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(No7) 特別陳列「色鍋島の美」鑑賞記

  大阪市立美術館で平成15年10月28日から12月14日までの期間で開催された特別陳列「色鍋島の美」という展示会を観てきました。


 いきなり「色鍋島」という用語が出てきましたが、皆さんはご存知でしたか?
 有田焼伊万里焼柿右衛門鍋島焼
 例えば、この四つの用語のうち、中味まで知っておられるものがいくつありますか?

 私自身の例でいくと、有田焼、伊万里焼、柿右衛門の三つについては名前だけは聞いたことがありました。
 しかし、ほんと名前を知っているだけで、この三つを並べて、どれがどれだか当ててみろと言われても、全くだめです。

 鍋島焼に至っては名前すら知りませんでした。「鍋島」で連想するのは「化け猫」くらい


 ネットで調べた内容で、思いっきりかいつまんでご紹介します。何せにわか勉強、付け焼刃なので誤りがあればご指摘ください。

 佐賀県の有田周辺で焼かれたやきもの有田焼。江戸時代に、伊万里港から国内外に出荷されたため伊万里焼とも呼ばれた。

 江戸以前の有田焼(伊万里焼)肥前磁器と総称することもある。
 肥前磁器は、様式等により古伊万里、柿右衛門、鍋島焼に大別される。
 
 およそ1640から90年代くらいまでに隆盛した、乳白色の濁手(にごしで)の素地に、余白を生かした絵画的構図を特徴とするやきものを、赤絵付けを考案したといわれる初代酒井田柿右衛門(?〜1666)の名から柿右衛門と呼ぶ。

 古伊万里とは、本来は柿右衛門や鍋島を除く有田古陶磁の総称であるが、
おおむね1640年代までの染付中心の肥前磁器を特に初期伊万里として区別し、
景徳鎮窯の五彩、金襴手のような絢爛たる装飾性を志向する、1690年代
頃から焼かれたやきものを古伊万里と呼ぶことが多い。

 また、鍋島藩窯で、藩御用又は幕府・朝廷等への贈呈用として特別に焼かれたもの鍋島(焼)と呼ぶ。

 現在では、有田で焼かれたものを有田焼
鍋島焼の伝統を受け継ぎ伊万里で焼かれたものを伊万里焼
として、両者を区別することが多い。

 また、鍋島は色絵、染付、青磁の三種に大別される。
 その中でも主流をなす色絵の鍋島焼の作品を「色鍋島」と呼ぶ。

 


 さて、分類はこの辺にして、実際の作品を観てみましょう。

 展示作品のうち目玉は何か。単純な見分け方ですが、それは宣伝のちらしやポスター、図録の表紙等を飾る作品でしょう。

 本特別陳列のチラシの表面には、カラーで2点挙げられています。



 一つ目の作品名は、色絵 輪繋文三脚皿(いろえわつなぎもんさんきゃくざら。右写真)。

 この作品はチケットにも単独で使われていますし、チラシの裏面でも再録されています。 

色絵 輪繋文三脚皿 

  まさにイチオシの作品といえるでしょう。

  本作品のスペックを紹介しますと、江戸時代(17世紀末〜18世紀初頭)盛期鍋島 個人蔵。高さ8.3cm、口径26.0cm、底径15.4cm・・・・・ということになります。


 チラシ裏面の色鍋島に関する解説文から引用いたします。

「『色鍋島』と呼ばれる色絵磁器は、素地を素焼きし、墨弾きの手法により染付で文様の輪郭を表し、本焼きののちその輪郭内に緑・黄色などの色釉を充填していく絵付技法によって、輪繋毘沙門菱などの幾何学文、桜樹・紫陽花・菊花・水仙・椿などの花卉文、紅葉と水流の図様などによる名所・旧跡の物語文、大根などの蔬菜文など、和様の意匠が好んで描かれました」

  上記にある「墨弾き(すみはじき)」とは、墨で文様や線を描き、上から全体に呉須(ごす。コバルトを含む鉱物)を塗る。墨は膠分を含むので、呉須を弾く。
 そして焼くと、墨で描かれた部分は、炭化して焼け落ちてしまうので、呉須のついていない白抜きの状態になるという手法です。(簡単なイメージ図↓)

  ▽●△■▽  →これを焼くと→   △■▽

 右上写真でいうと、2種類のリングが繋ぎ合わされた文様が中心部にあり、HP上では判別しにくいと思いますが、下半分には、非常に細かい幾何学的な地文様が描き込まれています。

色絵毘沙門亀甲桐文皿  二つ目の作品が、色絵 毘沙門亀甲桐文皿(いろえびしゃもんきっこうきりもんさら。左写真)。

 立体的に編みこまれたような文様です。
 黄色のとこ、青色のとこ、赤色のとこをそれぞれたどると六角形の亀甲になっています。

 ただ、「毘沙門亀甲」という文様については、「素材辞典Vol.36 〈織物・日本の伝統模様編〉」とおっしゃるHPや、「快適キモノ生活 日本屋」とおっしゃるHPの「日本の文様」というページで見る限り、直線が三方向に伸びるだけで「(毘沙門)亀甲」と呼ぶようです。

 また、栗田美術館HPにおいては、同種の作品を「鍋島 色絵 網代桐花散らし図皿」と表現されています。

 本特別陳列の宣伝用チラシの裏面に白黒で4点収録されているのは、1点が上記の輪繋文皿。

 あと3点のうち一つ目は、色絵薄瑠璃 唐花文菱形皿(いろえうするり からはなもんひしがたざら)。
 初期鍋島・日峯社下窯。江戸時代(17世紀後期)。高さ3.2cm、口径16.2×14.0cm、底径9.5×7.8cm。

