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(No113) 米朝一門勉強会 鑑賞記その2       

 平成20年11月24日(月・祝)午後2時からの落語会に行ってきました・・・・・・・の続き。




 

(3) 桂小米 「上方見物」

 

 ちょっと風邪をひいておりまして、声が出にくいんです。その代わり、鼻水は出やすい。
 まあ、噺をしている内に出てくるやろうと。・・・・出んかもしれませんが。まあ、賭けみたいなもんで。

 
 医者がゆうには、しばらく声を出すな、ゆうんですな。私、ゆうたんです。「そんなん、黙ってたら、私、ご飯が食べられません」て。

 ほたら、医者が「ご飯くらい、黙って食べえな」。・・・・・そらまあ、そうなんですが。

 今、大阪に噺家が200人ほどいてます。ほとんどが大阪出身です。大阪やのうても、京都、奈良・・・・・・兵庫、滋賀、和歌山・・・・・・・みな、近畿一円ですな。

 そこいくと私は、鳥取県西伯郡てま村大字てま○○○の1。これが私の本籍でございます。

 わたくし、今までこのことをマスコミに発表しておりませんでした。

 なぜ発表をしていなかったかと申しますと・・・・・・・・・・・ゆうてもしゃあないからでございます。

 
 私が通ってた小学校は、学年で1クラスだけ。1クラス35人ですから全体で200人でございます。皆さんからすると、小さい小学校やなぁとお思いかもしれませんが、日本一人口の少ない鳥取県ではマンモス小学校と言われておりました。
 もっとも鳥取県で「マンモス」ゆうのは大きいとゆう意味やのぉて、絶滅寸前とゆう意味でございまして。ほんまに、きれいになくなってしもた。

 まあ、田舎でっさかい土地は広ぉございまして。私の家も8000坪ございます。いや、母屋だけで8000坪でしたら大したもんでっけど、離れから鶏小屋、犬小屋、畑から何から全て入れての8000坪ですからな。

 うちの隣の家なんか1万2000坪ありますからね。ま、もっとも、うちの方の「坪」ゆうのは(両手で小さい円をつくって)「たこ壺」で測るんですが。
 

 田舎なんで、ほんまもんの・・・まあ、ほんまもんゆうのも変ですが、ほんまもんの米がとれます。野菜は裏の畑でとれるし。魚かて、海が近い。よぉ産直なんてこと申しますが、産直どころやない。「いま直」てなもんで。

 ただ、肉は鶏だけなんです。祭りの時なんか、おかんがこんなこと(鶏の首をひねるさま)してね。雑巾、しぼってんのんとちゃいまっせ。

 つまり、うちの方では肉イコール「かしわ」なんですな。みな、牛肉や豚肉は食べんのです。なぜかとゆうと、村人全員がヒンズー教徒なんで。

 村では、みな家にカギを掛けんのですな。とゆうのも、泥棒が入りませんのでね。・・・・・出ることはあっても。

 

 米朝に弟子入りした1日目のことやったんですが、晩御飯のおかずにハンバーグが出ました。私、その時分、カタカナの料理ゆうたらライスカレーとラーメンの二つしか知りませんでした。
 何せ、35年前でっさかいな。今やったら、マルシンとかマルダイとかありますけど。
(石野注 小米さん、いまだにあんまり高級なハンバーグはご存じないようだ)
 師匠が「どないした?何で食べへんのや?」いわはるんで「師匠!こらぁ何ですかぁ?」て訊きました。
 「こらハンバーグゆうもんや。美味しいで。食べ」いわはったけど「師匠。こら、馬の糞を固めたもんですかぁ?」ゆうてもたもんで「人が食べてる時に、何ちゅうことゆうねん!」てえらい怒られました。

 

 

 田舎のもんが都会に来ると、人が多いのにも驚きますが、建物が高いのにも驚くもんでございます。

「じんしろのぉ(甚四郎よ)。ここが有名な、”どうとんほり”(道頓堀)かの?いかく(とても)人が多いのぉ。今日は祭りかのぉ?」
「ひょこ作よぉ。そげなことゆうてると笑われるぞぉ。大坂さまじゃあ、常の日ぃでも、これくらい人が出るんじゃあ」
「あちらへ進んだら”ふがす”
(東)じゃのぉ?」
「何ゆうとるぅ。あっちゃあ、”むなみ”
(南)じゃあ」
「馬鹿なことゆうでねぇ。おてんとさまの様子見りゃあ、あちらが”ふがす”に決まっとぉるでねぇか。それとも何かのぉ?うちの田舎のおてんとさまと、大坂さまのおてんとさまは違うのかのぉ?」
「おめえこそ、馬鹿こくでねぇ。おてんとさまみてぇなもの、日本に一つ・・・・アメリカに一つに決まっとるでねぇか」
「んだば、あそこの人に尋ねてみるべぇ。

