ってください。・・・・・・・・ああ、誓ってくれましたね。これは嬉しい。どうぞ、この杯を受けてください。この「鬼殺さない」を(註:著名な日本酒の「鬼殺し」のパロディ)

 

 早いもので、桃次郎が旅立って5年になるなぁと噂していたおじいさん、おばあさん。
 そこへ、子供と嫁を連れた桃次郎が帰ってきた。

「遅なってすまんな。これ、嫁の鬼子や。鬼が島で結婚してん。これから一緒に仲よぉ暮らそぉ」

「いややぁ!!!鬼嫁と同居しとない!!!]

「お母ちゃん、人は見かけによらんもんやで」

「『人』と違うぅ〜!!!!」 

 

 なだめすかして落ち着かせると、今度は欲が頭をもたげる。

 肝心の「お宝」はどうしたのか?と桃次郎を責め立てる。

 一方、子供は無邪気なもので、いきなり地元の子と「鬼ごっこ」(桃次郎の子供にとっては「桃太郎ごっこ」)に興じている。

 

 サゲは、「子宝、走ってるがな」。

 

 

 


桂 雀三郎 「らくだ」


 一門四人の落語会なんでどこで中入りをはさむのか、やはりトリの雀三郎の前か・・・と思っていたら、そのまま始まった。

 私で最後でございまして、後は後片付けと掃除だけでして。手伝どぉてもろたらありがたいけど。

 江戸時代の自分かららくだや象は見せ物として日本に来てたようでして、身体が大きい人間のあだ名で「らくだ」とかゆうてたようでございます。

 ここの長屋におるらくだの卯之助という男。金を借りても返したことがない。物を買(こ)うても金を払(はろ)たことがないちゅう奴でして。

 ある日、そのらくだを訪ねて友達が来たんですが・・・。

「おい!らくだ!・・・・・・・・ん?動かん思たらどぐさった、ごねとる(死んだ)んかい。

 えらい河豚の骨が家ん中散らばったぁる。こら、河豚に当たりよったんやな。

 そう言や、こないだ河豚かたげて(担いで)、一緒にどや?ゆうとった。季節外れの河豚は毒やでてゆうたけど。よぉ一緒にやらんかったこっちゃ」

 訪ねて来たのは脳天の熊五郎というらくだの兄貴分。

 何とかとむらいでも出してやろうとたまたま通りかかった屑屋を呼びとめ、家財道具を買い取れと命ずるが、この屑屋、それ以前かららくだに無理難題を言われ続け、何も値打ち物がないのを熟知していた。

 そこで、熊五郎は屑屋に、商売道具をカタに取り、長屋の月番から「つなぎ」(香典)を取って来い、大家からは「ええ酒三升と、砂糖をおごって甘辛(がろ)ぉ煮(たい)た煮しめを大きな鉢に2杯」届けさせろと命ずる。

 「河豚が?よぉ当てよったなぁ。こら、河豚の墓、立てたらなあかん」と喜んでいた月番だが、兄貴分がえらい奴で・・・・という屑屋の進言に「何ぼか包んで届けるわ」と妥協。

 しかし、大家は、どんな店子でも最初の家賃ぐらいくらいは入れるが、あのらくだだけは、催促したら追いかけてきて頭の上に刃物つきつけよった。
 このうえ、まだ家賃だ何ぞとぬかすんか、どないやねん?て言いよったけど、あれで「家賃・・・」ゆうたら、あれが落ちてくんねんがな。

 ほんでしゃあなしに「今後一切、家賃てなことは・・・」ゆうたら、「ほな、この度だけは差し許す」・・・・・・・・。

 「わいもこの辺じゃちいとはいやがられてる人間。え?死ぶと(死人)のかんかん踊り?そないなもん、見たことない。ゆうたら初もんや。でけるもんやったら、やってみぃ!初もんで75日、寿命延ばそうやないか!」

