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北京旅遊記(3)御苑茶芸編


 万春亭から降りて、少し歩くと由緒ありげな門がある。
 そこをくぐると、またまた歴史ありげな(←こればっか)、「御苑茶藝」という額のかかった建物があった。

 茶道具の並んだテーブルにつくよう勧められる。
 四角い顔の、角刈りの中国人男性が、日本語で説明をしながら、お茶を入れてくれる。

 茶芸とか、功夫茶(工夫茶。くふうちゃ)といわれる中国式茶道では、だばだば下にお湯がこぼれる。
御苑茶芸に至る道

 それで、お湯を受けることのできるものの上に茶碗や急須を置く。
 ちなみに、私は、紫砂陶の茶盤(陶製の大ぶりの椀で、穴のあいた蓋がついている)を使っている。(この辺のことは、できれば「なん中華」の「中国茶入門Part2」などをご参照いただきたい)
 ほんとは、長方形で上部は竹製のすだれ状になっている、脚付きの茶池というのを使いたかったのだが、そいつは小さなものでもウン万円するので手が届かなかったのである。

 ここでは、さすがに、立派な茶池を使っていた。
 宜興茶壷という茶器(急須)では、養壷(ヤンフウ)といって、使い込んでいくうちに艶が出てくるのを楽しんだりするが、この茶池の竹もいい色艶だ。

 飲み方の実演や指導もしてくれる。
 聞香杯(もんこうはい。背が高い杯)に茶を注ぎ、普通の茶杯をさかさまにして、ふたをする。かぶせた杯の糸底を右手の薬指で押さえ、両方の杯を右手で同時に持つ。そして、くるっと裏返して、聞香杯は元のように立てる。
 茶は聞香杯から茶杯に注がれ、空になった聞香杯には、お茶の香りだけが残る。その細長い聞香杯を両手の平ではさみ、鼻のところでコロコロまわして、香りを「聞く」。思わず、頭にながれる井上陽水のメロディ、キリン「聞茶」のCM。

 ゲタのような顔をしたおじさん、「誰もこぼしませんでしたね」と、ちょっとくやしそうな顔。
 「茶は、新しくないとだめです。うちは国立だから、みんな新茶。見てください。新茶でないと、こんなに緑色になりません」
 味は烏龍茶と思うのだが、茶葉は堅く丸まっていた。鳳凰単欉(ほうおうたんそう)や大紅袍(だいこうほう)などでなく、高山烏龍茶とか凍頂烏龍茶のタイプだ。(台湾のお茶は使わないかな)
 緑色を強調するが、半発酵の青茶であるから、以前買った「明前西湖龍井」の緑茶ほど緑色は感じられないのだが・・・。

 「明前ですか」と、一応話を合わせるつもりで聞いたが、聞こえなかったのか、理解できなかったか返事がない。
 これは、ガイドの李さんにもある程度共通することだが、定型句、セールストークは何度も練習してやたら流暢なので、つい、どんな日本語でもわかるだろうと誤解してしまう。
 しかし、こちらの言うことを聞いたり、話し言葉もちょっと守備範囲が異なるとわからなくなることが多い。(←まあ、これは私たちが外国語をしゃべる時と同じだが)

 次に、ジャスミン茶を出してくる。
 「これがうちのジャスミン茶。品質は最高です。これは、他で売ってるお茶。香りが全然違います」
 缶を二つ並べられ、香りをかぎ比べる。長男(小五)くらいまでは、神妙な顔して、「違うね」と感心してみせるが、止めたのに末っ子も缶に手を伸ばす。
 案の定、鼻をつまんで「くしゃ〜い」と言う。実に失礼なことで、赤面しつつ、たけしを叱る。まあ、小一にはそう感じられたのだろうが。

 普通の茶はあかん、と思ったか、薬用茶を出してくる。血糖を下げる糖尿病のお茶、心臓にいいお茶、血圧を下げるお茶・・・よし、切り札!って感じで
 「いま、ブームなのがやせるお茶、減肥茶。でも、調べたら全部に下剤の成分が入ってました。入ってないのは、これだけ。体に悪くなくて、やせるのはこれだけだから、今、中国では、すごい評判になっている」
 耳寄りな話ではあるが、1箱くらいでは効かないだろう。といって、何箱も買うとかさばるしなあ。結局、値段も聞かなかった。