 あの、もし。あのぉ・・・もし。もし!・・・・おい!らっきょのヘタ!マムシのけつ!」
「ええ?何や、わいに声かけてたんかいな。へい、何でっか?」
「ちょっくら、物をお尋ねしますが、あちらの道を進むと”ふがす”かの?”むなみ”かの?」
「ふがす?むなみ?それ、日本語でっか?ああ、東と南?はいはい、それやったら、東・・・・いや”ふがす”ですわ」
「”やくしや”はおるかの?」
「”やくしや”?」
「目ぇむく”やくしや”じゃ」
「ああ、役者か。へえ、芝居小屋も、よぉけおますさかい
(たくさんあるから)な」
「”だんとうろう”は、出とぉるかの?」
「”だんとうろう”?・・・・・はあ、団十郎でっかいな」
「”とう”も”じゅう”も字に書きゃあ一緒じゃあ」
「あら、江戸の役者やから出てるかどうか、わかりませんがな」
「”かたおかじんざえもん”は?」
「ん?・・・・・あら、仁左衛門
(にざえもん)でんがな」
「仁丹の”じん”じゃがな」
「えらい理屈ゆうてなはるな」

 その後、田舎の二人は、その男にいろいろな場所を尋ねる。男は、次々に答えてやる。

「いやあ、お前さまみたいに事の分かった人を村に連れて帰りたいねぇ」
「ほぉ?こら嬉しいことゆうてくれるなぁ。ほたら何か?田舎の金持の家にでも、養子の口、世話したろ、ゆうんか?」
「いやぁ。おらがの村に、”やちまたの辻”ちゅうて、道が七つも八つも分かれた辻があるだよ。そこじゃあ、村のもんでも時々道に迷うで、お前さまに道案内ばぁしてもらいたい」
「人のこと、立て石みたいにゆうてからに」

 
 二人は、乾物屋をのぞく。

 チリメンジャコを「虫か?」と言ったり「一匹いくらか?」、「頭落として、三枚におろしたら食べるところがない」とか言う。

 「風味(ふうみ)してみなはれ」と味見を勧められ、つまんでみるが美味い。主人の眼を盗んでバクバク食べ、お茶を出すよう頼んで、そのすきに弁当まで出して本格的にむさぼる。
 「風味で弁当までつかわれてたまるかいな」と主人に怒られ、笑いながら次の店へ。 

「こら、何かね?」
「あんころ餅でんがな」
「何で、あんころ餅てゆうのかねぇ?」
「何でて・・・・あんの上で餅をころころして餡をつけるから、あんころ餅でんがな」
「ええ?少しころころしたぐれぇでは、つかねぇんでねぇかね?んだば、あんころころころころころころ餅っちゅう方が・・・」
「しょうもないこと言いなはんな」
「風味はタダかね?」
「あんころ餅、風味されてたまるかいな。一個一銭じゃ」
「え?こげな小さな餅が一個一銭?おらがの村で一銭も出しゃあ、こんくらい大きな餅が・・・」
(と、一かかえもあるような餅のさまを手で表現する)
「そんな餅があるかいな。自慢の餡じゃ。悪いこたぁ言わん。買
(こ)うて食べてみなはれ」
「まあ、お前さまがそこまでゆうんなら、食べてみようかね。ほら、一銭じゃ。・・・・・どれにしようかな?」
「いやいや。どれも味は一緒じゃ。その端から」
「そうは行くかね。・・・・・・ほな、これを」
「あっ、あっ、ああぁ〜〜。あんた、三本指で両側の餡をこそげていったがな」
「ん、ん、こらぁ確かにうまい。どうじゃ、ひょこ作。おめえも一銭出して食ってみろ」
「ほぉ〜?そげなうめぇかね?んじゃ、おらも一銭。・・・・・・・どれにしようかな」
「あのねえ。最前もゆうたけど、どれも味は一緒やさかい、さっき取った奴の隣を・・・・・・・あっ!何で、一つ置いて隣を取るねんな。
 真ん中の餅、両側から餡取られて裸やがな。もう、帰って!」

 次に入ったのが鏡屋で、看板に、平仮名、しかも当時の風習でにごり(濁点)を打たないため「おんかかみところ」(御鏡処)と表記してある。
 「御嬶見処」と読み、大坂には自分の女房を見せる店があるのか、自分の女房に「御(おん)」を付けるのもおかしいが・・・といぶかりながらも、中をのぞくと、たまたま鏡屋の美人女房がおり、さすが日本一の女房を見せる店だと、すっかり魅了されてしまった二人。

