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(No119) 奈良国立博物館 正倉院展 鑑賞記

 平成20年11月3日(月・祝)に、正倉院学術シンポジウム2008という催しに応募して当たったので聴きに行った。
 そのイベントは昼からだったので、午前中は初めてなんだが正倉院展を観に行くことにした。

 午前9時開館である。6時過ぎに起きて7時少し前に出発し、奈良国立博物館には8時くらいに着いたのだが、既にかなりの行列だった。


1.聖武天皇遺愛の宝物

 第一のコーナーは、聖武天皇が崩御され、その四十九日にあたる天平勝宝八歳(756)6月21日、お后の光明皇后によって東大寺大仏に献納された天皇遺愛の品々など。

01 全浅香
(ぜんせんこう)
 蘭奢待(らんじゃたい)と並んで有名な香木 長:105.5cm(以下cm省略)
重:16.65kg
HP
03 刻彫尺八
(こくちょうのしゃくはち)
 彫刻のある楽器(尺八)。会場では、この尺八を演奏したテープが流れていた。曲ではなく音階だけだが、やや高めの音だった。 長:43.7 HP
04 平螺鈿背八角鏡
(へいらでんはいのはっかくきょう)
 螺鈿飾りの鏡。人気宝物の一つ。 径:32.8 HP
08 延暦六年六月二十六日曝凉使解
(えんりゃくろくねんろくがつにじゅうろくにちばくりょうしのげ)
 延暦6年(787)に北倉の宝物を曝凉(虫干し)した時の点検記録 縦:28.0
幅:757.0
HP



2.大仏に捧げた品々

 
天平勝宝4年(752)4月9日、東大寺盧舎那仏(大仏)の開眼法要が行われたが、開眼にあたり多くの宝物が大仏に献納された。
 献納品そのものも伝わっているし、そうした献納品を載せた台や机、箱なども多く伝わっている。

09 白瑠璃碗
(はくるりのわん)
 カットグラスの碗。産地は西アジアと思われる。
 同種の切子碗は世界各地のコレクションに見られるが、出土品はガラス表面の銀化が進んでおり、当初の輝き、透明度を保っているのは伝世の本品のみ。
口径:12.0
高:8.5
HP
10 金銅八曲長坏
(こんどうのはっきょくちょうはい)
 さかずき。酒器 長径:19.4
短径:9.7
高:5.0
画像
11 紫檀木画双六局
(したんもくがのすごろくきょく)
 すごろく(バックギャモン)盤 縦:30.6
横:54.4
高:17.8
HP
12 黒柿両面厨子 附 鏁子
(くろがきのりょうめんずし ふ さす)
 前後両面に観音開きの扉をもつ、鍵つき戸棚 高:52.0
幅:65.5
奥行:34.5
HP
14 仮斑竹杖
(げはんちくのつえ)
 装飾的な杖。メダケを上下逆に使い、天然の斑竹に似せて斑文を描く「仮斑竹」の手法を用いる。
 杖頭及び石突部に水晶を嵌め込む。
長:160.5
上径:2.3
下径:2.0
 
15 山水人物鳥獣背円鏡
(さんすいじんぶつちょうじゅうはいのえんきょう)
 山水、鳥獣、舟に乗る人物などを配した白銅製の鏡 径:30.9
縁厚:0.9
HP
17 蘇芳地金銀絵箱
(すおうじきんぎんえのはこ)
 献物用の箱。サクラ材で外面を蘇芳で染め、その表面に金銀泥で童子や宝相華を描く。
 地摺(じずり。台部裏面)に「東小塔」の墨書銘あり
縦:30.3
横:21.2
高:8.6
HP
蓋表
19 紫檀箱
(したんのはこ)
 献物用の箱。シンプルなデザイン。角と合口の象牙がかっこいい。
 身と台は明治時代の後補
(蓋)
縦:41.5
横:21.5
高:3.7
 
20 粉地彩絵長方几
(ふんじさいえのちょうほうき)
 献物用の台。天板はヒノキ。
 四隅の華足が派手だが、美しい。ただし、三つは明治時代の後補。
縦:30.5
横:53.8
高:9.7
 




3.衣装と佩飾品(はいしょくひん)


 佩飾品(腰飾り)は、もともと中国唐の貴族たちの習慣だったそうである。

24 紫皮裁文珠玉飾刺繍羅帯残欠
(むらさきがわさいもんしゅぎょくかざりししゅうらのおびざんけつ)
 珠や刺繍で飾った帯。正倉院に伝わる帯の中でも最も華麗な絹製帯の一つ。
 鹿革の紫色裁文飾りがついているが、あまりに色鮮やかなので後補かと思った。しかし、図録にはそうした記載はない
現長
一片:85.0
一片:71.5
幅:7.0
HP
28 犀角魚形
(さいかくのうおがた)
 腰飾り(佩飾品:はいしょくひん)。
「えっ?これルアー?」って言ってた見学者がいた
長:3.6
幅:1.5
HP
31 水精玉
(すいしょうのたま)
 腰飾り。29の水精玉は、当初の組紐が残存しているが、本品の網袋は後補。
 袋内に8個の玉が直線状に入っている。
径:1.3〜1.4  

 


 

4.天蓋・幡(てんがい・ばん)


