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京劇の世界(6)北京京劇院「京劇三国志III」鑑賞記

1 またまた運命的な出会い

 北京京劇院全国公演「三国志III」。上演日は平成13年10月25日。場所は奈良。なぜ、大阪に住んでる私が大和高田市という奈良でもちょっと辺ぴな所まで足をのばしたかというと、朝日新聞の懸賞で招待券が当たったから。
 もともとは、うちの掲示板にCMの書き込みがあったことも手伝い、大阪府門真市の公演を観に行く予定だった。




2 戦古城

 最初の演目は「戦古城」
 『三国志』
に題材を取っているが、北京京劇院の国家一級演出家宋捷張飛の人物像を三国志に関係する文献より掘り起こし、クローズアップさせた最新作とのこと。

 徐州の戦いで敗走途中の張飛が、山賊(黄巾賊の残党呉虎の一味)に襲われた古い城の領主郭常を助ける。領主も娘(郭玉娘)も張飛にぞっこん。客として列席するかのようにだまし、強引に式を挙げてしまう。

 ところが、娘は武芸に秀で、これまで父を助けて戦ってきたので、結婚後も戦場に出たい。張飛は、おとなしく家庭を守ってもらいたい。どちらの意見に従うか、夫婦で武芸勝負をして決着をつけることに。

 ところが、機知と策略で妻がみごと一本取って・・・と、書いていて恥ずかしくなるようなストーリー。
 少女漫画風に言うなら「ほのぼのアクションラブコメディ」ってとこか。

 張飛が手を後ろ手に組んで、花嫁にすこ〜しずつ、すこ〜しずつ近づいていくシーンなど、ほんと見ていても恥ずかしい。
張飛ちゃんで〜す



3 水淹七軍

 次の演目は「水淹七軍」
 馬超のもとを離れ、今は曹操に使えている龐徳(ほうとく)。棺を持参し、関羽を討たなければ自分の命を断つ覚悟。
 関羽に矢を射って今一歩まで追いつめたが、于禁は新参者の龐徳に手柄を立てさせたくないため退却の鐘を打つ。

左から周倉、関羽、関平  体勢を立て直した関羽は、魏の陣営を見て、水攻めで勝負を決める。

 舞台いっぱい水色の幕をなびかせて奔流を表現する。
 その水の中での抜き手をきっての立ち回りは、映画「ウォーターボーイズ」の「男子シンクロ」を連想させる。

 見苦しく命乞いする于禁に対しては、耳を削いで、曹操に送り返す。
 敵ながらあっぱれな龐徳には投降を勧めるのだが、肯んじない。
 「落ちのびて再起を期せ」と見逃そうとするが、それを潔しとしない龐徳は自ら関羽の偃月刀に身を躍らせる・・・


4 気になったこと、あれこれ

 公演は奈良大和高田市のさざんかホール。
 マイクの加減なのか、演者の声がややくぐもって聞こえたのが残念。
 それに、ここでは以前に観たシアタードラマシティ(大阪)や湖広会館(北京)のように電光掲示板の字幕でなく、日本語アナウンスが流れた。
 歌声を邪魔しないよう配慮はされているのだが、その分説明は不足がちになるし、やはりアナウンスとかぶって歌声が聞こえないところも出てくる。あまり精神衛生上よろしいとは言い難い

 この劇場の公演は1日だけだからやむを得ないのかもしれないが、立ち位置を把握しきっておらず、緞帳の前に立たねばならないのに、ふわっと頭の上におりてきて、あわてて少し前にずれるというようなシーンもあった。

 「トンボ」は元気いっぱい。舞台から落っこちるんじゃないかというような勢いで奥から飛び込んでくる演者もいた。ただ、それが上記緞帳のように舞台の大きさを把握してないゆえでなければいいのだが。
 それと、トンボ返りなどのアクションは目を奪う派手さがあって京劇には欠かせない一要素とは思うが、多すぎるとちょっと雑な荒い印象を受ける。

 特筆すべきは、外国人つまり中国人以外では初めて京劇のプロ俳優となった日本人○○氏のこと。上演冒頭で「どの役を演じているかは、カーテンコールの時にご紹介します」とアナウンスして観客に推理する楽しみを残したのは、なかなかおもしろい演出だったと思う。(もっともパンフには明記されていたのだが)

 そのカーテンコールで気になったことが2点。
 1点目は、上演終わって緞帳が降りたとたんどやどやと観客の大多数が席を立ってしまい、緞帳が上がった舞台に立ってる演者の方も、あわてて席に戻る観客たちもお互いばつの悪い思いをしたこと
 これは失礼ながら奈良の皆さんが、シアタードラマシティの観客ほど慣れていなかったということだろう。

 2点目は、カーテンコールで舞台に立った主演・助演級の演者のうち、3人目くらいに○○氏を紹介したこと。いわば凱旋公演だから、それ自体はいいのだが、あと3人くらいは(一緒に舞台前面に並んでいるのに)名前を紹介しなかった点が気になった。
 6時半開演で、この時9時近くなっていたから、短めに、ということだったのだろうか。
 いずれも、北京京劇院の皆さんに申し訳ない気がした。

 会場では、上演パンフ、おなじみの馬鞭のほか、京劇の衣裳の写真集、京劇ビデオ、京劇しおり、京劇鉛筆削りなどおもしろいものが売っており、ついつい買い込んでしまった。
 特に鉛筆削りが安くておもしろかったんで、写真を掲載する。
京劇鉛筆削り(さらし首ちゃうでえ)

 


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