移動メニューにジャンプ

(No11) さらば!憂鬱 〜認知療法入門〜(11) 第二部 応用 第五章 虚無主義:いかにして克服するか その3  

 『いやな気分よ さようなら』(著:デビッド・D・バーンズ。星和書店)の紹介。

 第二部の第五章から。なお、小見出しは、本書にはなく理解を助けるため石野がつけたもの。



10 強制を伴わない動機づけ

P115 「ぐずぐず主義の元は、不適切な自己動機づけにあります。
 やる気をすっかり奪ってしまうような『〜ねばならない』、『〜すべきだ』という言葉で自分を追い詰め、本当にすべきことを知らず知らずのうちに蝕んでいるのです」。

P116 「『〜すべきだ』を『〜したい』に置き換えれば、自尊心を持って自分を治療してゆくことができるでしょう。
〜 褒美は叱咤よりも有効で、長続きすることに気づくでしょう。
 自問してごらんなさい。『私は、何がしたいのか?どんな活動が、自分にとって一番の利益になるのだろうか?』と」。

 「まだベッドにもぐりこんでぼんやりしていたい。でも本当にしたいのは起き上がることだと感じているなら、ベッドにいることの利益と不利益を表にしてごらんなさい」。

※ 利益−不利益の表の一例

寝ていることの利点 寝ていることのマイナス点
楽である。 ひどく退屈だし、そのあと精神的に自分を責めてしまい、辛い。
何もしなくていい。 ベッドから出たからといって、何かをせよと強要されるわけではない。気分が良ければ気の向いたことをすればいいのだ。
自分の問題から逃げていられる。 問題を避けていても、それらが消えるわけではない。問題解決のための一時的な不快感の方が、ゴロゴロ寝ていていつまでも悩んでいるより楽かもしれない。

 

 


11 武装解除法

P118 「あなたの利益になることを、誰かが〜強要したときは、事態は複雑になります。

〜 もしその言い付けを拒否すればその人を裏切ったことになると思い込んで、最後は自分を責めてしまう
〜 反対に〜こういった押し付けがましい要求を呑むと、他人が自分を支配しているように感じて、自尊心をなくしてしまう」。

P119 「母親が『いいかげんに、ゴロゴロするのはやめなさい!〜』と叫んだとします。
 その瞬間、すでにやろうと決心していたにもかかわらず、そうすることに途方もない反感を覚えてしまうのです。

〜 彼女に言うなりになるのではなく、あくまであなたの決心に基づいて彼女に同意するのだということを母親に認めさせるのです。

〜『お母さん、
ちょうど私もそうしようと考えていたの。〜自分の決心で動こうと思います』」 

 


12 成功をありありと思い浮かべる

P119 「やると良いことがわかっているのに〜先延ばしにしていたようなことがありますよね。そういう場合には、その行動のメリットを表にしてにてはどうでしょうか?」

P120 「タバコをやめたいと思ったとしましょう。がんやそのほかの喫煙の害を思い出すことによりやめようとします。
 つまり恐怖戦略です。しかしこの方法はイライラさせるだけで、すぐ次のタバコが欲しくなります」。

 「
第一のステップは、タバコをやめたときのポジティブな結果を表とすることです」。

P121 「
第二ステップです。寝る前に毎晩、一番お気に入りの状況を想像なさい」。

第三ステップ〜その光景にあなたがまだいて、ノン・スモーカーになっていると想像してください。
 表を調べて、一つ一つを次のように繰り返してみてください。
 『今、私は健康を取り戻してそれが嬉しい。望んでいたように、海辺を走ることもできる・・・・』」

 


13 やったことを数える

P123 「彼の心の中には、いまだに、『自分は、一人では何もできない』というあの強烈な刻印が刻みこまれているのです。

〜 問題の鍵となる二つの誤りに気づかねばなりません。心のフィルターとレッテル貼りです。

 私は彼に腕につけるカウンターを手に入れるよう指示しました。それで彼は毎日、他から促されたり強要されずに彼自身でやった事柄を、カウントすることができるのです。一日の終わりに数字の合計を出して、記録するようにしました。

 数週間たつと、彼は数字がだんだん増えていくことに気づきました」。

P124 「あなたにも効果があるでしょうか?たぶん、そうは思えないかもしれませんね。〜カウンターなど、自分には役に立たないと思い込むなら、なぜ〜実際の体験で評価しないのです?」
 

 


14 本当に不可能なのかテストしてみる

P124 「自己活性化の重要な鍵は、自分の行動や能力についての否定的な見方に科学的な態度を導入することです」。

 「『私には、できない』を繰り返していると一種の暗示のようになり、やがて本当に何もできない〜と信じ込んでしまうようになります」。

P125 「『気分が落ち込んで、とても集中して本など読めやしない』。この仮説を試す方法として、腰を降ろして今日の新聞を一行読んでみなさい」。

 


