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(No100) 平成紅梅亭 リクエスト落語会 鑑賞記   その1    

 平成20年3月27日放映の「平成紅梅亭」。リクエスト落語会とかで、視聴者の要望が多かった演目を選んでいるそうだ。
 


(1) 桂紅雀 「いらち俥」

 
眉毛が濃くて、全体としては上がっているんだが、眉尻は下がっている。
 誰かに似ているなぁと感じたが、若くて髪の毛の多い高橋克実というイメージ。

 「リクエスト落語と申しましても、演目がリクエストでして、演者までがリクエストではございません」と笑いをとる。

 
「いらち俥」というと人力車がテーマなので、交通機関が便利になったというマクラが多い。

 落語ブームとか申しまして、他局ですので申し上げにくいのですが「ひりほへひん」ちゅいますか「ふひほへへん」てな番組が人気でしてね。(注 本番組は読売テレビ。言いにくそうにしているのはNHKの朝ドラ「ちりとてちん」)

 おかげで、いろんな所へ仕事で呼んでいただくようになりました。北は北海道から、南は読売テレビまで。・・・・・へへへ、南は、あんまり攻めてまへんねん。

 えらいもんで、関西新空港から新千歳空港まで1時間50分。わずか2時間足らずで北海道の人になりますねん。
 まあ、私、吹田に住んでますねんけど、関西新空港まで2時間半かかります。便利や何やわからんみたいやけど。
(注 「吹田」というのは、大阪の地名で、「吹く」と書くが、なぜか「すいた」と読む。吸うのか?で、関西新空港は大阪の南の方にある)

 新幹線も、何でも私が生まれた時分にでけたそうですが、当時は東京まで4時間近くかかったそうです。
 ですから、新大阪を出て、おしゃべりをして駅弁食べてしばらくすると、
「おお、見てみい。富士山やで」
「あっ、ほんまや。やっぱ、富士山はにっぽん一の山やなぁ」なんて話ができたんですが、最近ののぞみやと、2時間半ほどで着きます。
 ですから、
「おお、見てみい。富士山やで」
「え?どこ?」
(車内放送で)東京〜 東京〜」。

 ところが、もうしばらくするとリニアモーターカーてなもんがでけるそうです。時速500km。せやから、新大阪出て、
「おい、弁当食おかな」
「東京〜 東京〜」。



 
よく聴く噺なので、内容は省略する。
 元気な若手なので、前半の病人の俥屋の描写が少し苦しいか。
 よく言えば「表情が豊か」。悪くゆうと、何かとゆうと目を剥きすぎて、落ち着かない。

 ちょっと変わってるな、と感じたのは、路面電車と衝突しかけて文句をいう客に、俥屋が「よろしいがな。危ないぃ〜っ思て、助かって・・・・緊張と緩和でんがな」というとこは、いかにも枝雀一門らしいくすぐり。

 あと、「キタへ(梅田へ)」と言った客に対し、北へ北へ走り続けた俥屋が「もう行けまへん」「どこや、ここ?」「さあ」「そこの看板、見てみいや」「・・・・・天橋立。どうです?股の間からちょっとのぞいていきましょか?」ってとこ。

 就職したての頃だが、大阪市内の京橋というところで飲んでいて電車がなくなり、タクシーに乗った。家は枚方(ひらかた)なんで、「とりあえず国道1号線をまっすぐ行ってくれ」と言ったことを思い出した。

 で、私はそのまま車内で寝てしまったようなのだ。

 ふと目を覚ました私は、朝ぼらけの中で浮かび上がる琵琶湖の姿を眼下に見て愕然としたのであった。
・・・・・・・・・・・・いくら何でも大津(滋賀県)までに起こせや、と。





(2) 桂吉弥 「天災」

 
続いて吉弥。ご存知だろうが、「ちりとてちん」に出演していた。
 他局なんで言いにくいんですが、ドラマに出さしていただいてまして。
 徒然亭草原という名前でして、もう、その名前に変えよかな、て。

 草原兄さんと呼ばれることも多いんです。番組の中でね、一番の兄弟子なもんで。

 先日も90歳くらいのおじいさんに「あっ、草原兄さん」・・・・・・・・。

 90のおじいに「兄さん」て呼ばれる筋合いはない。

 まあ、天狗になったらあかんなぁて思てるんですが。
 こないだ、「あっ」ゆうて私のこと指さす人がいてたんで、「ああ、
(ドラマ)観てもろてるんですか?」ゆうたら「チャック開いてるで」って・・・・・・。慌てて上げたんです。

 自分で「天狗になったらあかん」と言ってるが、どうなんだろうか。
 ドラマの中の名前に変えたいという台詞には、吉朝ファンの私としては、師匠につけてもらった名前で冗談でもそんなことは言ってほしくない。変えたけりゃ、ほんまに変えろ!と毒づきたい気分。

