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(No145) 桂枝雀 TV鑑賞記 その1       

 「かんさい想い出シアター」で枝雀師匠の特集をしていた。
 平成21年9月5日(土)に「代書」、同12日(土)に「池田の猪買い」、19日(土)が「貧乏神」。

 また、かんさい特集で「なにわの爆笑王 再び〜生誕70周年 桂枝雀の至芸〜」(4日(金)放映。翌5日再放送)という番組をやっていた。



桂枝雀 「代書」

 「かんさい想い出シアター」は、アーカイブスというか昔の番組の再放送なんだが、そこに若干の解説がつく。
 今回の放送には、何と弟子の雀々が出ていた。

 昭和53年放送の「近畿の話題 内弟子修行」という番組が紹介されていた。雀々は枝雀師匠の四番弟子。昭和52年に16歳で内弟子として入門。

 TVでは、雀々が掃除しているとこや、茶色のジャージを着た師匠や、子供さんと一緒に食事しているシーン、お揃いのハンチング(雀々は帽子工場で働いていたことがあるそうだ)をかぶり仕事場にでかけるシーンなどが写っていた。

 おもしろかったのは、雀々に稽古をつけているシーン。おそらく「始末の極意」のラストだと思う。
 ぶら下がってるねんから、もっと手をぐっと伸ばして、とか、視線はこっちに向いているべきとか実に細かい。

 その精神(こころ)は、落語のウソを活かすためには、その前の描写にしょうもないウソがあって聴いてるもんに不自然と感じさせるようではあかんというもの。

(左写真は、NHKの番組紹介HPより)

 
 

 また、先ほど書いた電車で「通勤」のシーンでは、(有名な話だが)車内でずっとネタを繰(く)っている(=噺を練習している)。
「日常の全てが修行、お稽古なんです。師匠がそうですから、私ら弟子も一瞬も気が抜けない。毎日、24時間全てが稽古なんです」なんてことを雀々が女性アナウンサーに得々と語っていたが・・・・・・・。

 枝雀師匠の高座は、昭和61年頃の放送分だったようである。

 

「儲かった日も 代書屋の 同じ顔」、まあ、インテリの商売でして、儲かっても「儲かったぁ〜!」と感情を露わにする商売ではないのでございます。

 
   全体的にアッサリした高座である。同じ商売でも「医者」のマクラなどはナシで本編へ。

 

「お名前は?」
「どなたのお名前?」
「どなたの、て・・・。あぁたのお名前ですよ」
「それならば、留こです」
「へ?」
「留こ!おぅ!・・て、これがわたいの名前です」
「いや、そんなんやのうて、ちゃんとした名前」
「ちゃんとした名前・・・・て、留ゆう名ぁは、ちゃんとしてまへんか?」

 
   枝雀師匠の噺にはよくあるパターンだが、いきなり返さずに、いったん聞いてから、思い出したように「ちゃんとしてまへんか?」というところが一種のノリツッコミみたいな雰囲気を醸し出す。

 

「ハハハハハハハ」
「何がおかしいんでんねん?
 いや、何留五郎とおっしゃるんでっか?」
「そうです。何留五郎」
「そうやのうて、姓は?」
「背ぃでっか?・・・・五尺・・」
「手ぇは無しでやんなはれ、手ぇは」

 
   留が、手で背を示すような格好をし、それを代書屋が制する。このくだり、枝雀師匠自身が好きなのか、代書屋がふと素(す)に戻り、吹いてしまう。



「生年月日ゆうてもらえますか」
「せいねん・・・どぉ〜ゆうような?」 
「どぉゆうような、て、生年月日をゆうてもらいたい」
「そんなこともゆうんですか。うまくゆえるかな。

せいねんがっぴ!」
「・・・・・・・・・・・いや・・・・『生年月日』とゆうてもらうんやのぉて・・・・・。
 生年月日を、ゆうてもらいたいんです」
(手で、「万事心得てます」というような格好をして)生年月日(両手をぱっ!と横に広げながら)を!
「・・・・・・・そやのぉて、あぁたの生まれた日ぃのことをね・・」
「何にも覚えてしまへん」

  
 
  「うまくゆえるかな」って小声で自問するとこが実にかわゆい。

「何年ですか?」「そうです」といった噛み合わなさ加減、
「あはははははは」「何がおかしいんだんねん」という繰り返しのおかしみ。

「お年は?」「26です」「(怪訝そうに顔を見て)26ぅ〜?あんさん、どない見ても40は越えたはりまっせ」と訝る代書屋に
「これだけは間違いおまへん」
と胸を張る。

そして、「とぉめぇ〜。おまえも26じゃ。50の半(なか)ら男じゃ。もう大丈夫や・・・・」(ことっ・・・・と往生)と、親父さんの最後の言葉を。
「そら、親っさんがお亡くなりになった時の話でしょ。あぁたの親父さんは、いったい、いつお亡くなりになったんでっか?」
「さあ、今朝も嬶
(かか)とゆうてたとこでんねん。早いもんやなぁ、親父が死んで、もう20年になるなぁ(ゆうて)・・」
 この留の述懐を最後まで言わせず、途中で切ってしまう呼吸。

 雀々がいくら真似ても、明らかに違う。

 一方で、61年の放送とかで「過渡期」的な雰囲気も漂う。
 マクラもあっさりしているし、ギャグも少なめ。
 サゲも、「ガタロ」でもなく、「ぽ〜ん!」で締めるでもなく。

「これでご飯を食べてたとゆう、あぁたの本職は何でんねん?」
「それなればポンです」
「ポン?」


 そして「ポン」の説明に入り、留は景気良く「ぽん!ぽん!ぽん!ぽ〜〜ん!」と連発するが、代書屋の方は「ほな、後はええように書いときます。どう書いても一緒のこっちゃ」という中途半端なサゲだった。





 かんさい特集「なにわの爆笑王 再び〜生誕70周年 桂枝雀の至芸〜」(9月5日放映)

 枝雀師匠生誕70周年記念興行の模様や大ファンという指揮者の佐渡裕氏の話が紹介される。

 また、先日(↑上記)紹介した雀々の内弟子時代の放送や、ファンが投票した「もう一度聴きたい枝雀落語」のベスト3の結果、及びその3作(「代書」、「池田の猪買い」、「貧乏神」)のダイジェストなども流された。

「かんさい想い出シアター」は、この投票結果に基づき放送作品を選んだようなので、観る順番を間違えたなと感じた。



  どうも、お退屈さまでした。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。  
 



 

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