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(No131) 第11回朝日東西名人会 鑑賞記その4       

   平成21年2月1日(日)にシアター・ドラマシティで開催された落語会のメモ・・・・の完結編。



 

(5) 桂文珍 「二番煎じ」


 私、上方落語協会の理事をやらせてもろてまして・・・・・・抜き打ちで尿検査をいたしました。
 会場、大爆笑。もちろん、日本相撲協会の抜き打ち尿検査、力士の大麻検出騒動を皮肉ってる。

 いい反応ですねぇ。説明しなくても分かってもらえる。
 不埒な者は一人もおりませんでしたが・・・・・・・・全員が糖尿でした。

 
 歳とともに不具合なとこが多くなってまいりました。
 去年の暮れに還暦を迎えまして。

 同級生が楽屋を訪ねてきたりしてくれます。

「いくつになったぁ?」
「・・・・・同い年やがな
「やっぱし?」
「楽屋入ったら帽子くらい取ったらどないや?」
「脱がれへんねん」
「何でや?」
ボケ防止
(帽子)

「・・・・・・・」
「弟子にしてくれへんかな?第二の人生、定年よ」
「お前、公務員やろ?」
渡りができへんねん」

 現在の麻生政権でいろいろ問題になってる公務員の渡り問題を皮肉っている。

「急には無理やで」
「若造より年寄りがしゃべった方が値打ち出るで。
 名前だけでもええねん。桂あか珍とか」

コンドロイチン?膝、痛いんか?」
「痛いねん。で、医者がゆうには左膝は加齢が原因です、て。
 しやから、医者にゆうたってん。左足も右足も同級生やって。
 そしたら、医者、どないゆうた思う?左足から先、生まれたんでしょう、て」

「その医者が落語家になったらええんちゃうか?

 皆、どないしてる?」
「覚えてるかな、山田?」
「ああ、学園紛争で安田講堂立て籠もったり、デモ行ってた?」
「そうそう、機動隊に石投げてた山田。
 あいつ、今、病院で透析受けてる」

 言わずもがなだが、機動隊への投石と腎臓病の透析をかけている。

「これは大分おもろいな」
「これで落語家なられへんか?」

 まあ、冷やかしに来てくれてるんですが。


 昔、私らが聴いてた音楽ゆうと、ニューミュージックってやつですなぁ。

 今、考えると吉田拓郎は詩の中身が何もないことに気が付きました。

♪ 私は 今日まで 生きてみました〜 ♪
♪ 時には 誰かに しがみついて〜 ♪

♪ 明日からは ♪ うん。明日からは、どう生きていくねん?思て聴いてると、

♪ 同じようにして 生きていくんでしょう ♪

 もっと勉強せえ!て、言いとなりますなぁ。

 
 この歌は映画「旅の重さ」の主題歌、「今日までそして明日から」。高橋洋子のデビュー作である。
 歌詞は正確には「私は今日まで生きてみました 時には誰かにしがみついて 〜 そして私は今思っています 明日からもこうして生きていくだろうと 〜」

♪ 人間〜なんて ♪ うん、大きなテーマや。何ゆうんやろぉ?思てると、

♪ ラララ〜ララララ〜ラ〜 ♪ 

 ラ〜しか、ゆうてへん。でも、そのララ〜に各々の思いが入れられる。

 さだまさしも同じことで、
♪ アア〜アアアアア〜ア〜ウウ〜ウウウウウ〜 ♪ ア〜とウ〜だけしか、ゆうてない。それでも富良野の雪景色が浮かんでくるだけ凄いですなぁ。

 ルーツたどって、びっくりした。由紀さおりの「夜明けのスキャット」、
♪ ル〜ルルルル〜 ラ〜ララララ〜 ♪

 でも、このル〜とラ〜に気持ちが入れられるんですな。それに、ええのは歌詞を覚えんでええ

 いつ私も認知症になるか、わからん。それで、私、落語もこれで行こう、思いまして。
 右向いて「ルルルル」、左向いて「ララララ」。
 お客さんが、頭の中で「ああ、今、これゆうてんねんなぁ」と思いを巡らし、アハハハハ。

 これやったらよろしぃでぇ。あっから
(と、楽屋口を見て)、ここ(高座)まで歩いてくる体力さえあったら、ええ。

 紙おむつ、ガサゴソいわしてね。「ルルルル・・・・・・・ラララララ・・・・・」ゆうて。
 そしたら、お客さんも「アハハハハハ・・・・」。ほんでジョジョジョジョ〜・・・・・・。