茶道具の数々  どうも、はかばかしいリアクションがないので、子どもにターゲットを変えたようだ。
 黒っぽい、地味な湯呑み。筆文字で大熊猫と書いてある。そこへ、湯を注ぐ。
 すると、全体が白くなって、パンダの絵が表れた。長女(中二)の眼がきらきらっと輝く。

 「脈あり!」と見たか、このシリーズで攻めてくる。

 湯を注ぐと、万里の長城の絵が表れるもの。お経の文字が現れるもの(←これは、ちょっと盛り「下がって」しまった)。黒い龍の絵が、赤に変わるものなどなど。

 そのたびに、長女、そして姉につられて長男も、「おお〜っ」と歓声をあげる。その間にも、おじさんは各自の杯にお茶を注ぎまくる。だんだん、おなかもタポタポになってきたので、「ちょっと道具とかを見せてもらいます」と言って、席を立つ。

 娘がすり寄ってきて、「お父さん、さっきのパンダのやつ、欲しいワン!」と犬になる。すると、ゲタおじさんもすり寄ってきて、「これ、何回でも変わる。とてもいい記念になりますよ」
 娘が寄るのは嬉しいが、おじさんは嬉しくない(自分もおじさんだけど)。
 さっきからずいぶんお茶もいただいたし、このまま帰っちゃ案内してきた李さんの顔がつぶれるかもしれんなあ。子どもも欲しがっていることだし、まあ、いいか。  そんな気持ちになってパンダを三つ、そして、私は蓋椀を持っていなかったので、さっきの龍のやつを買うことにする。
 パンダが一つ150元、龍が180元。あわせて630元。20元のおつりをもらった辺でようやく気がついた。ほとんど1万円飛んじゃったじゃないか。

 ゲタおじさんはにこにこ顔で、「あと一つ買ってくれたら、一つおまけします。5個買うと1個おまけ。あと1個です。どうですか。5個買うと1個おまけ」と繰り返す。こんな高いの、もういらねえや。
 断っているのに、おじさんは「5個買うと1個おまけ」を繰り返す。思えば、後々「○個で×個おまけ」という言葉を何度聞いたことだろう。1個の原価をふっかけているなら、値引きして1個売るより、おまけをつけてもたくさん売る方が儲かるのは理の当然である。

 買ってもらって嬉しげな長女と長男、そして、ようやく解放されて(じっと座っているのが苦手なのだ。しかも、出されるものは、冷たくも甘くもなかったし)嬉しげな末っ子を連れて、御苑茶藝を後にした。

 嫁さんが「お父さん、今のとこ、ちょっと高くなかった?」と聞く。
 「うん、かなり高かったな」
 「せやろ、さっきの店の人な。こっそり李さんを呼んで、お金渡してたんよ。そんな分も値段に含まれてるんやろ」

 積極的に肯定する訳ではないが、ガイドが、案内した客の売上に応じ、店からリベートをもらうのは、どこにでもある話だ。それに、李さん自身は、一言もセールスしてなかったし。
 旅行の最初で、まだ換算レートが頭に入ってなくて、考えずに買ったのは私自身なのだから、今後は気をつけよう。李さんもあれでボーナスが入ったならよかったじゃんと思った。

注1:なお、滞在中のレートは、およそ1元=15円くらいだった。
 『歩き方』には、空港で両替しとかないと、バスやタクシーに乗る時困るよ、と書いてあった。
 市内に向かう車内で李さんに両替について聞くと、「銀行で両替すると今日のレートで1万円が660元ですが、うちの旅行社だと663元で、3元おとくです。
 それと、銀行で両替した元は、もし残った場合、円に再両替することになりますが、半分しか再両替できません。でも、うちの旅行社でしたら全額両替できます」とのことだった。そこで、とりあえず3万円分両替してもらっていた。

注2:あまりショッピングには時間をかけなかったので、「色の変わる湯呑み」が、よそでも売ってるのか、いくらくらいが相場なのかはわからない。
 日本に帰ってから気付いたのだが、この湯呑みの模様は、絵付けじゃなくて、シール形式のもので、白い湯飲みに貼ってあった。
 うちの嫁さんは、陶器はとりあえず、沸騰する湯の中につけて、ぐらぐら煮てから、使用する。(←そうすると長持ちすると教わったらしい)
 すると、このシール、端っこの方がしわよってしまった。

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