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(No110) 毎日放送「特選!!落語全集」 ビデオ鑑賞記その1       

 いつの放送かわからない。ただ、同じビデオに96年のK−1福岡大会(決勝はマイク・ベルナルドvsミルコ・クロコップ)が収録されていたので、その辺か?




 

(1) 対談 月亭八方vs桂ざこば

 

八「前回と座る位置が違いまして、何でもこちら(自分が座ってる位置)が聞き役で、ざこばさんがゲストになるわけだそうです」
ざ「あ、そうやったんでっか。ほな、前回はゲスト扱いせんで、すんまへんでした」
「で、ゲストの言いたいことを聞き出すとゆうのが、大事や思うんですが、どうでしょう。ざこばさんは、どんなことをおっしゃりたいんですかねぇ」
「ええ。まあ、こうゆうことゆうと、ちょっとダレるんですけど。実はこないだCDを出しましてな」
(即座に)知ってます。他は?」
「・・・いや、CDを・・・」
「前も聞きました。もう、今年の初めか、去年の暮れの話でっしゃろ?何か、おっしゃりたいことは?」
「せやから、それが言いたい・・・」
「それは、よろしぃ」
「あんたが、言いたいことを聞きたいゆうてんがな。

 歌詞は、こさえて
(作って)、円広志さんにね、リズムゆうかメロディつけてもらお思たんえやけど、
『ざこばさん、どんなんがよろしぃねん』いわはるからね。
『♪ 女房
(にょうぼ)は亭主に尽くさんかい 尽くして尽くして尽くさんかい 死ぬまでずぅ〜っと尽くさんかい ♪』て、ゆうたら、
『おっ!それよろしぃやん。そのままで行きなはれ。そしたら、ざこばさん、
(作詞も作曲も)両方やから丸儲けでっせ』いいはるから。

 しやけど、CD出してもてから、あれ?盗作ちゃうやろかって気になってね。で、ないと何で、あの場ですっと出てきたんやろう思て」
「ああ、どっかで聞いたことがあるから出てきた、と。はあ。確かにねぇ。どっかであるんかも知れんけど、具体的に、この曲や!ゆうのはわかりまへんなぁ」
「そうでっか。私が思たんが、太鼓でんねん。♪テテツク テテツク スッテンテン♪って、出囃子
(でばやし)。あ、これやって」
「あ〜〜。なるほどね。でも、出囃子やったらええんちゃいますか。いつ、誰がつくったんかわからへんし。第一、誰も知りまへんわ。同業者の私もわからへんかってんから」

 しかし、ざこばさんの話聴いてると、家庭を見してもろてるようで、共感します。
 何で、こいつのためにがんばらなあかんねん、思うことありますもんなぁ。

 それと賞味期限の話。何で、あない
(あんなに)切れさすんでしょうな?
 もったいないやないか!ゆうたら、『こっちが作ってんのに、あんたが食べへんからやないか!食べんねやったら、何で連絡してくれへんの!』って。
 帰るか、帰らへんか、なんでいちいち言わなあかんねん。

 こないだもね、まんじゅうの賞味期限が切れてましてんけど、まんじゅうて15個で売ってまんねんな。
 まんじゅうみたいなもん、1個でええねん。いくら私が甘いもん好きでも15個も食べられへん。それをあんたが食べへんからや、ゆうて」
 
 よく内容がわからないが、多分、以前にざこばが「うちの嫁さんは、すぐに食べもんの賞味期限を切れさせよる」とか何とか言ったのであろう。

「しかし、あんた(八方)とこの嫁さんは、顔広いな。うちの嫁さん、連れ回されてるゆうてたで。ありがたいゆうか・・・・えらい迷惑や。

 北新地
(大阪における「銀座」のようなとこ)ですごい顔らしい。『ママ、入って!入って!』ってゆわれてるらしいな。うちの嫁はん、(腕を万歳するような格好で伸ばしながら)『世の中、変わったぁ!見つけたぁ!』ゆうて。・・・・殺生やで」
「こないだもね、藤山直美さんから電話があって。『お兄さん、殺生やで。あんたとこの子ぉ、おかんから預かってんねん。
 何や知らんけど、ニューカレドニアかどっか行ってるらしいなぁ。
 どないしたらええのん!曽根崎署にでも預けに行ったらええんか!』て。

