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(No161) 「聴いてみよう雅楽 見てみよう雅楽 知ろうよ雅楽」鑑賞記 その4

 



 赤い衣装の蘭陵王がゆっくりと、舞台向かって左へと消えていった。
 「出ていったら・・・」と聞いていたので、そこで拍手が起こったが、まだ演奏は続いている。

 拍手のタイミングはこれで良かったのか?会場が何か悩んでる雰囲気になったところで演奏も無事終わり、みんな「ほっ」としたかのように、再度盛大な拍手。

 太田さんが、マイクを持つ。
「絢爛豪華というか、”デーハー”(派手)というか、この衣装も舞楽のみどころです。毛べりのついた「りょうとう装束(しょうぞく)」という衣装で、これは走り舞というジャンルに用います。」

 その時は漢字が分からなかったが、Wikiによると、
「龍頭を模した舞楽面を着け、金色の桴(ばち/細い棒のこと)を携える。

 緋色の紗地に窠紋の刺繍をした袍を用い、その上に毛縁の裲襠
(りょうとう)と呼ばれる袖の無い貫頭衣を着装し、金帯を締める。」とあった。

 なお、走り舞とは蘭陵王や納曽利のような、(雅楽の中では)動きの激しい舞楽をさす言葉のようである。

 太田さんが、次の演目の紹介をされる。

「舞楽は右と左に分かれます。蘭陵王は左方。次の納曽利(ナソリ)は右方です。

 左方の舞の衣装は、今見ていただいたように赤系。次の納曽利は、踊りも似ていますし、衣装も陵王の色違いという感じです。

 ですから、次に全く違うタイプの舞を見ていただいてもよろしいのですが、舞楽というのは番舞(つがいまい)で、右と左で順番に組んでいく。
 ここから「番組」という言葉ができたのですが、そういうもんなんだということを知っていただこうと思いました。

 この納曽利は高麗楽といいまして、笙を用いません。

 また、鞨鼓を使わず三の鼓
(さんのつづみ)を、龍笛の代わりに少し細めの高麗笛(こまぶえ)を使います」


 三の鼓は鞨鼓と違って台には乗せていない。
 バチも、鞨鼓は長いものを両手に持っていたが、三の鼓は太めのバチを右手に持ち左手は胴の所の緒をしぼるように持っていた。

 「三の鼓」の画像については、ここ。高麗笛については、ここ(横笛)をご参照いただきたい。

 舞台右側から豊氏が登場。ということで、豊氏は準備があるから1曲目の「蘭陵王」では、笙は上田さんが一人で演奏していた。
  高麗楽になって笙の出番はなくなり、「やれやれ。終ったわ。よかった・・・・」という感じで「炙って」おられたのが面白かった。

 この上田さん、太田さんのギャグに(声は出さないが)めっちゃ受けていて、見ていてすごく楽しい感じの人だった。


 市のHPの記事を転載しておく。(↓)

舞楽の演目には、まず有名な「蘭陵王(らんりょうおう)」を選びました。安芸の宮島・厳島神社は特に有名で、宮島口駅には「蘭陵王」の銅像もあります。対(つい)である「納曽利」(二人舞)の一人舞である「落蹲(らくそん)」も演奏します。この「落蹲」舞人には、宮内庁楽師(重要無形文化財保持者)である豊剛秋(ぶんのたけあき)師による客演を賜ります。

演奏・演舞もさることながら豪華絢爛な舞楽装束にもご注目。目にも耳にも心地の良い演奏をお楽しみください


 「納曽利」については、例えばここで。
 上記HPでは、納曽利の一人舞を「落蹲」と呼ぶと決まっているわけではないと書いてあるが、下記の当日資料には、『枕草子』にも触れつつ、そう呼んでいるのだと書いてあった。 

 衣装も色こそ違うが、デザインは似ている。蘭陵王と納曽利(落蹲)の違いがよく分からない。私が気付いたのは以下の各点くらい。

(1) 蘭陵王の面は頭上に金色の龍がついていたが、納曽利にはない。
(2) 足を運んだり、くるっと向き直ったりするのが蘭陵王は中央から左方面が多く納曽利は右方面が多い(気がした)。
(3) 納曽利では舞台にしゃがんで片膝をつく場面があったが、蘭陵王にはなかったように思う。
(4) 納曽利は、両手を揃えてぴょん!と軽くジャンプする動作が多い。
(5) 蘭陵王は、指を「Vサイン」というか、じゃんけんのチョキというか、指を2本離して突き出していたが、納曽利は、親指と人差し指は丸くくっつけていた。

 当日の資料は、次のとおりである。

◇ 落蹲(らくそん):右方の舞(右舞)

 「納曽利」(なそり)は右方高麗楽の名曲中の名曲で、「蘭陵王」と対を成し、左右の双璧とされている。
 二匹の龍(夫婦とも兄弟ともいわれる)が戯れ遊ぶ姿を舞にしたものといわれる。

