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(No158) 第31回市民寄席 桂米朝一門会 鑑賞記 その2        

 2009年10月2日(金)開催の堺市民会館での鑑賞メモ・・・の続き。



桂宗助  「親子酒」 

 マクラは、(1)拍手していただいた方に限り・・・・、(2)皆様方の家に・・・・、(3)餅半分!、(4)娘の縁談決めたけど翌朝になったら名前もわからない、(5)あほ、お前の親じゃ・・・・・と以前聴いたマクラと寸分違わない。もちろん、こないだ聴いた時のマクラとも全く同じ・・・・・。

 まさか、デジャブ「替わり目」か・・・・と心配していたら・・・・・・
「♪ 酒は 呑〜め 呑め 呑むなぁらあばぁ〜〜♪

 はい、帰りました」

「あ、お義父さん。お酔いですか?」

「いや、まだ酔うておりませんよ。

 それより、用心が悪いよって、戸ぉをぴしゃっ!と閉めといてもらえますかな」

「・・・・・あの、お義父さん。まだ、うちに入ったはりませんけど」

「え?(と、慌てて周りを見回して)まだ、うち、入ってへんかった?ちょっと、酔うてるかな。

 わたくし、ウソをついておりました!

 せがれは、どうしてます?何?まだ帰ってへん?

 また、呑んでますのやな。ほんまに毎日、毎日。

 今日という今日は、帰ってきたら夜
(よ)と共に意見をしてやります。それで聞かんようやったら、追い出してしまう。

 いや、あんたはおってもらうのやで。あんたは、ちゃんと仲人を立ててもろた嫁やさかい、いわば、私の娘やからな。
 心配せえでええ。私が、ちゃんと酒呑まん、ええ息子を・・・・・・産んでやる」

「あの、お父さん。今日は、もう遅いから寝やはったら、どうでしょう?」

「おやすみ・・・・ません!寝ませんよぉ〜。

(ガクン!と崩れて)あのねぇ〜 夜と共に・・・・・(今度は首が後ろに)せがれが・・・・・・・あの・・・
(前に崩れたかと思うと、また、後ろにのけぞり、しばらくイビキをかいて、また我にかえり)・・・・あの・・・・せがれが帰ったら起こしてくれますかな」

 今度は、そのせがれの方でして。

「♪ちょっと一杯のつもりで呑んでぇ〜〜 ぴっちぴち ちゃっぷちゃぷ らんらんらん♪
・・・・・・・・歌、変わってしもたな。」

(屋台のうどん屋が火を起こしている)
「ああ、向こうから来る人、えらい酔うてるなぁ。フラフラしたはんで。

 あ〜、大将!えらいご機嫌でんなぁ」

「え?おい!うどん屋!お前、わいがええ機嫌で呑んでるんか、悪い機嫌で呑んでんのか分かるんか?
 お前、わいをムカッとさせて、喧嘩でも売ろうと・・」
「いえ、そんな・・」

「ははははは、ウソや、ウソや。
 ええ機嫌で呑んでんねん。すまんな、堪忍してや」
「いえ、そんな、堪忍するやなんて、あほらしもない」

「・・・・・・何があほらしいねん!ほな、堪忍でけんのか!」

「難儀やな。ほな、堪忍させてもらいます」
「えっ?堪忍してくれんの?
 きっと堪忍してくれるか?」
「へえ、堪忍させてもらいます」
「おおきに、ありがとう。
 堪忍しにくいとこ、よぉ堪忍してくれた。

・・・・・・・・ところで、わい、何ぞお前に堪忍してもらわなあかんような、悪いことしたか?

・・・・・冗談や、冗談。
 わい、こないだ、友達と一緒に東京に行ってな。向こうのうどん知ってるか?汁なんか、真っ黒やねんで。

 わいも友達も川柳やんねけどな。その友達が、こんな川柳作ってん。

江戸帰り だしの色見て ほっとする・・・・。でや?」

「わたい、そんなんはちょっと、分かりまへん」
「ぶさぁ〜く
(不細工)なやっちゃなぁ。何で誉められんのや。

 わいも、同じ『江戸帰り』で作ったんや。江戸帰り 嬶(かか)の顔見て ゾッとする・・」
「そら上手ですな」
「ほっとけ!そんなん誉められても嬉しないわ。

 一杯もらおか。(丼を受け取り)ええだし使(つこ)てるな。匂いで分かる。

 おい、箸が一本では食われへんがな」
「ああ、そら、二つに割ってもらわんと」
「あっ、二つに割ったらええの?」
(と、両端を持ち、真ん中で折ろうとする)
「いや、そら、そうやっても二つには割れまっけど、短いでっしゃろ?縦に割ってもらわんと」
「あ〜、割れたわ。これ、お前が発明したん?」
「そら、割箸で、前からありまんがな」

