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(No157) 第31回市民寄席 桂米朝一門会 鑑賞記 その1        

 2009年10月2日(金)開催の堺市民会館での鑑賞メモ。第25回から続けて参加しています。



桂ひろば  「大安売り」 

 トップはひろば。メクリの寄席文字で書かれた自分の名前を指差し、「決して『むちば』ではございません」と笑いを取る。
  ざこばの弟子が7人おって、私は5番目。上から・・・・と弟子の名を羅列するのは、そうばのマクラと同じ。

 違うのは、上3人、都丸、喜丸、出丸は師匠が桂朝丸時代の弟子で、わかば以下はざこば襲名後の弟子と解説した点。
 私などには常識に属する点でも、何故同じ弟子で名前の付け方が違うのだろうと不思議に思われる人もきっと多いだろうから、親切だと思う。

 さらに自分の名前でマクラを振った。

 

 わたくし、師匠に名前をつけてもらうときに4つ候補がございまして。
 一つ目が、今つけさせてもろてる「ひろば」です。
 二つ目が、私、大阪の高級住宅地でございます「西成」ゆうとこに住んでおりまして、
(ここで、会場がどっと沸く。やっぱ、そうゆうイメージが固定的なんやなあ)ナンバの駅が近いんで、「なんば」。
 三つ目が「ふろば」で、四つ目が「はかば」。
 まあ、「はかば」だけは堪忍してほしいということで、今の名前となりました。

 

 見ての通りの大きな体、体重は100kg、身長は182cmある。
 この体に合(お)うた相撲のお噂を・・・・と本編に入る。

 四股名は「こぶとり山」。贔屓にしている男の連れが「丁稚さんか?腕白相撲か?」と言っているくらいだから、体は小さいのだろう。

 江戸の本場所に行ったが「勝ったり負けたりだった」。遠い江戸での話、全部勝ったとウソを言っても分からないのに正直だと褒めちぎってから、よぉく話を聞くと10戦全敗(冒頭に、今は年6場所15日間だが、昔は10日間の年2場所だったとの解説が入っている)。

「それで何で勝ったり、負けたりやねん?」
「向こうが勝ったり、こっちが負けたり」
というのが、おもしろさのピーク。

 あとは、やめようと思って親方に相談したら止められた。

「やっぱ、親方ゆうと親も同然。そんなあんたでも可愛いんやろなぁ。
 いや、どこか見込があるんか分からん。何てゆうて止めなはった?」
「お前がやめたら、うちのチャンコは誰がたくゆうて」
「チャンコ番かいな!」という会話の後、
「味付けは、ほかの者には!」と腕をまくるシーンもおもしろかったかな。

 わけのわからん、つまらんサゲやなぁと思ったのは、前の小枝で聴いたときと同じ。



桂まん我 「野ざらし」

 今回も、扇子を持った両手をゆすりながらの登場。

 「ひろばの次は、まん我でございます」と言った後、「趣味にはいろいろございまして・・・」とすぐ、釣りに関するマクラへ。
 
 魚釣りなんて趣味は、せん方には、どこがおもろいのか分からんそうですな。
 魚がおるか、おらんか分からんとこに糸垂れて、釣れるや釣れんや分からんのに、ぼ〜〜っと待っとって何が楽しいんやと。
 ところが、これが・・・・・・・・楽しいんでございます。

・・・・・・・・・・全く賛同が得られんようですが。

 釣りも、釣堀てなとこは、もう一つおもろないんですな。

 魚がおる、と分かってるとおもろない。おるかどうか分からんとこで、魚と知恵比べいたしますのが・・・・・・・・・・楽しいんでございます。

・・・・・・・・・・これも全く賛同が得られんようですが。

 誰も知らん川なんかでね、水見てるだけでも楽しいんですが、穴場を見つけたりすんのが、また格別でして。

 

「あのぉ〜、もし、あんさん。釣れまっかぁ?」
「それが、朝から釣ってまんねやが、ウキがぴくりともしまへんねん」
「・・・・・・・・そうでっしゃろなぁ。そこ、夕べの雨ででけた水たまりでっせぇ」