15 「失敗を忘れる」方法

P125 「失敗という危険が冒したくないため、できるかどうか試してみるのを躊躇していることもあります」。

 「実際に危険を冒して失敗したとして、あなたが直面しなければならないネガティブな結末を表にしてごらんなさい」。

P126 「いったいいくつの時に〜決して間違いを犯さないことを期待されるようになったのですか?」

※ 失敗を忘れる方法の一例

ある仕事を回避しようとするマイナスの概念 建設的な考えと対処法
私は決して仕事につけないだろう。 一般化のしすぎ。
そんなことはない。いくつかの仕事に応募し、いい印象を与えるように努め、仕事につけるかどうか試してみることができる。
夫は私のことを軽蔑するだろう。 先読みの誤り。
夫に聞いてみよう。軽蔑するかどうか。

(石野注)
 これも結局はトリプルカラム法と同じ。


16 気力が先か、行動が先か?

P127 「気力が先なのではなくて、行動が先なんですよ。まずポンプに呼び水をやらねばなりません」。

 「しばしばぐずぐず主義に陥る人は〜何かやる気分になるまで、バカみたいに待っているんです。やる気分でないと、自然と先に引き伸ばしてしまいます」。

 「行動が先に来て気力は後からやってくるのです」。

 


17 要約

対象となる症状 自己活性法 目的
1 何も手につかず、孤独な週末が嫌になる。 日常活動スケジュール 時間ごとに計画を立て、やった後の満足度を書き込む。
2 やることがあまりに難しく思えるのでつい先に延ばす。 ぐずぐず主義克服シート ネガティブな予想を試してみる。
3 何もしていないという焦りに圧倒される。 歪んだ考えの日常記録 非合理な考え方をはっきり見極める。
4 一人では何もする意味がないと感じる。 満足−予想表 行動とそれに対する満足の関係を知る。
5 ものごとを回避する。 しかし反論法 合理的な抗弁で、「しかし」を克服する。
6 自分のすることに意味がないと感じてしまう。 自分を認める方法 自分を卑下する考えを書き出し、それに反論する。
7 仕事について自滅的に感じる。 チック−タック法 仕事を妨害する認知を、方向づける認知に置き換える。
8 やらなくてはいけないことの大きさに圧倒される。 一歩ずつ成長へ 仕事を小さく分けて、一つずつやっていく。
9 罪悪感、義務感に縛り付けられる。 強制を伴わない動機づけ a 自分に課している「〜すべきだ」、「〜ねばならない」を排除する。
b 行動の利益、不利益を表にしてみる。
10 他人の説教でやる気がなくなる。 武装解除法 相手の言葉に反対はしないが、自分自身の考えでそう行動するのだということをはっきりさせる。
11 喫煙のような習慣がやめられない。 成功をありありと思い浮かべる。 a 習慣を変えることで得られる利点をリストアップする。
b リラックスした状況で、そうした利点を得た状況を想像する。
12 自分の力では何もできないと思ってしまう。 カウント法(やったことを数える) 自分が主導的にやったことをカウンターで数え、回数を記録する。
13 自分はできないから、無能力な人間だと感じる。 本当に不可能か、テストする。 細かいものに分割し、試しにやってみる。
14 失敗を恐れ、挑戦することができない。 失敗を忘れる方法 失敗した場合に考えられる結果を書き出し、対策を考える。

(石野注)

 認知療法の各方法は似たものが多い。
 共通するのは、頭の中でくよくよ考えているだけでは堂々巡りするだけだから、自分が正直にいま、どのように感じているかのかを紙に書き出してみることだろう。

 あとは「書き出す」とも共通するのだが、とにかく具体的にわかるような形にすること。
 すなわち、「難しいだろう」、「やってもつまらないだろう」という思い込みを、

 そして、「十種の認知の歪み」などを参考にして、自分自身に反論をする・・・・というのが本書冒頭で述べられるトリプルカラム法であり、それから手を変え品を変え繰り返される常道である。

 難しいなあ、と思うのが、どうしても抑うつ状態の時は、「自分自身の弱い考えと向き合って、それをしっかりと見つめ、客観的に紙に書き表す」、こんなことができない、というか、できないと思って試みようもしない・・・・・・そういう場合が多いと思うのだ。

 だめでもともとだから、何かこんなこと書き出して、自分で自分に反論するなんて馬鹿馬鹿しく感じるけど、試しにやってみよう・・・・・・そんな風に考え、やりだしてみるなら、その人はもう、その時点でだいぶ改善に向かっていると思う。
 そこをどうしたらいいのか、私にはよくわからない。あえて言うなら、このコーナーの表紙に書いているように、周囲の者がアドバイスしてあげたりするのも一方法だと思う。


 さて、次章へ。
   
  

inserted by FC2 system