 そん時は、ここ(シアタードラマシティ)は使いとぉない。(客席を上から下まで眺め)斜めになってるから、前列なんか水びたし。

 同級生で、孫がおるもんも結構いてまして。
 3、4歳の男の子がおって。子供は遊びの天才ですからなぁ。

 新聞紙の刀で斬る芝居をして、ぼ〜っとしてたら、
「おじいちゃん!死なな、あかん!」

 「ああ〜!」ゆうて倒れると、背中さすってくれて
「おじいちゃん!死んじゃいや〜!!」

 この時が最高に幸せや、そうです。「この孫に全財産譲ってもええ!」と思うらしいですな。

 ず〜っと「死なないでぇ〜」ゆうてるから、ほんまに死んだ思てるんちゃうか思て、起きて「大丈夫や。おじいちゃん死んでへんでぇ」ゆうたら、また、刀でずば〜っ!

 この遊びを延々とやってるさかい、「いつまでやんねん?」て訊いたら、「死ぬまで」・・・・・・・。


 まあ、たいがい男の人の方が早ょ逝きます。女の人の方が人生、幸せに暮らしはるようで。

 たまに養老院に慰問に行ったりしますと、おばあちゃんは、
(かん高い声で)「また来てねぇ〜!またねぇ〜!」て宇宙人みたいな声、出してる。
 歳、訊いたら、「100!100!100!」。・・・・・・・300か、思た

「またねぇ〜!また来てねぇ〜!!」ゆうて、手ぇ振って最後まで見送ってくれる。
 こっちが見送らな、あかんのに

 おじいさんは、ゆうと「ワァ〜」ゆうたきり。
(うつろな表情で、体揺らしている)動かないんですが・・・・・揺れている。

 おじいちゃん、おしゃれですからね。ジャージ履いてる。ローライズでね。
 ローライズ、分かります?茶屋町
(ちゃやまち。シアタードラマシティのある北区の町名。風情のある名前だが、今は若者の街)あたり、よぉけ(たくさん)いてるでしょう?Gパン、腰骨あたりで履いてるやつ。

 おしゃれですねぇ、てゆうたら、上げる気力がない・・・・・・。

 茶屋町ゆうたら、さっき、楽屋の入り口、一杯やったから、キャー言われるか思たら完全無視や。何でか思たら、上の宝塚のお客やった。 
 シアタードラマシティでは、複数のホールがあり、その日は、上のホールで宝塚歌劇をやっていた。

 せやせや、そんなことある・・・ゆうのを頼りに落語やってるんです。

 私の母親、84で元気です。親父は先に死んだんですが。
 親父がいよいよあかんようになった時、私、父親の手ぇ握って、
「お父ちゃん!しっかりしぃや!」ゆうて励ましてたんですが、母親ゆう生き物は何考えてるんでしょうなぁ。
 私の耳元で、
「坊さん、何人呼ぶ?」

 こんな時に何ちゅうことゆうねん!て怒ったら、
「もう聞こえんようになってる」・・・・・・・・。

 そしたら、親父が小さな声で 「聞こえてるよぉ〜」・・・・・・。それが最後の言葉でした

 この頃は母親も寂しいんでしょう。仏壇の前で、よぉ「お父ちゃん。早よ迎えに来てぇ〜」ゆうてます。

 そのくせ、健康食品ばっかり買
(こ)うとる


 天災ゆうたら、私、阪神淡路大震災で、えらい目ぇに遭(お)うたんです。
 早いもんで、あれから14年にもなるんですなぁ。

 寝てましたらガタガタガタ〜ッ!と来て、嫁さんと手に手を取って飛び出して、命あっての物種やったなぁ思て、ふと気ぃつくとクリスマスツリー持ってました

 こんなん持ってるて分かったら何、言われるか思て後ろに隠そうとしたとこ・・・・・・・見つかった

 嫁さんが「持ち出すねんやったら、実印とか、もっと大事なもんあるやろ!」ゆうけど・・・・・・・・どこにあるか分からん。

「大体、1月17日までツリーを片付けんお前が悪いんや!」ゆうてたら、近所の人が「まあまあ。命あっただけよかったやおまへんか」 

 家に戻りますと、えらいもんで周りの家が傾いてるんです。うちだけは真っ直ぐでした。
 そしたら、嫁さんが「よそは真っ直ぐで、うちだけが歪んでるねん」


 日本は木造建築なんで、火事になりやすいんですな。

 火事の親子の会話ゆうのが、ありまして。
父「この頃は防火設備や消防団が発達して、火の手が拡がりにくいやろ?引越ししよか?」
母「え?どこへ?燃やせるとこ、ありますのん?」
「枚方
(ひらかた。大阪の地名)あたりがええ思うねん。昔、消防署が燃えたらしい」
「ああ、そうですのん。ほならみんなで引越しましょか」