「・・・・・・・・愛想のないうどん屋やなぁ。わいかて割箸くらい知ってるがな。

そこ、『へえ、三日三晩寝んと考えましてん!』とでもゆうてみ?
『んな、アホな!』で、うぇぇ〜〜
(両手を持ち上げる)となんねやないか。

 前からありまんがなって、何でそんな憎たらしい言いようすんのかなぁ。
 これかて、東南アジアの森林を伐採して作ってんねんで。いわば、環境破壊・・・」

「んな、大層な」
「七味くれ」
(懐から手拭いを筒状に丸めて手渡す)へえ」
「ん?出ぇへんで」
詰め抜いてもらわんと」

(男は手で詰めを抜こうとするが、なかなか抜けない。歯で噛んで、ぷっ!と吐き捨てる)
「あ、そんな無茶してもろたら」
「後で拾
(ひろ)といたらええがな」

「それ、今日おろしたてでっさかい、いっぱい詰まってますよって、トントンと振ってもろたら、よぉ出ます」
「うん、親切丁寧で、言葉にそつがないなぁ。こうか?・・・・ぶえっくしょい!!

「そんな、穴上に向けて振ったら、くしゃみ出まんがな。そら、穴下向けて振ってもらわな」
「ほな、何で最初からそう言わへんねん。親切丁寧やないし、言葉にそつがあるやないか。

 下向けて振んねやな?・・・・・ああ、うどん屋。出た」
「そら、出るようになってまんねから」

「・・・・・・・・お前はほんまに愛想のないうどん屋やな。
客がせっかく『出た』ゆうて喜んでんねんから、
『出ましたか!そら、めでたい。花火でもあげまひょか?』とでもゆうてみぃ?
わいが『んな、あほな』うぇ〜〜〜っと盛り上がんねやないかい。

 それをお前は、『出るようになってまんねから』?
 何で、そんな言い方しかでけんかなぁ?」
(と、ぐちりながら、とんとんと振り続ける)

「あの、もし。うどんに赤い山がでけてまっせ」
「え?昔からゆうやないかい。♪赤い山から〜 谷ぃ底見〜れぇば〜♪
「そら、♪高い山から〜♪でんがな」

(男は、なおも振り続け、筒をのぞき込み)
「お代わり!」

「ええ?それ、さらでしてんで。
 そんなん食べたら体に毒です」
「・・・・・ほたら、お前とこは体に毒なもん売ってんのか?

 こんなもん何でもあれへん。赤いきつね・・・・ちゅうやないかい。

 こんなんぐずぐず食べてたらあかん。一気にいかんと・・・・・
(と、一気にすすり込み)

うわぁ〜〜〜!!!!水、水、水!
 唇が
(顔から離れたところに手を持っていって)この辺にあるような気ぃがするわ。

 こんなん食べられへん。返すわ。

 何ぼや?え?そない取んの?何ぼも食べてへんのに。

 ほい。釣りはええで。・・・・・・釣りはええゆうてんのに、もうちょっと礼ゆうたらどないや?」
「しやけど、わずかな銭・・」

「当たり前やないかい。何で、お前にわいがよぉけ祝儀やらなあかんねん。
 しやけどや、『ええ?こないよぉさん、もろてよろしぃの?すんまへん。これで家でも建てますわ』とでもゆうてみぃ?
 わいが『んなあほな。それっぱかりで家建つかいな』ゆうて、うぇ〜〜〜と盛り上がるんやないか。

 ちったぁ商売、勉強せえよ」


 うどん屋をなぶり倒して家へ。玄関の戸を叩き、
「おい!、今、戻った!」
「はい、どちらさん?」
「『はい、どちらさん?』やなんて、いっつも酔うて帰ったら、わざととぼけやがって!」
「その声は田中さんとこのご主人とちゃいますのんか?お宅は西へ3軒目でっせ」

「ええ?ああ、違うとこ、たんねてんねがな。・・・西へ3軒目やな。
 おい!今、戻った!」
「どいつじゃい!」
「何ぃ?亭主の留守中に知らん男の声がするやなんて、こら承知でけんぞ」
「・・・その声は田中さんとこのご主人ちゃいまんのか?お宅は西へ6軒目でっせ」

「せやけど、さっき西へ3軒目て」
「ああた、西行かなあかんのに、東に行ってんねがな」
「皆、寄って、わいの家、どこにやってしまいよったんや?
 どこか、わからへん。ええい、端から順番に叩いていったろ

