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(No158) 「聴いてみよう雅楽 見てみよう雅楽 知ろうよ雅楽」鑑賞記 その1

 



 「聴いてみよう雅楽 見てみよう雅楽 知ろうよ雅楽」というタイトルの雅楽観賞会が開催されるというニュースを目にした。

 趣旨は、HPによると「雅楽は古代以来、宮中や寺社で演奏され続けてきました。しかし、一般的には接する機会は少ないので、この演奏会を通じて、古典音楽、伝統文化に理解を深めてはどうでしょうか。
 演奏を聴くだけでなく、曲の成り立ちや、楽器の特徴などの解説も合わせて行うことによって、より雅楽についての理解を深めていただくことができるでしょう。

 今回の演奏会は、雅楽を聴くのが初めての方にも分かりやすいように解説を交えながら演奏いたします。演目もスタンダードなものを選曲いたしました」
とのことである。

 知識を広げたくて申し込んでみた。日時は平成22年2月7日(日)、舞台は大阪歴史博物館4階講堂である。



 白い服装の、ちょうど神社の巫女さんのような格好の女性が二人、舞台上に琵琶(びわ)と(そう)をセットする。
 時間になって出てきたのは、茶色い服装の面々。どうも先ほどの女性は裏方さんだったようだ。

 当日配布の資料によると、今日の観賞会は「管弦」「舞楽」の二部構成。

 管弦とは、資料によると「管楽器と弦楽器が、音色の美しさを競うスタイルの音楽」で、「平安時代の貴族の遊び”御遊”(ぎょゆう)から生まれた」ものだそうだ。オーケストラを日本語で管弦楽と呼ぶのは雅楽に由来するとか。

曲目は次のとおり。

《第一部》
管絃(かんげん)

平調調子(ひょうじょうのちょうし) 
五常楽急(ごしょうらくのきゅう) 
越殿楽残楽三返(えてんらくのこりがくさんべん) 
催馬楽(さいばら) 更衣(ころもがえ) 
陪臚(ばいろ) 


 「平調」(ひょうじょう)とは、「唐楽六調子の一つでミ〈E音〉を主音とする調子」とのこと。

 「調子」とは、「曲の演奏に先立って行う音合わせのようなもの」とのこと。
 後で演奏する「五常楽」、「越殿楽」、「陪臚」が平調に属する楽曲なので「平調調子」を行うのだろう。

 鳳笙(ほうしょう)→篳篥(ひちりき)→龍笛(りゅうてき)→鞨鼓(かっこ)→琵琶の順番で演奏する。

 まず鳳笙の音頭(おんどう)と呼ばれる主奏者が演奏を始め、次に篳篥の音頭が、そして龍笛の音頭と鞨鼓が同時に演奏を始め、最後に琵琶、筝が締める」
と資料にあったが、舞台上に鞨鼓はなかった。
 「管」と「弦」だから無い方が筋が通っている気がする。

 実は各楽器の紹介は二部、舞楽の冒頭になされたのだが、先にしておいた方が分かりやすいと思うので、ここで紹介してしまうことにする。

 また、個々人の名前の紹介は一切なかったが、名簿と担当の楽器は資料にあった。主奏者と助奏者は、単純に名前が先に書かれている方が主奏者と判断する。(間違っていたら、ごめんなさい)

 一部「管弦」における並び順は下表の通り。

龍笛 龍笛(主) 篳篥(主) 篳篥 鳳笙 鳳笙(主)
石山 迪彦 岩佐 堅志 今中 理志 上山 正信 上田 弘美 豊 剛秋
      琵琶  
  尾崎 治雄     太田 豊  
客席



 マイクでしゃべっていたのは、最初に琵琶を奏していた太田さんである。この方、まことに「しゃべり」が達者で、感心した。

「琵琶は、珍しくルーツがはっきりしています。中東のピパが中国経由で伝わりました。果実のビワ(枇杷)は、実の形が楽器の琵琶に似ているから。楽器の方が先なんです」とのこと。
 滋賀県の「琵琶湖」みたいなものだなと思った。