 別名を舞様から「落蹲」(らくそん)ともいい、『枕草子』に「落蹲は二人して膝踏みて舞ひたる」とある。

 「納曽利」の語源や由来は不明のまま伝来しているが、韓国に「パンソリ」という歌劇がある。

 韓国語で「〜ソリ」とは「〜の歌」という意味で、これから「ナソリ」とは「儺」ソリ。儺とは鬼を意味するので「鬼の歌」という解釈ができる。

 近世では、本来二人舞である「納曽利」を一人で舞う際には「落蹲」と呼称を変えている。


 あと、演奏の曲目についての当日資料は次のとおり。

演奏次第

(1) 高麗小乱声(こまこらんじょう)、(2)納曽利破(なそりのは)、(3)納曽利急(なそりのきゅう)


 納曽利が終わり、せっかくなので少しだけ質問を・・・ということになり、手を上げた。

 質問は、主奏者と助奏者の並び順で、笙と龍笛は、主奏者が向かって右だったのだが、篳篥だけが逆だった。この順番というのは何かルールがあるのか、それとも自由なのか?という質問をした。

(↓私の質問を分かりやすくする表は、1回目に表示しているが、下に再掲する) 

 一部「管弦」における並び順は下表の通り。
龍笛 龍笛(主) 篳篥(主) 篳篥 鳳笙 鳳笙(主)
石山 迪彦 岩佐 堅志 今中 理志 上山 正信 上田 弘美 豊 剛秋
      琵琶  
  尾崎 治雄     太田 豊  
客席


 すると太田さんは、「これは、まず笙の主奏者が鳴らしてそれに合わせていくので、できるだけ、それを聴きとりやすいようにその右側、右側と並んでいくんです」とおっしゃった。

 ん?その理屈は分かる。一番右端の笙主奏者の右横(向かって左)に笙の助奏、その横に篳篥の主、そして助・・・・と並ぶのなら分かるのだが、篳篥だけが逆になっていたので奇異に思い、別にそんな順番は決まっていないのかな?と思って質問したのだが。

 どうやら太田さんも矛盾していることに気付いたらしく、ちょっと混乱しかけたとこで、篳篥の主奏者の今中さんが太田さんに耳打ちをした。

 太田さんは、一瞬「えっ!」というような表情をして「今日は、座る順番を間違えたそうです。・・・・何とゆう・・・」と、ちょっと絶句してしまわれた。

 何か悪いこと聞いちゃったな。


 あと、
(1) 筝の「輪説」というのは結局どんな弾き方なのか、
(2) 打つたびに太鼓の飾りがぶれる音がしていたが、あれで良いのか(これは、失礼かな)、
(3) 蘭陵王と納曽利の指の形には何か意味とか決まりがあるのかなども聞きたかったのだが、一人で何問も尋ねるのもなぁ・・・と思ったので、上記の1問だけにとどめておいた。

 その後「他にお尋ねの方は?」と太田さんが聞いていただいていたのだが、私がしゃしゃり出て、再度質問し、他の方の質問の機会を奪っては・・・・・と遠慮してるうちに「それでは、ご質問もないようですし」と打ち切られてしまった。他に質問する人がいないと分かっているなら、再質問すればよかった。


 もうついでだが、市HPでは、次のとおり。

〈雅楽楽器の紹介・解説〉 
《第二部》舞楽(ぶがく)
蘭陵王(らんりょうおう) 
落蹲(らくそん) 
退出音声 長慶子三度拍子(ちょうげいしさんどびょうし) 

 上の記事でいくと、落蹲まで終わった。で、フィナーレを説明した当日の資料は次のとおり。

退出音声 長慶子三度拍子(まかでおんじょう ちょうけいしさんどびょうし)

 退出音声とは、演奏会のフィナーレを飾るために必ず演奏される曲で、平安時代のアンコール曲といったところ。
 通例では「長慶子」を三度拍子という乗りの良いテンポで奏される。
 この曲は、純国産の楽曲で源博雅(みなもとのひろまさ)が作曲した。この人は平安中期の日本が誇る大音楽家で、映画「陰陽師」にも主役・安倍清明の親友役として登場する。

 林邑楽の香りが少しする、名作中の名作を聞きながらお別れといたしましょう。


 太田さんの紹介では「雅楽の会では、この退出音声が流れている間に、観客の皆さんは退出されます。皆さんも随時お立ちいただいてけっこうです」と言われたが、私も他の観客の方も最後まで鑑賞していた。

 貴重な体験をさせていただいた。

 大阪市のHPに載っていた、今回演奏していただいた博雅会の紹介HPを最後に載せて終わりとしたい。

博雅会(はくがかい)プロフィール

雅楽の自由な演奏活動を目的に、平成11年4月に発足した雅楽演奏ユニットです。北海道から九州までの全国各地に在住する次世代の雅楽を担う若者たちが集まっています。雅楽と聞くと洗練されたおとなしいものをイメージしがちですが、若さにあふれた元気のよい演奏が我々博雅会の持ち味です。

平成12年8月には新潟・富山・石川3県にまたがり「北陸公演」を挙行しました。8都市11公演、延べ2000人のお客様にお越しいただき収めました。その模様はテレビ・新聞などでも大きく取り上げてくださいました。また、演奏するだけでなく、雅楽を普及するために講師を全国に派遣するなどの活動も行っています。

会の名称の「博雅」とは、「広く物事をよく知る」という意味です。平安中期における雅楽の大スターで、映画『陰陽師』でも御馴染み、源博雅(みなもとのひろまさ)にあやかりたいとう思いもあります。


 


 

 お疲れ様でした。

 
 
  

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