 こう見得を切った大家に「上には上があるもんやなぁ」とほうほうのていで逃げ出し、らくだに報告した屑屋。

 と、熊五郎は、嫌がる屑屋の背中にらくだの死骸をかつがせ、「ご所望のようで・・・」で大家の玄関先で踊らせる。

「正直にゆうたんかいな!」とパニックになった大家は言われたとおりの酒肴を用意することを約束する。

 熊五郎は、今度は死骸を入れるための樽をもろて来い。くれへんねやったら、貸してくれ。後で返す。もしか、やることも貸すこともでけんてなことゆうたら死ぶとのかんかん踊りゆうてこい!!と命じる。
 当然漬物屋は断ったが、屑屋が「また来なあかん。さっき大家さんとこで・・・」と「実績」を強調すると、一転しておとなしく樽を供出した。 

「これ、えらいよぉ効くなぁ。・・・・・・これやったら米屋行って、なんぼか米、もろてこうかなぁ。いややなんぞ抜かしたら、死ぶとの・・・ゆうて。それぐらいせんと、合わへんで。

 へえ、すんまへん。行ってきました」

「おお、行ってきてくれたか。お前のおかげで何とか格好がついてきた。長屋の月番もつなぎ持って来ますて、ゆうて来たし、大家もほれ、酒と煮しめ。
 しょうもない酒やったら、暴れ込んだろう思たけど、
(ぐい、と呑んで)まあ、ええ酒や。

 よぉやってくれた。ささ、まあ一杯(と、茶碗を突き出す)」 

「あっ、そうでっか。ほな、わたい商売行かしてもらいますわ。商売せんと釜の蓋が開かんさかい。また、寄らせていただきます・・・」
「ほな、俺は、お前がまた来るまで、こうして待ってな、あかんのかい!!

 呑むの呑まんの言いやがったら、頬桁
(ほげた)引き裂いてでも・・・・」

(慌てて)「いただきます!どうぞ、軽うに入れてくださ・・・・ああ、そないなみなみと・・・いえ、いただきます。(と、大急ぎで飲み干し)へえ、おおきに、ごっつぉさんでした。ほな、商売に・・・」

「ほお、呑めるんやないかい。まあ、もう一杯いこ。
(と、再び茶碗を突き出す。しかし、屑屋が「商売に・・・」とか言って受け取らないので)手ぇがだるいわい!!

(またも、満杯の酒を大急ぎで飲み干す屑屋)
「そないな呑みようしたら、酒がもったいないがな。まま、駆けつけ三杯ゆうさかい、もう一杯だけ。この上は薦めんさかい。もう一杯だけ。もう一杯だけやゆうてるやろぉ。いや、お前が商売行くようのに、あないなことさせたさかい、清めの酒やゆうて、こっちゃあ気ぃつこてんねや。ほんでも呑めんゆうねんやったら・・・・・・・
(熊五郎の剣幕に怖気づいて杯を取る屑屋)手数のかかるやっちゃ!」

「ひえぇ〜〜。こんな怖い酒盛り、初めてや。
(酒をあらためてじっくり味わい)・・・・確かに、こないにええ酒、あんな呑みようしたら、もったいない。
 朝からお粥しか食べんで、小腹がすいてきたとこに、あない大きな杯で2杯もいただいたさかい、ええ心持ちなってきた。

 しかし、熊五郎さん。あんた、偉いなぁ。何でて、そやないですか。人の世話てなもん、(金が)ある奴でもせえへんのに、あぁた、ない中で・・・・。あぁた、優しい。最初からそう思た。何や、怖い中に・・・・・・情がある。
 わい、あぁた好きや。・・・・・・・・・・もう一杯だけもらおかな」

「・・・・・・・酔うて商い大丈夫か?軽うに注いどくわな」
「そんないやらしいこと言いなはんな!どうせ注ぐんやったら・・・・・・・・・ってゆうたら、ちゃんと注いでくれるだけ嬉しいなぁ。

(ぐびぐび呑んで) わい、今はこんな商売してるけど、元は船場、島之内で奉公人の二、三人も使(つこ)て、商売してたんでっせ。それが、こないなってもたんも・・・・・・(酒杯をながめ)みな、これですわ。

 借金に追われて、店たたんで、貧乏長屋に夜逃げして・・・・・・。わいはよろしいで。わいはよろしいけど、うちの嫁はん、大家のお嬢さんやったさかい、貧乏慣れ、貧乏の稽古してへんさかい、ひょっとした拍子に患いついて、そのまま・・・・。まだ、二十八でしてんで。