「琵琶には、平家琵琶や越前琵琶、薩摩琵琶などが有名ですが、それらの琵琶は縦に持ちますが、雅楽の琵琶は横方向に持ちます。
 撥もごはんのしゃもじのような形です。

 雅楽における琵琶は、弦楽器というより打楽器というか、リズムや拍子をとるのが大きな役割です」
とのこと。

 次は筝。

「筝というのは、いわゆる琴(こと)ですが、雅楽では弦楽器全般を琴(こと)と呼びます。
 ですから、琵琶は、正しくは琵琶の琴。筝は筝の琴といいます。

 ところが、筝の琴を単に琴と呼ぶことが一般的になってしまったため、筝の琴のことが、筝の琴ではなく、琴と・・・・・・あれ?ややこしいですね。

 筝というのは『竹かんむり』に『争う』と書きます。なぜ、こんな字を書くか、というと中国には、筝によく似た楽器で
(しつ。ひつ)という楽器があります。これは弦が25本です。
 親の形見の瑟を、ある姉妹が奪い合い、真っ二つに裂けてしまった。
 そのうち、お姉さんが手にした方が日本に伝わったので、日本の琴は13弦なんだ・・・・という話があります。
 真偽のほどは定かではないですが」


 太田氏は、奏者に、お客さんに「爪」を見せるよう指示した。生田流とか現在一般化している琴で使う爪より小さめだそうである。

 琵琶、筝についてより詳しい説明や画像などは、例えばこちらのHPにて。

「続いて笙です。皆さん、注目度No1だったのではないでしょうか?あれは何なんだ?何でクルクル回しているんだ?と。」

 これは私も気になっていたのだが、小さな火鉢のようなものの上で、クルクル回しながら炙っていたのである。

「この細い管の先には金属のリードがついていて、これが震えて音が出ます。ハーモニカと同じ原理です。
 ただ、ハーモニカは『吹く』と『吸う』では音が違いますが、笙は同じ音が出ます。

 ですから、よく、なぜ笙を吹く人はあんなに長く息が続くのですか?という質問が出ますが、実は演奏しながら深呼吸しているようなものなのです。

 この火鉢のような入れ物の中には電熱器が入っています。昔は炭火でした。今も、正式の場では炭火の火鉢なんですが。

 息を吹き込むので、金属のリードが結露してしまうと音が出なくなるため、演奏中でも、ご覧のように暇さえあれば、こうやって暖めているんです。

 演奏の前も15分くらいは暖めますし、終ってからも15分くらいは暖めなければなりません。まあ、気の長い人でないとやってられません。

 竹の管には穴が空いており、これを指で押さえると音が出ます。複数の穴を同時に押さえることで、この楽器は和音が出せるのです」

 笙を鳳笙と呼ぶのは、美称のほか、鳳が羽根を広げているようにも見えるためらしい。


「篳篥は、雅楽では主旋律を担当します。

 葦をつぶしたリードがつきます。
 オーボエやファゴットと同属のダブルリードの楽器です。

 ただ、篳篥には致命的な欠陥があります。それは音域が非常に狭いということです。およそ1オクターブくらいしかありません。

(と、太田氏は、今中氏に演奏するよう指示した。指を押さえてリコーダーのように吹いていくと確かに1オクターブくらいしか音が出ない)

 これをカバーするテクニックがあって、それを「塩梅」(えんばい)といいます。息の吹き方だけで音が三つくらい上がるのです。

(再び、演奏を指示。と、指を押さえずに吹かれたのだが、同じ状態で確かに音が変わっていく)

 ですから、篳篥の奏者が指を押さえたり離したりしてるのは、まあ、気分の問題でやってるようなものでして・・・・・。それだけ、正確に音程を取るのが難しい楽器だともいえます。

 ちなみに、清少納言からは『くつわ虫みたいな音色で、好きじゃない』と酷評されております」


「次に龍笛です。

 桜の皮を巻いて、漆を塗っています。乾湿対策です。

 能管や篠笛に発達しました。日本で一番古い横笛です」

 笙、篳篥、龍笛についてより詳しい説明や画像などは、例えばこちらのHPにて。 

 なお、打楽器の紹介は、二部「舞楽」のところに回したい。

 


 

 お疲れ様でした。

 
 
  

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