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(No6) 特別展「円山応挙」鑑賞記

  大阪市立美術館まで円山応挙展を観てきました。なかなかの人気で、入場まで15分待ち。


 いきなり、「猫」がお出迎え。いや、正確には「猛虎図」というようですが。
 眼がどれも縦一本の「昼間のニャンコの眼」になっている。まあ、虎は猫科やから間違っちゃないけど。耳が小さくて薄いし、口の形が変だ。で、身体全体のバランスにどうも違和感がある・・・と思っていたら、説明書きを読んで納得。

 当時の日本には生きた虎はいなかったので、応挙は毛並みなどは虎の敷き皮に学び、形態は猫を参考にしたとのこと。
 さすが、「写生」の応挙。写し取る力が大きすぎて虎が全部猫になっちゃったのか。

 あと、印象に残ったのをアトランダムに。
 「大瀑布図」は、縦3.6mの大作(萬野美術館所蔵)。
 あまり長いので、掛けると全部垂れ下がらずに、前方にL字型に折れ曲がる。そこが、滝が滝壷に流れ落ち、淵から下流へと流れていくさまを立体的に現していて、おもしろい。

 京都八坂神社所蔵の「双鶏図」は、描かれている鶏があまりリアルなんで、逃げちゃいけないってんで金網が付けられていたそうです。
 衝立に釘の跡が残っているんですが、落語「抜け雀」を思い出しました。

 「狗子図」はころころと可愛いし、「幽霊図(お雪の幻)」は幽遠。儚げながら、瞳に妙に力を感じます。
 
 そして、非常に細密、詳細な「写生図」の数々は、観覧者が口々に「写真入りの図鑑よりきれいやな」と驚嘆の声をあげていました。

 全く同感なのですが、そうした作品に負けないくらい、「龍門鯉魚図」(兵庫・大乗寺)と「氷図」(大英博物館)が印象に残りました。
 
 前者では、滝をのぼる鯉は全身が描かれず、縦方向に何箇所か塗り残されています。それが滝の水の流れを現しているのです。
 また、後者では、横長の白紙に直線が斜めに何本か描かれています。氷の割れ目だけを描くことによって、それ以外の空間には池に張りつめた氷が現われる。
 すべて「描き尽くす」ことによる「写生」と、「描かない」ことによる「写生」とがあるのだなあ、と思いました。 

 さて、本展覧会では『図録』が、おすすめです。カバーが金色で、実に豪華な雰囲気。
 図録からコピーするわけにもいかないので、駅などに大量に置かれていたチラシからご紹介を。

 右上は、「牡丹孔雀図」(重要文化財)。萬野美術館所蔵とのことですが、展示期間の関係で観ることができませんでした。

 その代わり・・・といっちゃなんですが、牡丹孔雀図は、宮内庁所蔵のものと個人蔵のもの、計2点展示されていました。

 絵の出来としては、萬野美術館のものが一番良いのかもしれませんが(これだけが重文)、あとの2点も緻密な孔雀の羽根の質感なんてすごいものです。

 図録には「羽根の一枚一枚にまでゆるがせにしない繊細な神経の行き届いた描写」とありますが、羽根1枚どころか、1枚の羽根を構成する羽毛を1本ずつ描いているようにも思えます
 モルフォ蝶の羽根ではないですが、何だか細かな鱗粉を連想させるほど、その細密さはめっちゃマニアックだなと思いました。

 右下の2点は、「花鳥図」で大英博物館所蔵。
 無款で長らく中国絵画と思われていたが、最近の研究によって応挙作品と判明したそうです。
「応挙」チラシ(部分) 

 下の2枚は、有名な「雲龍図」(重要文化財)。
「応挙」チラシ(部分)

 

 左上は「雪松図」。東京三井文庫所蔵で、本展覧会唯一の国宝。これも、展示期間の関係で見ることはできませんでした。

 右上は、「郭子儀図」。兵庫県香住町の大乗寺は、別名応挙寺と呼ばれており、障壁画165面すべてが、応挙とその弟子によって描かれているそうです。

 本会場では、寺から運んできた襖絵を単に平面的に並べるのではなく、山水の間、郭子儀の間、孔雀の間として3部屋が立体的に再現されており、まるで大乗寺の客殿の畳の上で周りの障壁画を眺めているような気分になれました。


 チラシの表面の拡大版はこちらで。「雲龍図」の龍の顔がアップで写ってます。



 まことに、お疲れさまでございました。

 

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