 後添えの今の嬶(かか)は、長屋の娘やさかい、行儀や物の言いようはぞんざいやけど。え?前の嫁はんの子と自分の子ぉとの分け隔て?そんなことはしよりまへん。もし、したらわいが黙ってへんけど、そんなことするおなごやおまへんねん。逆に・・・・・前の嫁はんの子、上の娘に気兼ねしよりますねん。

 わい、寝しなに3合呑まんと寝れんねんけど、いつも橋向こうの酒屋に買いに行かせまんねん。と言うのは、そこは、他の酒屋と違うて、かんぴん
(量り売りの時の大きな徳利のことだろうか?)の口まで入れてくれよる。
 こないだの雨降りの晩に、嫁はんが、こない雨の晩にあない遠い酒屋まで行かんでもええやないか、そこまでしてちっと余計に呑みたいんかい!と毒づきよるんだ。
 わいが言い返してたら上の娘が「お父はん、お母はん。わたいがちょっと行ったらええだけの話やねんから・・・・」と仲裁に入って、そのまま買いに行ってくれよった。

 ピチャピチャピチャって雨ん中の娘の下駄の音聞いてたら、何たる親や思うねんけど・・・・・・やめられへん。
ホイ!
(気の利かんやっちゃ。さっさと注がんかい!とばかりに茶碗を突き出す)

(熊五郎も気おされて注ぐが)「お、お前。商売の方はええのんか?町内まわらんと、釜の蓋が開かん、女房、子が養えんのんと違うんか?」

「何ゆうてんねん。わいら、こんな出商売やで。雨降り風間、3日くらい食い延ばしがでけんで、どないすんねん。
(ぐいっと飲み干し、今度ははっきりと)注げ!(注がれた酒を、すぐにぐびっと口にして)遠慮せんと、お前も呑めよ。

今日は去(い)なんで。とことんいこぉ!なあ!せや、兄弟分んなろ、兄弟分に。ほれ!(酒瓶を手に)ひとついこ、ゆうねん」

(気おされたまま、一転して弱気な調子で)「い、いや、まだ、らくだの湯灌もせなならんし・・・・」

「何ぃ?水臭いことゆうな。兄弟分になったとこやないかい。何であっさり言わへんねん、『兄貴、頼む』と!
 え?らくだの頭丸めるのんに剃刀が要る?そんなもん、わら灰に火ぃつけて燃やしてもたら・・・え?そうもいかん?剃刀みたいなしゃれたもん、らくだの家にあるかいな。
 三軒向こう、おふくろさんに娘が3人いてる家がある。おなごがそんだけおって、剃刀の1本もない筈はない。そこ行って、借りてきたらええがな」

「せやけど、お前は知ってるかしらんけど、わいはその家、なじみがない・・・」

気ぃのあかんやっちゃなぁ!!貸すの貸さんのゆうたら、死ぶとのかんかん踊りてゆうたらええやないか、早よ行ってこい!!

 ははは、行きよった。(煮しめをつまみ)しかし、甘いなぁ。こんなもんで酒、呑めんで。どうせやったら、鯛の造りとかゆうたらええのに。

 おっ、行てきたか。な?貸してくれたやろ。ささ、こっち貸せ。

 頭、水で湿らせな、あかんが・・・・・まあ、これでええか。
(と、手元の酒を口に含むが、うっかり呑んでしまい)あ、呑んでしもた。

(あらためて酒を口に含んで霧吹きのように頭を湿らせ、剃刀を当てる。最初は丁寧だったが、だんだんぞんざいになっていって)なに?血ぃが出てるて?痛いことあらへんがな!こんなもん、こんでええねん(と、残った髪の毛をぐっ!とつかんで引き抜く)」 

 

 いよいよ桶に納めて、前棒を屑屋が担ぐ。大きな声で「葬礼(そうれん)じゃ!」と雄たけぶが、後棒の熊五郎は引きずられるように「・・・葬礼じゃ」と続く。

 よろけてらくだの身体が転げ出るやら大騒ぎのうちに幕・・・・となった。

 雀三郎師匠、大熱演の巻であった。

 

 


 

 どうも、お退屈さまでした。いつものことですが録音はしてません。殴り書きのメモとうろ覚えの記憶で勝手に再構成してます。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。  
 



 

inserted by FC2 system