 田舎に戻っていろいろ自慢話をしたものだから、「おんかかみところ」は、すっかり観光コースとなってしまった。
 1年後、村の人々が大挙して日本一の女房を見せる店に行こうと、大坂にやって来た。

  連中は、経験者のひょこ作の案内で、その「女房見せ場所」へ行ったのだが・・・・。

 商売の移り変わりで、鏡屋さんは店をたたみ、後には三味線屋が入っておりました。

「ひょこ作よぉ、ここが、おめえの自慢していた”おんかか みところ”かのぉ?

 そんなべっぴんの女房なんぞ、おらんぞぉ。中には汚いばばどんが一人おるだけじゃあ」
「ええ?そんなわけあらへんやろぉ。中には確かに日本一の・・・・・・・・・・・・・ばばどんやなぁ。
 いったい、どうしたんじゃろう?」

 すると、ふと上を見上げ、店の「琴・三味線」とゆう看板を見て、
「ああ、おらん筈や。看板見てみぃ。今年ぁ見せん
(ことしゃあ見せん=琴・三味線)
 

 小米は前に聴いた時も同じ「上方見物」であった。
 前に聴いた時ほどいやな印象は感じなかったが、やはりチリメンジャコの試食の時の表情など、あまり好ましい感じは受けなかった。

 


(4) 桂雀喜 「道具屋」

 わたくし、雀が喜ぶ・・・と書きまして「じゃっき」と読みます。本名は高倉健と申しまして。

 枝雀には8人の弟子がおったんですが、一番弟子が南光。以前はべかこと申しましたが。二番弟子が雀三郎で、わたくしはこの雀三郎の弟子でございます。雀三郎、ご存知ですか?頭の光った、その代わり、横の毛ぇは伸ばせるだけ伸ばして後ろでチョンマゲゆってる・・・・・・。(もう一つ、はかばかしい反応がない)
 だいぶ前ですが「ヨーデル食べ放題」とゆう焼肉の歌を出したんですが。(うなずく客、多し)ははぁ、歌で有名ですかぁ。

♪やぁ〜きにく カ〜ルビが たぁべほぅ〜だい〜♪
・・・・・・私は音痴ですが。

 この雀三郎が弟子です!いや、師匠です!
(どうやらマジで間違えたようだ)

 あの歌、東京のラジオで火ぃついたそうです。13万枚売れたらしい。演歌で10万枚売れたら大ヒットと言われるそうですから、かなり売れた。

 サンクスゆうコンビニあるでしょ?関東限定やったそうですが、当時「ヨーデル焼肉弁当」ゆうのが発売されたそうです。
 これが、またえらい「当たった」。食中毒でっけど。トイレで「よぉ出る」ゆうて。


 私も一応大学を出てるんですが、別に落研
(落語研究部)も入っておりませんでした。4年の春くらいから就職活動しますのでね。内定も一ついただきました。
 雀三郎への弟子入りが少し遅れましたもので、4月1日に入社もしてるんです。会社名は言えませんけどね。某エレベーター会社の富士テックゆうとこで。
 二ヶ月で退社いたしました。不思議なことに退職金はいただけなかったんですけど。

 米朝一門で京都の南座でひと月、芝居をやったことがあるんですが。「街道一の男たち 清水次郎長」ゆう芝居でした。幹部の皆さんは、ええ役されるんですけど、私ら、その当時ほんまのぺーぺーですからね。
 ヤクザの子分AからDで、子分のEてな役で。せりふもほとんどない。
「野郎ども!」「へい!」「やっちまえ!」「お〜!」・・・・・これだけです。
 1箇月、「へい!」「お〜!」「へい!」「お〜!」こればっかし。このまま駕篭かきになろか、思た。

 そこいくと今日なんかは、15分とか自分の時間をいただける。ありがたいことでございます。
 外国にも行かせていただきました。雀三郎について行きましてね。
 中国の青島
(チンタオ)ゆうとこです。あこは港町でしてね。大阪から真ぁ西にあたります。
 皆さん、青島とゆうと連想されるのは青島ビールやないかと思います。あっさりしてて、美味しいですね。わたくし、あまりお酒が飲めん方なんですが、中華料理に合う思います。