 そしたら、息子が「ぼやも行く」・・・・・・・・・。
 それだけの話なんです。
 これも言わずもがなだが、坊やとぼや(小火)のしゃれ。

 寒い時分のお噂です。

「寒(さぶ)いですなぁ〜。夜回り、ご苦労さんです」
「おおす!おいっす!うす!おす!おおっす!おす!うっす!わっす!・・・・・・・・・・」
「宗助はん。そない、人数いてへんやろ。

 私、月番でっさかい、ちょっと差配(さはい。取り仕切り)さしてもらいまっさ。

 どうですやろ?皆で10人ほど、いてまっしゃろ?これ10人もぞろぞろ一列で歩いてもしゃあないさかい、二班に分けるゆうことで。

 ほな、私、月番でっさかい、一組目さしてもらいまっさ。
 尾張屋はん、あぁた二組目の長
(おさ)でまとめていただくゆうことで。

 ほんで一組目でっけど、伊勢屋の御隠居、鳴子お願いできまっか?
 黒川の旦さん、拍子木、お願いします。
 宗助はん。あぁた、提灯で足元照らしておくんなはれ。

 たっつぁん、金棒チャリ〜ン!とお願いしまっせ。ほな、さっそく出かけましょか」
「ご苦労さんですぅ〜」 

ポ〜ン ポン ポン ポン ポン (以前の米朝師匠のよもやま噺にあった雪を表すお囃子)

「寒いなぁ〜」
「冷える思たら雪んなりましたなぁ〜」

「いつも、うちの番頭がお世話になってます」
「いやぁ、店のもんが次々に風邪になりましてなぁ。元気なんは、私とばあさんだけでして。まさか、ばあさんを夜回りに行かすわけにもいかず、私がこうして来たような訳で。

 しかし、奉公人がヌクヌクと布団入ってんのに、私が夜回りするとは」
「そう言いなはんな。奉公人が働くおかげで身代がでけてまんねんがな。

 宗助さん!しっかり足元照らしてくれんと!」

「いやぁ、あんまり寒いさかい、提灯またぐらに入れてんねん」
「え〜?またぐらぁ〜?大丈夫か?そんなとこ火傷したら取り返しつきまへんで。

 伊勢屋の御隠居。鳴子カラカラ鳴らしてもらわんと」

「いや、鳴子持つ手が寒いんで、帯の間にはさんで、足で蹴って運んでんねん」

「それで最前(さいぜん)からザラザラ、ザラザラゆうてまんのんか?

 黒川の旦さん、拍子木は?」

「拍子木持った手ぇをたもとに入れたらな、もう出とぉないゆうてんねん。
(たもとに入れたまま叩き合わせるが、コツンコツンとゆう音しか出ない)

「たっつぁん!金棒は?」
「お前、月番や思てポンポンゆうな!鳴子や拍子木が持てんのに、金棒が持てる筈ないやろ!
 せやから、最初からズルズル、カチン、ポチャンと」
「何や、それ?」
「いや、引きずってズルズル、石に当たってカチン、水たまりにはまってポチャン」

「こんな寒い日に夜回り出るゆうのは、いかがなもんなんでしょう?」

「いかがなもんでしょう、ゆうたかて出てんねんし、盗賊やないんやから、声出さな。火の用心、て。

 宗助はん、あぁた、ええ加減に提灯、またから出して、声を出しなはれ」

「かなんなぁ〜。出すのん?出さな、あかんのん?
(ふてくされたような平板な調子で)火の用心!いかがでしょうか?」

「火の用心、売って歩いてどないすんねん。

 黒川の旦さん。あんた、謡(うたい)の先生やってんねんから」

「そうですか?ンン!ン!(と、せき払い)

♪ 火のぉ〜 用心〜 火の〜周りにはぁ〜〜 ♪ 」

「そないなると思た。
 伊勢屋の御隠居、あぁた、声出し慣れてはるから」

「いや、辛いもん食べて声の調子が悪い。
 どこの誰かに聞かれるとも分からんし・・・」

「そのためにやってるねん!」

「シャシャシャシャ〜〜ン!!」

「何でんねん、それ?」

「三味線入らな、声が出んので。

♪ 火の〜用心〜 火のぉ〜 周りにぃ〜 互いにぃ 気を〜付けましょう〜〜 ♪」

「自分一人気分よぉなって。
 たっつぁん・・・・」

「よぉ、ゆうてくれはった!ゆうてくれなんだら、自分で手ぇ挙げよか、と。

 若い時悪さ、して勘当されてた頃、毎晩夜回りしてたんや。
 刺し子、長半天。三尺の算盤の帯で、豆しぼり首に巻いて、金棒をば、シャシャリ〜ン!」
「何や、金棒、持てるんやがな」
「♪ 火の用心! さっしゃりましょ〜〜いい! ♪

