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(No167) 新春吉例 米朝一門会 鑑賞記 その3
2010年1月2日(土)のサンケイホールブリーゼであった米朝一門会のメモの続き。
桂ざこば 「薮入り」
メッセンジャーの黒田、アホでんな。アホちゅうか・・・・若い。
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(石野註)
メッセンジャーという漫才コンビの黒田という男が、2009年12月26日にミナミのガールズバーでぼったくられたということで暴行事件を起こし逮捕されたという事件をさす。 |
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ああゆう店の娘(こ)ぉは、よぉ、ねだりよるからね。
「今日、私、誕生日なの。ドンペリおろしてもいい?」
「ええ?何ぼやねん?」
「7万円」
「なめとんか!店長にゆうてこい!」
「4万円やて」
「安なるんやないか!」
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わたいら、新世界(大阪のごくごく庶民的な盛り場)でも値切りまっせ。おかまのバーでね。きったない声で、
「ビールいただいていい?」
「何ぼや?」
「800円」
「ママに聞け!」
「500円やて」
「安なんのんかい!」
わたい、初めて新宿のゴールデン街ゆうとこで飲んだ時の話ですけど、昔は無茶苦茶でしたさかいな。
5000円札、カウンターに置いて、
「わい、こんだけしか持ってないねん。こんだけで飲ませて」ゆうて。
私もそうゆうた以上、たとえ店からビールを1本だけ出されて「これで5000円です」と言われても・・・・・まあ、何かゆうけど。
二度と来るかぁ!ゆうて、そこらじゅうで、この店は絶対行くなよ!って言い倒すけど・・・・・私はそんな人間です。
で、その店で、
「水割りになさいます?」
「え?5000円でいけんのん?」
「大丈夫です」
「ほな、もらうわ」
「私もいただいていい?」
「これでいけんねんやったらな」
水割りもおごんのんも5000円でいけた。
黒田は下手やねん。わい連れていってたらどうもなかった・・・・。
ただし、正月値段は文句ゆわんよ。えべっさん値段とかね。縁日の屋台のもんが高いゆうて文句は言わへん。高(たこ)取らなしゃあない時は言わへん。
しゃあなくない時に高、取るから文句を言う。・・・・・皆さんもそうして飲んでください。
昔は丁稚奉公ゆうのがございましたが、最初のうちは里心がつくゆうて、なかなか帰してもらえない。何年かして信用がついたら、盆や正月には実家に帰してもらうようになりまして、これを薮入りと申しました。
「おまさ?」
「何やねんな?」
「寅こ(寅公)、よぉ辛抱しよったなぁ。ひと月くらいで泣いて逃げて帰ってくるか思た。
ぬくい飯炊いたってや。なんきん(カボチャ)も炊いたれ。うなぎとったろ。
天ぷらもな。いつもみたいな衣ばっかりのやつはあかんで。海老です!とはっきり分かるようなやつをな。
せや、たこ、甘(あも)ぉに炊いたれ。
それから、大福、ぜんざい、汁粉、みたらし・・・・」
「何で、そんな甘いもんばっかし」
「お前は奉公したことないさかい、分からへんねん。そら三度三度のご飯は出るで。せやけど、好きなもんなんかめったに出ぇへん。帰った時ぐらい好きなもん食わしたらな。
おまさ、今何時や?」
「4時過ぎだっせ」
「そのうちに朝ん、なんねやろけど、遅いなぁ。
寅こ、天下茶屋のおばはんとこ、連れていったろ。おばはん、泣きよるやろなぁ。
十三の兄貴とこも連れていかなあかん。ついでやから玉造のおっさんとこも行こ。
住吉っさん(住吉大社)に願かけしたさかい、お礼参りに行かんならんしな。ついでに高津さん寄って、近くやから生国魂(いくたま)はんへも行こう。
ちょっと足伸ばして奈良大仏見に行こかな。寅こ、まだ見たことないさかい。それと、京都の八坂さんに・・・・・」
「それ何日かけて廻るねん?」
「飯は大丈夫か?」
「今頃から炊いたら冷めてしまう」
「飯炊けゆうてへん。炊く準備をせえゆうてんねん。何かイライラソワソワするなぁ」
(じっとしておられず、家の前を掃き始める熊。それを見た近所の友達が)
「まっちゃん、おもろいもん見せたろか?熊こ(熊公)が家の前、掃除しとるで」