・・・・・・気楽なもんや。天国に一番近い島でっか?一番近のぉても、
(天国)そのもんでもええで。6泊8日とかゆわんと、10年泊11年とかで行ったらええねん」
「そんなん、よぉゆうの?」
「軽く腰引きながらね。それでは、今日はよろしくお願いします」
      




 

(2) 桂喜丸 「二人癖」

 

 桂喜丸は、桂ざこば(朝丸)の弟子。したがって、本日は、この後にざこばが出るので「親子会」ということになる。

 なお、喜丸は将来を嘱望されながら2004年4月14日に享年47歳で急逝した。

 代わりまして、落語でございます。どうぞお力落しのないように。

 猛暑が続いております。私なぞも、げっそりやせまして。

 なくて七癖とか申しまして、わいは癖なんかないで!とゆう方もはた
(傍)からみてるとけっこう、何かしら癖のあるもんでして。

「じんべ
(甚兵衛)はん、こんにちは!」
「おお、誰かと思たらおまはんかい。久しぶりやな」
「へえ。実は今日は相談があって、寄せてもらいましてん。
 わい、”たつ”ゆう友達がいてまして」
「ああ、たっちゃんな」
「え?知ってなはんの?」
「いいや」

「何でんねん、それ。
 いや、そのたつも、わいもけったいな
(おかしな)口癖がおましてな。

 たつは、何やちゅうと『つまらん、つまらん』ゆうのが癖でんねん。
 で、わいは、すぐに『呑める!一杯呑めるなぁ』ゆうのが癖でして。

 ひとつお互いの癖の直し合いをしよやないか、ゆうことで、たつが『つまらん』ゆうたらわいに1000円払いまんねん。その代わり、わいが『呑める』ゆうたら、たつに1000円、ゆうことでね。

 せやけど、わいから言い出したことで、わいが先に1000円払
(はろ)てたら、こんなあほらしいことあらへんさかい、何ぞたつに『つまらん』と言わす工夫はないか、思いましてな。
 どうですやろ、ええ知恵おまへんやろか?」

「ほぉ〜。そら、おもろいこと始めたんやな。

 ほな、こないなことはどうや。いっぺん家に帰ってな、汚れてもええ身なりに着替えるんや。
 ほんでな、この辺にヌカをふりまいてやな
(袖や襟元に粉をかけるような身振り)、トントントン〜と行かな、あかんで。

 田舎のおばはんでも、親戚でも何でもええさかいに、大根100本もろたってゆうんや。こんなん、いっぺんに食べられへんさかい、ぬかみそに漬けよう思うんやが、家中探しても大きな樽がない。よぉよぉ醤油の五升樽を見つけたんやが、どうやろう、五升樽ひとつに、大根100本詰まろかな?て訊いてみぃ。
 そら、詰まらん、と」

「はぁ〜〜〜。こら、なるほど!そらぁ言いますわ。
 ほな、わい、さっそく行って来ます」
「何ゆうてんねん。せっかく、久しぶりに来たんやないかい。今、お茶いれるよって、ゆっくりしていきぃな」
「いえ、早
(はよ)行かな、忘れてしまいますよって。
 その代わり、1000円取ったら、角の和菓子屋で羊羹買
(こ)うてきますよって、おいしいお茶いれて、待っとってください」

 男は表に出て家に帰り、言われたとおり身支度を整え、ぬかの付いた手を差し上げるようにして、たつの家へ。

「いてるか!エヘエヘエヘ」
「何、笑
(わろ)てんねん」
「トントントン〜と行くぞ」
「せやから、何やねん」
「田舎のおばはんに・・・」
「お前、おばはんなんか、おらんやないか」
「・・・・田舎の親戚に」
「どこの田舎や」
「うるさいなぁ。田舎の親戚に大根100本もろたんや」
「ええなぁ。なんぼか、くれ」
「トントントン〜といくゆうてるやろ。
 とにかく大根100本もろたけど、うちには醤油の五升樽しかないねん。
 でやろ、五升樽に大根100本、詰まろかなぁ?」
「けったいな格好で飛び込んできたか思たら、何、しょうもないこと訊いてんねん。
 そんなもん、訊かんかて、自分で考えてもわかるやないか。五升樽ゆうたら、ええとこ
(手で小さな円をつくり)こんなもんや。