「ああ、うちの人、酔うたらいっつもこれや。

 これ!うちの人!こっちだっせ!ご近所に迷惑な。はよ、おいなはれ」
「ああ、こら、我が家一のべっぴんさん。

 あた!
(家に入るなり、何かにけつまずき)
 ああ、こら、親父やな。また、今日も呑んでくさるなぁ。
 かか、心配すな。今日とゆう今日は、夜と共に説教して、もしそんでも聞かんようやったら、酒呑まん親父をもろてやる」

「あ、せがれ。帰りくさったか。
 お前、酒毒がまわって、顔が三つも四つもあるやないか。
 そんな化けもんみたいなせがれに、この家は継がせられんぞ!」

「わいかて継ぐかい。こんな天井がぐるぐる回るような家」


 



桂ざこば 「始末の極意」

 「こないすぐ脱ぐんやったら・・・」というお馴染みのセリフから入る。
 

 今ね、蒼国来ゆう相撲取りをひいきにしてるんです。わたしらは、そうちゃん、そうちゃんてゆうてるんですけどね。

 苦労して幕下筆頭まで行って、先場所勝ち越したんです。ほんで、今度十両になれるか、どうかゆうとこで。

 十両からは15番取るんやけど、幕下までは7番なんですな。
 で、そうちゃんは4勝3敗やったんです。幕下ではどう勝敗を数えるかとゆうと
(右手は指を4本出し、左手は3本出して、左手で右手の指を3本包み)こう、負けの数を取るから1しか残らんのですな。

 で、5勝2敗やと、どうなるかゆうと・・・・え〜と・・・3になるんですわ。・・・・わかりますやろ?

 せやから、6勝1敗やと・・・・4勝・・(
客席そこここから、不審がる声が)ああ、5勝、5勝。何や、分からんようになってきた。

 結局、筆頭で勝ち越したんやけど、下のもんに抜かれるかもしれへんゆうことで、今ヤキモキしてるんです。
 そうちゃんは内モンゴル自治区ゆうとこの出身でして、しやからモンゴルやのうて、中国人なんですな。

 そして、先日も聞いた「そうちゃんに日本の文化を教えるということで芸妓や舞妓遊びをしよう!」という話へ。
 
見台に片肘ついて、身をぐっと客席に乗り出して「こう見えても、私、金離れよろしいねん。・・・・・せやから金貯まらん」。
 
そして、京都に着いて、「お茶屋で飯食うたら、仕出し弁当か何かで、ごっつ高(たこ)つくから食堂行こゆいましてん。(また、ぐっと身を乗り出し)私、こう見えても金に細かいんでんねん」と笑わせる。

 
さらに、「食堂で、また酒呑んだんです。お茶屋で呑んだら高いから。サバとかね、生姜の天ぷらで」というとこで、特にメニューの具体的なことがどっ!と受けた。(私も、前の職場でよく行った居酒屋では紅ショウガの天ぷら、略して「しょうが天」は定番メニューだった)

 
あと、奥さんとの約束に反して皆を家に連れて帰り、もめて、それ以来口をきいていない・・・というのは前回聴いたのと同じ。

 
ただし、今回は、翌朝のざこばのセリフで、いきなり「ゆうべは、すまんなぁ」と言ってしまったので、次の、「あんた、何か私に謝らなあかんことあるんちゃうの!」という奥さんのセリフに、やや違和感があった。


 家にいてられないんです。仕事のない日は・・・パチンコに行く。
 私ねぇ、自分が度胸あるんかないんか自分でもよぉ分からんのです。
 例えば、パチンコやってて、自分とこにパチンコの玉が転がってくることがあるんですけど、これを拾ったらええのか、あかんのか・・・分からんのです。

 で、見送ったら私の隣の奴が、ぱっ!と拾って、自分とこ入れよる。そしたら、ああ、拾ってよかったんだ、何でわいは拾わなかったんだ・・・・って気になるんです。あかんたれでんねんなぁ。

 たまに、自分の足もとに4つも5つも玉が落ちてることがあるんです。もう、気になって打ってられへん。
 そんな時、私がどないするかぁゆうと、わざと自分の玉を1個落とすんです。「あっ!落ちたぁ!」か何かゆうてね。
 ほんで、そのついでに拾う。・・・これは私のやり方ですから、皆さんは自分のやり方を工夫してください。

 ほんまに玉を落としてまうことがあるんですな。
 これは拾いに行きます。自分のんやねんから。堂々と拾いに行ける。
 せやけど、こないだ、ものすご玉がぴゅ〜っと転がっていってね。必死になって追いかけていったら、自動ドア、ば〜ん!と開いて・・・。店の外まで、玉、拾いに行ったっちゅう・・・。見てた人には、せこい奴っちゃあ、て思われてるんでしょうなぁ。