 向こうでも日本と同じく、瓶ビールとか缶ビールはあるんですが、向こうにあってこっちにないもんとゆうたら・・・・・袋ビール。いわゆるレジ袋に量り売りしてる。・・・嘘ちゃいまっせ。
 向こうの方は、気ぃが抜けるとか、ぬるなる
(温かくなる)とかゆうことは、あんまり気にせんのですな。
 しやけど、袋ビール買
(こ)うたら大変でっせぇ。どっこも寄り道できませんからなぁ。何せ、どっか置いたらジュワ〜ゆうてこぼれるさかい。
 で、帰ってきたら、その袋、どっかにぶら下げて、「おたま」で分け分けしまんねん。
 しやけど、袋が透明で、そん中に茶色い液体。上にはアワ。何や、どっかで見たような気が。お祖父ちゃんが入院した時のことを思い出す。

 ほんで、向こうはとにかく物価が安いんでんな。よぉご存知のとおり、「元」ゆう単位ですが、だいたい一元が15円。タクシーが7元でっから、だいたい100円。バスは1元。回数券やと、1元以下で乗れる。

 ジャスコとかの支店もあるんです。その店ん中入ると日本におるんと変わらん。CDとかDVDのコーナーがあったんで、あっ、こら子供にええ土産になる思て、ドラえもんのDVDを20元で買うたんです。
 日本帰って、DVDの機械にかけてみた。私も実をゆうとちょっと不安やったんです。何せ中国でっさかいな。ちゃんと鳴るんかしらん、思て。
 そしたら、ちゃんとDVDが機械ん中、吸い込まれて「♪あんなこと いいな できたら いいな♪」ゆうテーマソング。ああ、良かった思て、子供と観てたら話が始まって、ドラえもんが「ニーハオマ!×△○ ×△○・・・・」。
 子供が泣き出しましてな。「これ、ドラえもん違う」ゆうて。よぉ考えたら、こら向こうの子供向けのDVDやねんから、吹き替えしたったぁて当たり前やなて気ぃついたんですが。

 まあ、我々同様とゆう頼りない人間・・・・。わたくしどもの専門用語でゆうところの「アホ」が出てきますと、噺の始まり、とゆうことになるんですが。


「お前、今年でいくつになんねん。そんなこっちゃあ、いつまでたっても嫁の来手がないで」
「ああ、わてもそう思うさかい、うちの花子でも嫁にしよかいな思て」
「何アホなことゆうてんねん。お前と花子は兄妹
(きょうだい)やないか。兄妹で夫婦になったりできるかいな」
「そんなことおまへんで。うちのおとんとおかんなんか、親どうしで夫婦や

 ・・・・・・何や、ちょっと合
(お)うてるような気ぃもするんですが。こら、アホが一人でした。次はアホが二人出てくる噺ですが。

「お前、箒振り回して何してんねん?」
「ああ、ちょっと、お空のお星っさんがあんまりきれいやさかい、これで振り落としたろ思て」
「アホやなぁ。お星っさんてなもん、空高
(たこ)ぉにあるんやで。そんな箒なんかで追っつくかい。屋根ぇ上がれ、屋根へ」

 これがアホ二人でございます。続きまして、兄弟揃ぉてアホで、おまけにおとっつぁんもアホゆう話で。

「お前、何、難しい顔して悩んでんねん?」
「ああ、お兄ちゃん。いや、来年の盆とクリスマスは、どっちが早
(は)よ来るんやろか思て」
「アホか、そんなもん、来年になってみんと分かるかいな」

 この会話を聞いてたおやっさんが「う〜む。やっぱ、兄は兄だけあって、賢い」


 ここから「道具屋」の噺に入る。
 ちょっと変わってると思ったのは、掛軸に描かれた「鯉の滝登り」を通常は「ボラが立って、そうめん食てる」と解釈するのだが、今回は、
「魚が川で溺れかけてる。滝から落ちて死にかけてる」
「何でそないに暗いねん」
とゆう会話になっていた点。

 あとのギャグなどは大体いつも通り。

 「道具屋」のオチは何種類もある。(サイトNo72参照)

 雀喜の今回の演出は「15銭かぁ。安っすい笛やなぁ」と早々に元帳に書かれた元値をばらしてしまう。
 で、「豚カツで、ビールなんか飲みたいなぁ」とか「家の雨漏りも直さな、ならん」とニ、三皮算用し、「ほな、3円50銭でも、もろときまひょぅかな」と言い値も早々に公開してしまう。そして、客が「人の足元、見やがって」「いいえ、手元を見ております」というオチ。

 オチとしては、ちょっと力が弱いかな。

 雀喜は、全体として、まだ「これ!」といった特徴を打ち出せるとこまで至ってないように感じられた。



 


  どうも、お退屈さまでした。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。

  
 



 

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