「え?ああ。そう言や風呂屋で『3年前に奉公に出た寅が帰ってくる』とかゆうてたで。
熊はん、おはよう。ええ天気やな」
「別にわいがええ天気にしたわけやないで」
「寅ちゃん、帰ってくんねんやろ?うちとこも、遊びに来させてや」
「さぁ、本人がどうゆうかなぁ」
(奥さんが)「あんた、家の中に入りなはれ!喧嘩になる」
「しかし、何してんねやろなぁ。きっと、出る間際になって番頭のガッキャ(餓鬼は)、しょうもない用事言いつけてるんちゃうか?」
「おとっつぁん、ただいま戻りました」
「あ!熊はん、帰ってきた・・・いや、寅ちゃんや(石野註 本気で照れていたから、マジに言い間違えたのだろう)
寅ちゃんの声やで」
「これは、これは丁寧なごあいさつ・・・。おい、ちょっと見てくれ。寅こ、大きなったか?」
「何ゆうたはりますねん。自分で見たらよろしぃやないか」
「目ぇ開けたら、寅こが消えてしまいそうな気がすんねん」
「おとっつぁん、風邪こじらせて肺炎になったて聞いたけど、もう元気?乙吉のおっちゃんに聞いてん。心配やったけど帰られへんから手紙書いてんけど、読んでくれた?」
「ああ、読んだ、読んだ。大人顔負けの字ぃやで。あの手紙読んだら、熱がいっぺんにひいてしもた。おとっつぁんの頓服や」
(親父は、寅に銭湯に行ってさっぱりしてこいとすすめる。)
「そんなええ服着て行ったらあかん。おとっつぁんのん着ていけ。
下駄もや。長屋の連中の根性、分かったんねん。必ず履き替えられる。裸足で行って、ええのんはいて帰ってこい・・・・・・・って、うそや、うそや。
お〜い、そこの溝板、気ぃつけよ、はねるねん。
あっ、その犬に手ぇ出したらあかん。そいつ、赤ちゃん産みよったんや、気ぃたってるから、手ぇ出したらあかん!ゆうてんのに・・・・ははは、おまさ、見てみぃ。あの犬、寅この手ぇペロペロなめてるでぇ。
あいつ、昔から犬や猫、好きやったさかいなぁ。犬も、わかんねんなぁ・・・。
おい!八百屋!ちょっと入ってくんのん待て!寅ちゃんが出て行ってから入ってこい!
・・・・・・・行きよったぁ。おとっつぁん!ゆうて首にかじりついてくんのんか思たら、座って四角い挨拶しやがって・・・・・。あいつ、ずるいなぁ。
え?おまさ、何してんねん?親子の間でも、財布は見るな」
「せやけど、10円も入ってんねんで。1円ぐらいなら分かるけど、10円てな大金、ひょっと寅ちゃんがおかしな気ぃ出して」
「何!寅はわいの子ぉやぞ!」
「寅ちゃんは悪のぉても、仲間に悪い子がおって」
「(ぽん!と膝をたたき)そら、ありうる。わいが奉公してた時も、番頭がわいら丁稚に帳場の金、取らせて、ほとんど独り占めしとった。
あの番頭やなぁ。今度おうたらしばき上げたる!」
「おとっつぁん、すんまへん。先、行かせていただきました」
「ああ、ええ湯ぅやったか?ちょっと、こっちおいで(と、そばに座らせ、いきなり首ねっこを押さえつける)
そこ、座れ!こら!寅こ!」
「お、おとっつぁん、いきなり、何を?」
「何もかんもあるかい。お前、いったい、10円てな大金・・」
「あ?あのお金のことですか?
あら、こないだ相生橋の北詰のとこで100円入った財布を拾て交番に届けたら、落とし主が見つかってお礼にもろたんです。
ほんで、お店にゆうたら番頭はんが預かってくれてはったんが、お前も薮入りやからゆうて渡してもろたんです。決して怪しいお金やおません」
「・・・・・せやろ?わいもな、お前はそんなことする奴やないとゆうたんや。せやのに、かかが、あの子の目つきがおかしいゆうて」
「何でも私のせいにしてからに」
・・・・と、まあ、晴れて一日楽しく過ごしたとゆう、薮入りとゆう噺でございました。
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途中で、寅ちゃんを旦那の熊と言い間違えるし、最後は何かグダグダになっていた。
正月なんで酒が入っていたのかもしれんし、まあ、普段でも酒が入ってるような感じだし。
親父の「情」(じょう)を感じさせるだけでざこば師匠の持ち味というか役割はクリアだろう。 |
どうも、お退屈さまでした。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。
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