 こうやって廻ってると、廓(くるわ。遊郭)の二階から、
『ええ声やなぁ。お兄さん、あがっとくんなはれ!』・・・て、キセルの雨が降るような・・・・。あはははは。

♪ 火の用心! さっしゃりましょ〜〜いいぃ〜〜〜わぁん〜〜わぁん〜〜わん〜〜 ♪」

「何でんねん、そのわん、わん、わんゆうのは?」

「北風に声が震えてるとこ」

 あほなことゆうてるうちに、町内ひと回りして番屋へ帰ってまいりました。

「お疲れさんです。どうぞ、火ぃあたって・・・。

 どうです?表の様子は?」

「小春日和ですわ。どうぞ、行ってらっしゃい。

 おい!戸ぉ閉めぇ!かんぬき!かんぬき!

 あいつらには、ゆぅ〜っくり廻ってきてもらわんと!」

「う〜〜 さぶ!さぶ!う〜う〜さぶ!さぶ!さっぶぅ〜!!」
「あんた、やかましいな。

 炭、もうちょいおこしてくれてたら、ええのに。けちっても仕方ない。

 ああ、(炭は)立てた方が、いこりまんねんで。
 ふ〜!!
(炭がおこるように吹いたら灰がまき上がり)ゲホ、ゲホ、ゲホ。

 すぐに、いこりますよって」 

「・・・・・・・・実は私、こうゆうものを用意してまんねん」

「え?こら瓢箪?」
「へえ。娘が風邪ひいたら、あかんゆうて」
「お酒でっかぁ?こないだも番小屋で番太郎が酒呑んで、酔っ払って寝てる間に火事なったゆうて、この頃は役人も、やかましおまんねんで。
 伊勢屋の御隠居、あぁた、こん中で一番の年長者やおまへんか。いわば、みんなを諌めなあかん立場の人でっせぇ。
 そのあぁたが、そんなもん持ってくるやなんて・・・・・。何、考えてはりまんねん!」

「・・・・・・・えらい、すんまへん」
「こっち貸しなはれ!

 たっつぁん、鉄瓶洗(あろ)て、これ入れなはれ」
「え?」
「こら、風邪薬でんがな。

 ふくべ
(瓢箪)からやと、ばれるやおまへんか。せやから鉄瓶で煎じますんや」

「実は私も持ってきてるねん。これも煎じてね。

 しかし、酒だけでは、寂しいなぁ」

「いや、私、実は、こんなもんを・・・・」
「宗助はん、それ何だんねん?」
「ししの身、いのししの肉です」
「え〜?これでっかぁ〜。気ぃ利いてるなぁ。
 あ、ちゃんとネギも切ったぁる。

 あ!しやけど煮(た)く鍋がないわ」

「私、鍋も背中に・・・・・」
「ええ〜?宗助はん、あぁた、町内廻る間、ずっと鍋、背負ってたん?
 道理で、さっきから身体、えらい猫背や思てた。

 たっつぁん?煎じ上がってるか?」

「ええ?湯呑みが、いるのれすかぁ〜?」
「え〜?お前、こっそり呑んだんちゃうか?」
「いや、瓢箪から鉄瓶に移したら、ちょっと余りましたのれねぇ〜。口んとこ持っていったら、すっと入りまんねん」