 水たまりで釣ったかて、釣れるわけないんですが。

 また、釣ってる人の後ろで見てる人がいますなぁ。

 うちの嫁さんなんかも、よぉ怒るんです。あぁたが自分で行くねんやったら、まだ分かるよ。けど、人が釣ってんのん見て、何が楽しいのん!って。

 ところが、これが・・・・・・・・・・楽しいんです。よぉサンテレビとかでやってますわな。釣り番組。

・・・・・・・・・・・これも賛同が得られんようですが。

 釣りゆうのは、たいがい後ろから見物しますな。なかなか前回って、水ん中から見物ゆう人は、あんまりおらへん。

 今日も、釣りしてる人の後ろで、大きな風呂敷包み背負った人、行商人さんですかな、その方が見てる。

「あの・・・・あっ、あんさん、引いてます、引いてまっせ」
「え?いや、わたい、のんびり釣ってまんねん」
「いや、そら、ええけど、あっ、ほれ!引いてまんがな。あげんと!逃げられる。ほれ、引いてるて!」
「うるさいなぁ。あんなん、魚がエサつついてるだけですわ。まだ、早い」
「そんなことないて。まあ、あげてみなはれ。も〜!じれったいなぁ!わたい、急いでまんねん!」

 急いでんねやったら、さっさと行ったらええようなもんですが。

 

「しかし、釣りする奴はアホやな」
「何でや?」
「何でや、て、そらせやないかい。
 自分で釣りすんねやったら、まだ分かるで。
 それが、こないだ、一匹も釣れんのに、後ろで3時間半もぼ〜っと見とる奴がおったんや」
「ええ?いくら何でも、そこまでアホな奴はおらんやろ」
「おるんやて、それが。現にわいが、この目で見てたんやから」

 

 家の二階から釣りするゆう奴がおりましてな。

 家の二階の窓から竿出して、釣り糸落としとる。

「ぷっ!お前、見てみぃ、あいつ。家の二階の窓から竿出しとるで。

 アホやな、あいつ。何釣るつもりや。

 からこうたろ
(からかってやろう)、からこうたろ。

うぉ〜い、あんさん、そんなとっから竿出して、何ぞ、釣れまんのか?」

「はぁ。あんたで3人目や」


   「賛同が得られん」という繰り返しが若干くどかったが、釣り尽くしのなかなかええマクラから本編へ。

 日頃聖人君子ぶってる学者先生のくせに、ゆうべはべっぴんのおなご連れ込んでたやないかとねじ込んでいる若い者。

「そこまで見られてたんやったら仕方ない。話をするが、ちと怪談じみてくるのじゃ。

 夕べも淀川堤に釣りに行ったんやが、魔日ゆうやつか、雑魚一匹釣れん。
 こら、今日は殺生をするな、ゆうことかいなぁ思て竿を仕舞おうとすると、何処で鳴るやら遠寺の鐘がぼぉ〜〜ん・・・」
「やめなはれ、もっと陽気にでけまへんのか」
「と、前の薮から!」
「うわぁ〜〜〜!!!」
(と、走って逃げていく)
「・・・・・・・・・・・・お前、うわぁ〜〜はええけど、わしの財布、ふところに入れて何してんねん?」
「ああ、これ?
(と、財布を返す)で、何が出たんでんねん?」
「カラスが3羽じゃ」

「へ?カラス?何じゃ、わい、てっきり・・」
「飛び立ったあたりの、浪速の葦
(あし)、葦(よし)をば、こう竿でかき分けてみると、そこには真新しいドクロが・・」
「ああ、上等のお茶」
「そら、玉露じゃ。つまり、人骨、野ざらしじゃな。
 これも何かの縁、3べん、回向をして、ちょうど飲み残しの酒があったから、上からかけてやったところ、気のせいか、骨
(こつ)に何やら、ぽっと赤みが差したような・・・。
 こら、ええ功徳をしたと家に帰った真夜中、表の戸を叩く者がおる。
 聞くと、淀川から来たと言う。あれだけ回向をしたのに、狐狸妖怪の類
(たぐい)が仇(あだ)なしに来たか、と油断なく戸ぉを開けると夕べの娘じゃ。狐にもせよ、その姿、ゆうやつやな。

 聞くと、おかげさまで成仏することができました。せめてもの恩返しにおみ足でもさすらしていただこうとやってまりました、と。
 つまり、夕べの娘はこの世の者やないのや」

「へぇ〜〜〜。ほな、夕べの、ゆうでっか、れいでっか、ドロドロ?

 どですやろ?まだ、川行ったら、骨は落ちてまっしゃろか?」
「そら、あんだけ広い川原やさかい、一つや二つ、落ちてるかも知れんが・・・」

「ほな、今から行てきまっさ。ちょっと、その竿、貸しとくんなはれ」
「ちょっと待ち。そら、私が大事にしてる竿、持っていくねんやったら、こっち・・」
「借りてしもたら、こっちのもんや。

 

(川原に着いて)
 おぉ?また、よぉけ骨を釣りに来とぉるなぁ。
 うぉ〜〜〜いぃ〜〜 そこの二人ぃ〜〜 お前らは何狙ろてんねん?