 ほんで、大根100本ゆうたら、
(両手を広げてみせて)えらい嵩(かさ。体積)やで。細い大根にしたかて、相当のもんや。
それが、五升樽に詰まるか?なんて、そんなもん、詰ま・・・・・・・ええぇ〜!
(目を丸くして驚く)

 怖ぁ〜。こいつ1000円で、こんだけ企んできよった。そんなもんなぁ・・・・入りきらんわ」
「そこ、無理から
(無理やりに)押し込んだら?」
「底が抜けるわ」

(悔しさのあまり泣き声で)「田舎のおばはんが・・・・」
「もうええ。もぉ知れたぁる
(ばれている)
 だいたい、今日はお前らの相手してる間ぁは、ないねん。
(奥のおかみさんに)おい!嬶(かか)!ちょっと紋付出してくれ!」
「え?紋付て、今日何ぞあるんか?」
「おお。実は今日、兄貴の婚礼でな」
「え?ほんまかいな。そら、一杯呑めるな」

 たつは、ややニヤッとして黙って右手を突き出す。
 男は、最初自分が何を言ったかわからなかったが、ハタ!と気づき、これまた目を丸くして驚き、思わず左右を何度か見回す。
 仕方なく1000円支払い・・・・


「・・・・・そんなん。・・・・・・わい、ここに何しに来たんやろぉ?」
(奥のおかみさんに)嬶!もう紋付いらんで」
「ええ?紋付いらんて、婚礼は?」
「ああ、あらウソや」
「ええ〜!・・・・い、田舎のおばはんが・・・」
「もぉええ、帰れ!」

 男は甚兵衛さんの家に戻る。
 「今、おいしいお茶をいれてたとこや」とゆう甚兵衛さんに「あいつ、わいのことよぉ知ってるさかい、お前、おばはんなんかおらんやないかとかゆうて、トントントン〜といかしよりませんねん」と敗戦報告。

「ようやく、ええとこまでいったんやけど、『つ〜!』、『つ〜!』て。
 敵は卑怯にも『入りきらん』と、こないなこと言いよりまんねん」
「何じゃ、ほな、おまはんが1000円払
(はろ)てきたんかいな。
・・・・・・向こうに羊羹、よばれに
(ご馳走になりに)行てこうかな?」
「そんなこと言いなはんな。もう、わい、じんべはんだけが頼りだんねん。

 何とか、ほかにええ工夫は?」
「ええ?ほかにええ工夫?

 う〜ん。せや。どないや?そのたつゆう人は、将棋は好きか?」
「将棋?へえ、好きやし、強いですわ。わいら、飛車角抜いて、おまけに片馬落としてもうても
(桂馬を1枚落すということか?) なかなか勝たれへん」
「そら好都合やが。

 でやろ。この工夫は、おまはんが向こに押しかけていくより、向こうが来てくれた方がええんやがな。

 その、たつゆう人が、おまはんの家に来るような用事はないかぇ?」
「へえ。たつは、居職
(いしょく)、家で仕事してまんねん。
 ほんで、夕方になったら、必ずわいの家に風呂、誘いに来よります」
「ほう。ほな、その時、その時。
(と、横を向いて、将棋盤を運ぶ格好)

 ちょっと珍しい詰め将棋があってな。
 王さんが、真ん中に1枚だけ。周りになんもないねん。
 ほんで持ち駒が角に金。歩ぅが3枚。
 これな、角と金があるよって、詰むように思えるんやが、こら何ぼやっても詰まらんようになったぁんねん。

 ほんで、たっつぁんが風呂誘いに来た時も、最初は聞こえんふりして、途中で、考え事に夢中で気付かなんだてな顔するんや。将棋の好きなもんやったら、珍しい詰め将棋やさかい、わいにやらしてみぃてなことになる。
 しかし、心配せんかて、こら詰みそうで詰まらんねん。
 おかしいな、思いよった頃に『詰まろかな?』て訊いてみぃ?『ふ〜ん。こら、詰まらん』て、こない言いよる。

