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(No179) 大阪市立美術館 没後150年歌川国芳展 鑑賞記 その3


 平成23年5月14日(土)に大阪市立美術館に「没後150年 歌川国芳展」を観に行った時のメモ。

 

 


第2章 説話 物語とイメージ


(岩切氏の解説)

和漢のさまざまな画題を取り込み、古くからの故事伝説や物語を〜広く一般に普及させた点において、複数を出版製作でき、安価に供給された浮世絵版画の果たした功は大きい。
 教訓啓蒙的な主題を扱うものもあり、庶民に対して絵解き的な役割も果たしている。〜

 国芳は、画想の自由さと多様性において傑出した才能を持つばかりでなく、浮世絵の枠を越え、さまざまな画法や表現法を貪欲に摂取し、独自のイメージを生み出していった絵師である。

 

112 「韓信股潜之図」

 

 「かんしんまたくぐりのず」。

 私にとっては「韓信の股くぐり」というと、ごくごくポピュラーな内容だが、一般的には(中国史に興味がない方には)それほどでもないのだろう。
 私の横で観ていたお年を召した女性の二人連れは「股くぐりやて」「股・・・?」って、そこだけでえらいウケていた。

「韓信股潜之図」(部分)

 

116 「二十四孝童子鑑 大舜」

 中国の古帝、(ぎょう)・(しゅん)の舜である。

 本図は、ニューホフ『東西海陸紀行』を参考にしているとのことである。

 画像は国芳HPの下部の展示作品一覧参照。

 


 

第3章 役者絵 人気役者のさまざまな姿

(岩切氏の解説)

 役者絵は、当時の人気役者のブロマイドであり、上演芝居の舞台の報道資料的な役割を持つものであった。

 国芳の時代、役者絵では若い頃から頭角を現していた兄弟子の国貞が人気を博していたが、天保以降、国貞についで多く役者絵を制作しているのは国芳である。


国芳の役者絵には、役者個人の魅力を伝えること以外に、その場全体の雰囲気をさまざまな要素を用い、絵として効果的に構成しようとする姿勢がうかがえる。
 役者絵における「見立」とは、実際の舞台に基づくものではなく、」それぞれの役者にふさわしいと思われる役や場面を恣意による設定で描いたもので、国芳の才は〜見立絵において、ことに独自の特色を発揮しているようである。


139 五代目市川海老蔵の民谷伊右衛門・三代目尾上菊五郎のお岩亡霊

 前期展示なので現物は観ていない。画像は国芳HPの下部の展示作品一覧参照。


144 三代目尾上栄三郎のしづか御ぜん・下り二代目尾上多見蔵の百姓きょろ作と源九郎狐

  義経千本桜とか狐忠信とか、そういった場面。きょろ作が狐に化かされて踊る姿を静御前が見ているらしい。
 だぶだぶの狐の「着ぐるみ」を着て、緊張感なく舞台でだらけてる役者の姿が面白い。




第4章 美人画 江戸の粋と団扇絵の美

(岩切氏の解説)

 文政(1818〜29)以降の幕末浮世絵で美人画絵師として名を挙げられるのは、歌川国貞渓斎英泉が多く、一般的に国芳の美人画が紹介される機会は少ない。

 国芳の美人画の特徴は、明るく、健康的なことであろう。笑い顔も多い。日常の何気ない仕草や、町の娘や女房の飾り気のない魅力がよくとられられている。
 四季折々の風趣が取り合わされているばかりではなく、コマ絵を用いた見立の趣向にも洒落た機知が効いている。

 団扇絵は、竹の骨に貼って実用に供されたため、残存数の少ないものであるが、見本帳として残された未使用の状態の団扇絵には、彫・摺の念入りなものが多い。

 

163 「本朝景色美人図絵 防州岩国錦帯橋之景」

 
 バックに小さく錦帯橋が描かれている。

 芸者の近くに描かれている「ふぐ提灯」のようなものは、向島あたりで売られていた「都鳥」の玩具とのこと。

 

174 春の虹蜺


 「虹蜺」とは、「こうげい」又はずばり「にじ」と読み、いわゆる虹。Rainbow のことである。
 この絵では確かに左上方に虹の弧が描かれているが色はそれほど鮮やかではない。

 それより面白いのは美女が両手に串を持ち、その2本の串の間には茶色く薄いものがある。私は最初、大きな「酢昆布」かと思った。

 図録解説によると、串焼きのウナギ蒲焼を口にしようとしたところで「虹が出てる」と言われ、振り返ったところを描いたものらしい。

 


190 「四季心女遊 春」

 前期展示なので現物は観ていない。画像は国芳HPの上部の展示作品。後期展示は同じシリーズの秋、冬バージョン。



203 鏡面シリーズ 猫と遊ぶ娘


 猫好き国芳の面目躍如か。画像はチラシで。又は、国芳HPの下部の展示作品一覧参照。

 

212 「逢性鏡 吉三郎」

 画面右上方に銅鏡が描かれており、そこには役者絵が描かれ、「吉三郎」と書き添えてある。


 で、その役者絵は八代目市川団十郎の似せ絵だそうだ。
 女性は普通の美人画で、特に役者の似せ絵ではないらしい。娘の着物の紋は八百屋お七の紋である「丸に封じ文」とのこと。
 要するに八百屋お七と小姓吉三、カップルの絵である。
 お七のポーズが、両手の指をからませ、掌をぐっと前に突き出す、「キャイーン」の決めポーズ的で可愛い。
 また、簪(かんざし)の飾りが、団十郎のトレードマークにちなんで「かまわぬ」(「鎌」と、「輪」と「ぬ」の字)なのがシャレてる・・・・と「日曜美術館」で紹介されていた。




 

第5章 子ども絵 遊びと学び


(吉田恵理氏:静岡市美術館の解説)

 天保の改革期、幕府より浮世絵版画は「忠孝貞節」、「勧善懲悪」といった啓蒙教化を旨とすべし、というお達しが出ると、浮世絵師たちはこれまでの役者絵や美人画とは違った趣向の作品を生み出した。
 今日「子ども絵」と呼ばれる、子どもの「遊び」や「学び」を主題としたジャンルも、この頃、質量とも充実してくる。
 例えば、五節句のような年中行事やそれに伴う子どもの遊びを描いた作品や、子どもに教訓を示したり、礼節を説いた作品などがそれである。
 なかには、「ごっこ遊び」にかこつけて、子どもを大人に見立てた作例もある。
〜 

250 「子宝遊」

 「寶」という字の各パーツを15人の子どもが(3連で、1連につき5人描かれている)わっせわっせと持ち寄り、中央で組み上げている。発想が面白い。

 

 


 お疲れ様でした。

 
 
  

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