※ この皿と同種の作品(高さ3.4cm、口径13.7×16.2cm、底径7.4×8.9cmとスペックが似ているのですが、同一かどうかはわかりません)は、「蓬壺」とおっしゃるHPの「鍋島」のページに掲載されています。

 二つ目は、色絵 万年青図小皿(いろえ おもとずこざら)。後期鍋島。江戸時代(19世紀前期)。高さ3.1cm、口径12.6cm、底径5.2cm。

 最後、三つ目は色絵 桜花柴束図皿(いろえ おうかさいそくずさら)。盛期鍋島。江戸時代(18世紀初期)。高さ5.3cm、口径20.8cm、底径10.3cm。

 この作品のように、「柴」の束や垣というのは、色鍋島では図柄としてよく使われるようです。
 類似の作品としては、
 サントリー美術館HPでは
鍋島 色絵 桜柴垣文皿

 栗田美術館HPでは、
鍋島 色絵 柴垣椿図皿  
が掲載されています。

 やはり、日本のやきものですから「桜」は代表的な図柄として、単独で、また、「柴」の他にもいろいろなものと組み合わされて用いられています。

 「伊万里・有田焼」とおっしゃるHPで紹介されている九州陶磁文化館所蔵の
鍋島 色絵 桜樹文皿

 「六陵・大阪学講座」とおっしゃるHPで紹介されている白鹿記念酒造博物館寄託の
鍋島 色絵 花籠青海波文小皿

 「さくら・あらかると」とおっしゃるHPで紹介されている林原美術館所蔵の
鍋島 色絵 御所車桜文皿など。

 図録がつくられなかったこともあって、本特別陳列における個々の作品の詳細についてはよく覚えていないので、この辺にしておきます。



 先ほど鍋島は、色絵(色鍋島)、染付、青磁に大別されると書きましたが、青磁と染付のコンボ技などもあるようです。
 種類ごとに分類してみます。

(1) 色絵
 やはり、花などをあしらった作品が多いようで、
栗田美術館HPでは、花卉文の諸作品として
鍋島 色絵 岩牡丹植木鉢図大皿

鍋島 色絵 牡丹図燭台  

鍋島 色絵 秋海棠水仙図皿

鍋島 色絵 菊花流水図皿  

鍋島 色絵 縁鉄砂青海波椿図皿

鍋島 色絵 薔薇図皿

鍋島 色絵 三度豆図異形皿  

鍋島 色絵 紫陽花図鉢
 

鍋島 色絵 唐花繁図皿
 

鍋島 色絵 図異形小皿 五客

 MOA美術館HPでは、
(重要文化財)鍋島 色絵 桃花文皿

 「(株)松華堂」とおっしゃるHPで紹介されている伊万里市教育委員会所蔵の
鍋島 色絵 杜若文三足付皿

鍋島 色絵 蜘蛛巣紅葉文変形皿

 また、福岡東洋陶磁美術館HPでは、
鍋島 色絵 紅葉流水文皿  

 このほか、サントリー美術館HPでは、鳥をあしらった
鍋島 色絵 鶺鴒文皿

 また、「自然」ではなく人工的なものをあしらった図柄としては、
 
戸栗美術館HPでは、
色鍋島 壽字宝尽文 八角皿江戸時代17C末〜18C初)
が掲載されています。

 これと同種のものとして
サントリー美術館HPでは、
鍋島 色絵 壽字宝尽文八角皿

同じく 鍋島 色絵 組紐文皿

 栗田美術館HPでは、
鍋島 色絵 和本図皿

 林原美術館HPでは、
鍋島 色絵 房文七寸皿

 「(株)松華堂」とおっしゃるHPで紹介されている伊万里市教育委員会所蔵の
鍋島 色絵 草紙散文皿

鍋島 色絵 更紗文皿

などが掲載されています。

(2) 染付
 サントリー美術館HPでは
 鍋島 染付 雲雷文皿

同じく (重要文化財)鍋島 染付 松樹文三脚皿
が掲載されています。

 林原美術館HPでは
鍋島 染付 月兎文皿

 栗田美術館HPでは、
鍋島 染付 童子雪合戦図三脚附大鉢

 「朝日マリオン:いちおしコレクション」で紹介されている戸栗美術館所蔵の
鍋島 染付 桃文皿

(3) 青磁

(4)  青磁染付
 栗田美術館HPでは、
鍋島 青磁染付 唐花図皿  
 
鍋島 青磁染付 蝶形皿

鍋島 青磁染付 瓜形小皿


 「伊万里・有田焼」とおっしゃるHPで紹介されている九州陶磁文化館所蔵の
鍋島 青磁染付 桃文皿

(5) 青磁色絵
 栗田美術館HPでは、
鍋島 青磁色絵 五葉松図大皿
  
などなど。



 鍋島焼は、既に述べたもののほかにも、いくつかの特徴があります。
(1) 色は藍(染付)と赤・緑・黄(上絵)の4色。

 古伊万里は金や銀を多用するが、鍋島では絶対に用いない、と書いたサイトがありました。
 ただ、本特別陳列の出品作品リストには、「瑠璃銹釉金銀彩 和綴本形皿」と「色絵金彩 梅樹図皿」というのが挙がっていました。どんなのだったか覚えてませんけど。

(2) 実用食器、特に皿が中心

 日本でやきものといえば「茶道」、「茶碗」というイメージがありますが、鍋島は皿や向付といった実用食器類が中心です。
 流麗な色鍋島は、茶道でいう「わび」、「さび」とは遠いので、この選択は戦略的にみても非常に賢明だったのではないでしょうか。

 口径は1尺・7寸・5寸・3寸など規格化されており、器形としては、木盃形といわれる高台の高いものが典型的。
 高台には、櫛目模様が精密に描かれることが多いようです。


 まことに、お疲れさまでございました。

 

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