 芸者かぁ〜?年増か、小娘かぁ〜〜〜!!!」
「ええ?誰や、あいつ?目の色変わっとるで」
「いえ、いえ。わたいら、そんなん釣ってません〜〜、魚釣ってますぅ〜〜」

「何ぃ〜〜?魚ぁ〜?お前ら、そんなもん釣れるかい!
 首でも釣れぇ〜〜

 待っとれよぉ〜〜 今、そこへ降りてくさかいぃ〜〜」

「ほっといたらええのに、お前が口きくから降りてきたやないか。
 ほれ、ほれ。隣に来よった!

 あ、あのぉ、エサついてまへんで」

「エサぁ?そんなもん要るかい!

♪鐘がぼんと鳴りゃ 上げ潮南さぁ〜 カラスが出てきて こりゃのさのさ 骨が来ぅるぅ〜〜♪」

「大っきな声やなぁ〜」

「♪その骨にぃ〜〜 酒を〜ばぁ かけりゃさ 骨がべべ着て 礼に来るぅ〜〜〜 ♪

 すちゃらかちゃんちゃら すちゃらかちゃん すちゃらかちゃんちゃら すちゃらかちゃん」

(踊りながら、竿で水面をぴしゃぴしゃ叩く)
「あの、もし!そない、水をかき回したら魚が逃げる」
「何ぃ〜?お前らとこでは、こんなんを『かき回す』ゆうのん?

 うちで『かき回す』ゆうたらなぁ・・・・・・・・・・・・・・こうすんねや」
(竿を両手で持って、本格的にかき回す)

「うわ、うわ、うわぁ〜。もう、あかん。向こう行こ、向こ」
「いや、わい、釣りしてるより、この人見てる方がおもろい」 

「しかし、あれやな。ゆうべ、先生のとこ来てたんは、ちょっと若すぎた。
 わいは、27、8。30凸凹
(30歳前後)。色っぽい年増がええなぁ。

 下駄の音、からころからころ、からころからころ・・・・。
 こんばんわぁ〜、ゆうです、れいです、ゆうれいですぅ〜〜ちゅうて。

『ちょっと、お兄さん。あんさん、こんな人
(嫉妬して角を生やしている嫁さんのイメージで、人差し指を立て、角のような格好をする)いたはるんちゃいますのん?』 
『何ゆうてんねん、そんなもん、いてるかいな』
『あ、ほんま?ほな、ここ座らせてもらぉ』」

「うわっ!あいつ、水たまりに座ってびちゃびちゃになってもぉとる!」

「『もう!浮気とかしたりしたら、いやでっせぇ』
『そんなん、するかいな』
『ほんまでっせぇ。浮気なんかしたら、つねっちゃう。ツネツネツネ・・・・』
『痛い、痛い、痛い・・・・』
『ツネツネツネ・・・・』
『痛い、痛い、痛い・・・・・』」

「あんた、一人で何やってまんねん?」
「妬いてるな?

 そぉ〜れぇ〜〜
(一段と張り切って竿を振ったが、針が鼻に引っ掛かる)

イタタタタタ・・・・・・、お、おい、誰かとってくれぇ。

 くそ!笑
(わろ)とるばっかで、誰も取ってくれよらん。
(仕方ないので、ぶちっ!と引きちぎり)うわっ、血ぃが出てるがな。

 鼻から血が出て、はなちにならんって、このこっちゃな。

 こんなもん、あるさかい、こないなことになんねん。
(ぶちっと釣り糸を噛み切り、針を吐き棄てる)

 とうとう、針なしで釣り始めよった。「野ざらし」でございます。


「わたい、怪談あきまへんねん〜〜」と身をよじるとこ。

 釣りを始めてからのハチャメチャぶり。
 会場中がどっかん、どっかん沸く。

 一方で、針を左手で持って、右手で竿をくるくる回して巻きつけた釣り糸を伸ばしていく場面なんかはうまいし、針を左手に持ち、右手で竿をくい!くい!としならせて、右手をすっと前に伸ばすとこなんざ、ぴゅ〜〜〜んと前に飛んでいって水面にぽちゃん!と着水する音まで聞こえる感じ。

 



 


  どうも、お退屈さまでした。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。  
 



 

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