 また、「90のおじいに『兄さん』て呼ばれる筋合いはない」という言い草は言葉が過ぎると思う。

 あの「ちり・・・とて・・・ちん」ですけど、覚えにくいんですかな?前、タクシーに乗ったら、運転手さん、乗ってる間中、ずっと「とてちりとん」、「とてちりとん」ってゆうてはりました。その方が覚えにくい思うんですが。

 で、エヌエッチ・・・・・・・おほん、おほん。某公共放送・・・・あの、ここカットしてくださいね。
(両手でハサミをちょきちょきする手まね)行った帰り、大阪駅のシースルーエレベーター乗ってたら、下でご夫婦連れの奥さんが、ご主人の肩叩きながら、私を見上げて、「ほら、お父さん、あそこ、ほら、テレビの」てゆうたはる。
 上がりながら、私、皇室の一人にでもなった気分で、こう
(と、鷹揚に、下に向かって微笑みながらゆっくり手を振る)

 そしたら、その奥さん、大きな声で「ほら、ほら、あの『ちちんぷいぷい』出てはる人やん!」って・・・・・・・・・。

 すいません。また、他局の番組名を言ってしまいました。・・・・・・・・・・『ミヤネ屋』もよろしく」

 「ちちんぷいぷい」は、毎日放送のニュースワイドショー番組。「ミヤネ屋」とは、読売テレビのニュースワイドショー。

 どうも最近の吉弥の芸風に批判的でいかんと思うのだが、「去り状、離縁状、三下り半。二本。早幕で。トゥルルルルっと書いてもらいたい」って冒頭から、何か全体に顔が薄笑い浮かべてる感じがする。

 決定的なのは、心学の先生が紹介状を読みながら主人公の顔をちらちらと眺めやり「それはひどい」と顔をしかめたり、笑ったりするのを怒る場面で、主人公が笑いながら文句を言うところ。
 単に激怒するのではなく「お前なぁ・・・」と半ば呆れ苦笑しながら文句をつけるという感じの演出は理解できなくもないんだが、それまでの流れで、何か緊張感を欠いたようにしか映らなかった。

 この噺のやまは、主人公が聞きかじりの「心学」のせりふを近所の人に言うところ。
「柳の・・・・下に、猫がいる。だから、猫柳。・・・・・・・・これでいいのだ。・・・・・おわかりかな?」ってのは、師匠の吉朝も言っていた。

 「堪忍」を「にんにん」と間違えて「にんにん・・・・・をご存知かな? ニンニン・・・・・・・・・ハットリ君が・・・・やって来た。僕らの町に・・・やって来た。・・・・・・・・・・・・おわかりかな?」てとこには笑ったが「忍者ハットリ君」のTV主題歌を知ってる人も少なくなってるかな?という気もした。

 



(3) 桂春團治 「代書屋」

 
これは演目も演者もリクエスト通り・・・・・かもしれない。
 枝雀系とは別系統の・・・・というか、枝雀師匠が別方向で完成させてしまった「代書屋」とは別の、源流の「代書屋」というか。

「あんさん、お名前は?」
「かわいあさじろう、ゆいまんねん。へへ、ちょっとええ名前」
「ふっ。ええ名前ちゅうことあるかいな。ああ、その『あさじろう』の『じ』ぃゆう字は、次ぐゆう字ぃでっか、それとも治めるゆう字ぃでっか?」
「そら、あんたにお任せします」

・・・・・・というところで、「あんたの名前やがな」と呆れ顔をしながら、結局、そのまま淡々と書き続けるんで「適当に書くんかい!」とツッコミたくなった。
 まあ「河合」か「川井」か「川合」か、「浅次郎」か「朝治朗」か、いくらでも字はあるから、どうだっていいか。

「生年月日は?」
「たしか・・・・おまへんねん」
「生年月日のない人がおますかいな。生まれた年月を」
「そんなんゆうたら、年が知れる」
「わかるように書きまんねん」
「かなんなぁ。実はわい、嫁はんにも年、二つごまかしてまんねん。
 ほんまは、わい、一つ下でんねんで。しやけど、それでは押さえがききまへんやろ。せやさかい、わい、一つ上やゆうてまんねん。
 どっちの年にしまひょ?」

・・・・・・てとこもそこそこおもしろかったが、一番受けてたのは、女郎買いに行ったことを書かされ、ほとほと呆れたように筆先にペタペタと墨を塗り、何か文句を言おうとして、しかし、言葉を失い、目をシバシバして、仕方なく書類に目を落とし、集中しようとするが、だが、やはり、こらえかねて「・・・・・・・・・あ、あんた、ちょっとアホちゃうか?」と言ったところだろうか。

 
にこにこと「判(訂正印)なら、ここに」と差し出され、ぎゃっ!と奪い取るとこまでセットもんでおもしろい。 



  どうも、お退屈さまでした。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。

  
 



 

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