 でもねえ、・・・・
(開き直るように)今の時代、せこくならないとダメなんですよ!店を広げちゃダメなんです。店は狭くしないと。・・・って、美々卯(大阪で有名な「うどんすき」の店)のおっさんがゆうてた。あんまりあて、ならんけど。



「始末の方はどないや?」
「こないだ、あぁたに教えてもぉた1枚の紙を3通りに使う方法、あれ、やってみたんだ」
「ああ。広告なんかで裏が白いやつがあるからな。ああゆうのは、手紙の下書きなんかに使うとええ。
 その後は、それで洟をかむ。あと、べちゃ〜っとするやろ?
 せやから、それを日に当てて乾かして、よぉもんで便所で使うんや」

「そうそう。せやから、わたし、チラシの裏、墨でベタベタにして、ほんで、それをよぉもんで便所で使
(つこ)た」
「え?何て?」
「ほんで日に当てて乾かして、洟かもう思たら・・・・・かまれへんのです。くそて」

「教
(おせ)てもろたんやったら、教てもらたようにせんかいな。
 世の中には捨てるもんなんかないのやで。鉛筆の削りかすは焚き付けになる。下駄の鼻緒は、しゃれた羽織の紐や」
「そら、なりまへんやろ?

 わたいね、扇子1本を10年保
(も)たす方法、考えましてん。
 扇子ね、こうして半分だけ開きますねん。
(半分開いた扇子を顔の近くでパタパタして)これでも風は、そない変わらん。まあ、5年は保ちますわ。
 で、骨とかがボロボロんなったら、残りの半分を開く。これも5年保ったら、二五、10年」

「・・・・お前、そこに気ぃついたんやったら、何で3分の1にせえへんねん?
(苦労して、3分の1ほどを開いて、パタパタ)
 これかて、風はえろぉ変わらんで。ほんで、三五、15年保つやないか」

「・・・・あのねぇ。人間、半分やの3分の1やのゆうてたら、あきませんわ。わたい、全部ぱぁ〜んと開けて、ほんで一生保たせる。
 ただし、手ぇ動かしたらあきまへんでぇ。こうやって・・・・・顔の方を動かす」
(と、手は扇子を持ったまま、顔を左右に振る)
「涼しいか、それ?」
「暑いんや、涼しいんや分からん・・・・。

 考えたら、食べもんほどもったいないもの、おませんな。上から入れて、下から出すだけやもん」
「そら、ええとこ気ぃついた」
「・・・何で出るんやろ?出なんだら、いつまでもおなかふくれてんのに。

 そない思たからね。こないだ、一升瓶の詰めをね。けつへぱ〜ん!と・・」

「どれで、どないなった?」
「3日目くらいから、冷汗がたらたら出てね。
 友達からも『お前、顔色悪いで。大丈夫か?』言われて。
 心臓がど〜き、どきするしね。
 友達が『すぐ病院行け!』ゆうてかつぎこまれたんやけど『保険はききません』やて!」
「そんなもんに保険がきいて、たまるかいな」

「特におかずがもったいないですわな。せやから、わいは、ここんとこ三度三度、塩。
 最初はゴマ塩なんかしてましたけど、ゴマがもったいない。塩、こんな安いもんない」
「塩・・・・・なぁ。塩もええけど、あら、減るやろ?わいは、もっぱら梅干しや」
「ええ?梅干しこそ、なんぼちょびっとずつかじったかて、減る・・」
「梅干してなもん、食うもんやないがな。眺めるもんや。想像力、想像力!


・・・・と、梅干しを眺めてわいてくる酸(す)いツバをおかずに・・・と言うと、男は「堪忍しとくんなはれ」と弱音を吐くところが珍しい。

 
鰻の嗅ぎ代の請求書が来て、音だけでええやろ?というのは定番だが、男が手を叩いて、指をさして快哉をあげるが、一転し「こんなことやってても、生活でけへん。何ぞ、これだけは・・・っちゅう極意があんのとちゃいまっか?」というセリフに。(特に「生活でけへん」というとこは、うけていた) 

 
お前は素質があるから教えたる。裏庭に来いということになり、「足元が暗く下駄が見えないので、灯りを」「そんなもん、ない。木づちで目ぇと目ぇの間をぱ〜ん!と叩いたら火花が・・・」というギャグと、庭に出る引き戸を「ずるな!減るやろ。持ち上げんかい」という二つのギャグで裏庭へ。

 
松の枝にぶら下がり、最後、親指と人差し指で輪を作って見せて「これ離すなよ、これ離さんのが始末の極意じゃ」がオチ。



 


  どうも、お退屈さまでした。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。  
 



 

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