 まあ、将棋はほんまは詰む、詰まんゆうて、あまり『詰まらん』とはゆわんもんやけど、トントントン〜と行ったら、ゆうんちゃうか?」

(男は礼を言って、自分の家に帰る)
「嬶!うち、将棋盤、あったな?なに?鍋敷きにしてる?ええ〜?何をすんねんな。
(将棋盤を持ってきて、盤面を眺め)あ〜あ。真ん中にまぁるい輪ぁがでけたるやないか。まあ、しゃあない。無いよりマシや。

 おい、嬶!たっちゃん、もう風呂、誘いに来たか?」
「何ゆうてなはんねん。たっつぁんは、”日が暮れ”
(夕暮れ時)にならな、来ぃひんやないか」
「今、何時や?何?2時5分?・・・・・そら来んわな。

・・・・・・・・・・・・まだ、来んのかいな。何、してんねんな。う〜〜ん。おい!嬶!今、何時や?え?2時7分?
 なんで、時間ゆうのは、待ってたらこない長いのんかいな」

 そうこうしてますうちに日が暮れになりまして・・・・
「おい!風呂行こか!」
(小声で)初めは聞こえんふり・・・・・」
「ええ?何してんねんな。返事もせんと。風呂、行かへんかっちゅうてんねん」
(再び小声で)もういっぺん、聞こえんふり。・・・・・・・・と、ここで初めて気がついて・・・

おっ!すまん。ちょっと考え事しててん」
「え?あ、そうか。そら、すまなんだ
(すまなかった)。ほな、先、行くわ」
「えっ!?い、いや、ちゃうねん。かまへんねん」
「いや、考え事してんねやったら邪魔したらあかん思て。
 で、何、考えてんねん?え?詰め将棋?あははは。それやったら、お前がなんぼ考えたって、あけへん。わいが考えたるわ。

 何やねん、これ?王さんが真ん中に1枚?周り、何もないの?」
(半身で、ニヤッとしながら)「詰まろかな?」
「何、ゆうてんねん。第一、持ち駒は何やねん?
(と、男の手から駒を受け取り)何!?この駒?汗でベトベトやがな。湯気が立ったぁる。
 何?2時からやってる?時間かけても、お前らにはでけへんねんて。

 まあ、まずは、ケツから角を・・・・こう打とかな?
 う〜ん。一人でやってると何や頼んないな。
(男に対して)お前、ちょっと逃げてくれや」
「ええ?わいが逃げんのん?何も悪いことしてへんけど。ほな、ここに逃げよかな?

 え?そこに歩ぅ打つの?ほな、その歩、食ぉかな?腹、大きい
(満腹。空腹でない)けど
「さっきから何ゆうてんねん。
 ほな、ここにこぉ打ったら・・・・・・せやろ?そこに逃げるやろ。そしたら・・・・・・・・?あ、こら、あかんのか。

 ほたら、こうして・・・・・・・う〜ん」
「詰まろかな?詰まろかな?詰まろかな?」
「やかましいなぁ。
・・・・・・・・・・・・ふ〜ん。こら、間違えたかな・・・・」
「でや?詰まろかな?」
「う〜ん。こら・・・・・・・・・・・・詰まらん」
ゆうたぁ〜!!とうとうゆうたぁ〜!
(嬉しそうに右手を突き出し)1000円!
(驚いた表情で)おおお〜?!ええ?ほたら何かぁ?お前、こんなこと昼間の2時からやってたん?」
「1000円!1000円!1000円!」
「払う、払う。いやぁ、それにしても、えらいこと考えたなぁ。こら、どないしてもゆうてまうがな。

 こら、お前の知恵やないなぁ?誰に教
(おせ)てもろたんや?いや、かめへん、かめへん。わいは、もう感心も得心もしたがな。
 こら1000円どこやない。倍の2000円払うわ」
「えっ!ほんま?ほな、一杯呑めるわ」
「よっしゃ!それと差し引き
(相殺)や」

 生前の喜丸については何も知らないのだが、笑福亭松喬にも似た雰囲気をもつ、なかなかいい噺家だったのだな、と思った。
 ざこば師匠が、葬儀の席で愛弟子の若すぎる死に号泣したとゆうのも肯ける。

 



  どうも、お退屈さまでした。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。

  
 



 

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