「伊勢屋の御隠居、あぁた、年長者やから、まずは一杯・・・」
「へへへ・・・・・こんな、ええもんを・・・・・。
(呑んで、感嘆の声)あ〜〜」

「どうぞ、もう一杯。
 あ、鍋もあがってきた。これも箸、つけなはれ」

「ホフ、ホフ、ホフ・・・・・・・ほぉ〜 これは、結構なもんですなぁ。
 ししの身ぃは、熱〜ても火傷せんてなこと、言いますなぁ。

 一句、できました。
『猪鍋
(ししなべ)を みんな食べてる 火の用心』」

「上手いんか、下手なんかよぉ分からん。いまいちですな」

「そうですか。ほんなら、こんなんはどうです?
『猪鍋を 取ってくれろと 泣く子かな』」

「どこぞで聞いたような・・・」

「『木枯らしを 集めて早し 最上川』」
「もぉ、よろし。箸を回してください」

(伊勢屋の御隠居、にんまり笑って箸を手で回す)
(箸を奪い取り)年寄りのすることですか?箸は一膳しか、おまへんねん。

 ささ、今度はあぁたが」

「へえ、すんまへん。私は肉よりもネギです。この歳になると、肉よりネギの方がありがたい。

 うっ!ホ、ホ、ホ、ホォ!」
「何でんねん?」
「いや、ネギの真ん中食べて、熱い!ゆう表現」
「あんた、肉よりネギゆうてるけど、ネギの間に肉はさんでるがな」

「ははは、分かりましたか?

 私も一句。
『木枯らしの・・・』」
「ほぉ、木枯らしの・・・?」
「『・・・てて親の名は 唐辛子』」
「そら、ちょっと、面白い」

「表、開けい!表、開けい!」
「あ!犬や!」
「シッ!シッ!」
「・・・・犬が『表、開けい』て、ゆうか?」
「何?そら、役人やがな!えらいこっちゃ!

 鍋、片付けぃ!」
「え?」
「鍋、隠せゆうてんねん!」
「どこへ?」
「どこでもええがな!もういっぺん背負え」
「熱ないか?」
「さっきは、冷たかったやろ?」
「そんなもん、背負えるかいな。押入れもないし・・・・。
 宗助はん、あんた、その上に座りなはれ!」
「ええ〜〜?
(仕方なく座るが)うわぉ〜〜!!」
「あんた、この寒いのに汗まみれやで」

(ようやく、番屋の戸を開ける。見回りの役人が入って来て)
役人「廻っとるか?」
たつ「へえ。先ほろから、だいぶんと廻っておりますぅ」
役「ん?町内火の用心じゃぞ」
月番「はい!今、二組目が廻っております」
役「ん?それは鉄瓶か?」
「どないしょ?あら、宗助はんが・・・・」
宗「名前、言いなや」
月「ちょっと風邪薬を煎じております」
役「うん、左様か。身共
(みども)も煎じ薬を一杯、所望いたす」
「あの、これは宗助はんが・・・・」
宗「せやから、名前ゆいないや
(言うなよ)

役「(湯呑みを突き出し)なみなみと入れよ。
 煎じ薬はなみなみが良いぞ。

(呑んで)うん!確かに煎じ薬じゃ。こうゆう煎じ薬は良いのぉ」
月「同罪じゃ、同罪。お咎めなしや。」

役「う〜ん。こうゆう煎じ薬には酒の肴、ゆうか・・・つまみのようなものは、ないか?煎じ薬には、つまみがあった方が良いぞ」
 一生懸命、町人側も、役人側も「これは酒ではなく、煎じ薬」という世界で通そうとしているとゆうのに、「酒の肴」と言ってしまってはぶち壊しである。
 文珍がうっかり「酒の肴」と言ってしまったため、一瞬変な空気になってしまった。

月「ちょっと、あの〜。出場所の具合があるんで、少し向こうを向いといてもろて・・・・。

(鍋を見て)宗助はん!おつゆ、無(の)ぉなってる。
 全部、吸い上げたん?
 後で、かい
(痒い)よぉ〜?知らんよぉ。

(鍋を役人に出し)へえ、どうぞ」 
役「これは何じゃ?」
月「ししの身です」
役「
(猪の肉を食べ)うん。煎じ薬にししの身は良いのぉ。美味である。
 何のだしじゃ?」
月「え?・・・・・・ふんどしでございます」
役「何?」
月「ですから・・・・・・・・・ふんどしでございます」
役「おお!本だしか。ししの身が本だしに合うとは知らなんだ。
 煎じ薬をもう一杯所望じゃ」
月「あの〜。もう一滴も残っておりません」
役「左様か。では、町内をもうひと回りしてくるによって、その間に二番を煎じておれ!」

 
 文珍とゆうと、昔の「ヤングoh!oh!」とゆう番組の若手落語家4人組「ザ・パンダ」(あと3人は、月亭八方・桂きん枝・林家小染)でも、地味めのキャラで、「滝廉太郎似」とか「丹波篠山」を売りにしていた。
 しかし、最近ではすっかり文化人だし、もう還暦とは知らなかった。

 堂々たる芸風で、花緑とか楽太郎を東京から迎える東西名人会でトリをとるに相応しいパフォーマンスだったと思う。

 


  どうも、お退屈さまでした。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。  
 



 

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