 天蓋(てんがい)とは仏像や高僧の頭上に捧げられる傘。
 軸を天井から吊るし、その軸に四本の腕木を差す。その腕木が雨傘などでいう「骨」の役目をする。
 天蓋は、多くは方形の布製であり、四隅にサック状の小さな革袋を備える。このサックに腕木の先を差し込み、四角い雨傘のように張っていたものと思われる。
 幡(ばん)は、仏教で用いられた縦長の旗。
 軸の上部には必ず吊金具が付いているが、下部には吊金具の付くものと付かないものがある。軸の下部に吊金具のあるものは天蓋を張り、さらにその下に幡を吊るす形式の荘厳具である。
 垂れ下がった幡の裾に信徒の頭が触れると罪障が滅すると考えられたことから、そうした幡を吊るす形式の「天蓋骨」(軸と腕木)を、入信や結縁(けちえん)を意味する灌頂(かんじょう)という語をつけ、灌頂天蓋骨と呼ぶ。
 

37 灌頂天蓋骨
(かんじょうてんがいのほね)
 布製天蓋の軸と腕木。
 軸はケヤキ製で轆轤(ロクロ)成形。腕木もケヤキ。軸・腕木とも黒漆塗り。
(軸)
総高:16.1
胴径:7.5
(腕木)
長:33.5
画像
40 方形天蓋
(ほうけいてんがい)
 布製天蓋。最も完全な姿を残す一品。
 屋蓋部は葡萄唐草文白綾で、四隅や中央を花形裁文錦を飾る。周縁には紫綾、赤地錦、臈纈(ろうけち)地などの垂飾を廻らせる。
 四隅のサックが2点残存
縦:193.0
横:205.0
(屋蓋部)
縦:150.0
横:162.0
HP
41 天蓋花形裁文
(てんがいのはながたさいもん)
 布製天蓋の中央飾り 長径:33.0 画像
42 布天蓋
(ぬのてんがい)
 麻布製のシンプルな天蓋 方:145 画像
45 金銅幡
(こんどうのばん)
 希少な、金銅製の幡 長:170
身幅:15.5
HP

 



5.供養具


 供養(くよう)とは、仏菩薩や僧侶を香(かぐわ)しい香、美しい花、灯明、食事などでもてなすことをいう。

50 金銅大合子
(こんどうのだいごうす)
香の容器 高:28.0
胴径:18.1
画像
53 白葛箱
(しらかずらのはこ)
 白葛というが、現在は白くない。アケビの蔓を編んだもの。
 蓋及び身の口縁部に「東大寺花筥」の墨書銘あり。「筥」は箱だから、花を入れる箱、すなわち法会の散華を入れる箱と考えられる。
縦:34.2
横:35.7
高:9.5
 

 
 


6.食に関する宝物

 正倉院宝庫には、皿、碗、匙、箸などの飲食器、調理具など食の器具が数多く伝わっている。

55 佐波理鋺
(さはりのわん)
 佐波理は、銅に少量の鉛、錫を加えて鋳造し、熱処理して、薄く硬質化させ、かつ黄金色に変色させたものの呼び名。
 叩くと非常によい音が出るので「響銅」と表記されることもある。
径:9.1
高:6.3
画像
56 佐波理匙
(さはりのさじ)
 大きさや柄の角度から、個人用でなく取り分け用の共用匙とみられている。 匙部長:8.2
最大幅:4.95
柄長:16.5
画像
57 貝匙
(かいのさじ)
 匙部はアコヤガイで柄は竹。10本をセットにして麻紐で束ねた形で残存。10本のうち1本は、節が多い竹の地下茎を柄としたものが含まれる。 長:35〜37  
58 包丁
(ほうちょう)
 片刃で細長い包丁。黒漆塗りの柄の小口には「吉物」の銘あり。 全長:40前後
刀長:24前後
 

 

 


7.さまざまな宝物


 正倉院宝物というと唐や奈良時代の精巧な美術工芸品というイメージがあるが、そうでない異色の品々もある。

59 椰子実
(やしのみ)
 椰子実を人面にみたてた入れ物。殻が薄くなる発芽口を切り開け口に見立て、自然隆起を鼻、子房跡の丸い部分を両目に見立て、眉や瞳を書き加えている。 直径:11.8
口径:3.0
HP
60 虹龍
(こうりゅう)
 貂(テン)のミイラ。鋸歯(きょし)を露出した頭部や、弧を描く長い首部、鉤爪を持つ足部などが龍を連想させたと思われる。
 1429年のある書物には、この龍がいるために正倉院の虫干しの際には雨が降るという記述がある。
長:23.0 HP


 



8.正倉院文書


 正倉院には、奈良時代の官立写経所の帳簿類が一括して残っている。こうした帳簿の用紙には、他から転用された文書や反故文書(ほご。書き損じなど)の裏が利用されることが多く、結果として、もともとの文書は廃棄されたが、転用された文書が残っていることにより後世に伝わった文書も多い。

62 正倉院古文書正集 第39巻
(しょうそういんこもんじょせいしゅう)
 筑前国嶋郡川辺里戸籍。日本に現存する最古の戸籍の一つ。   全面に「筑後國印」の朱印が捺されており、大宝2年(702)作成の戸籍と分かる。 縦:27.6〜27.7 画像
65 続修正倉院古文書 第19巻
(ぞくしゅうしょうそういんこもんじょ)
 経師等不参解(きょうしとうふさんげ)。
 当時の写経生の欠勤届や始末書などである。身につまされる内容のせいか、会場でも人気が高かった。
 足の病気で休むとか、母が死んだので(忌引か?)、一度病気欠勤届を出したが治癒しないので延長したいなど。中室浄人(なかむろのきよひと)名義の始末書は、同僚11人が連署で添え書きしており友情が感じられる。
 お詫びのしるしに布を納めるという贈賄まがいの文書もあった。
縦:28.6〜29.8  

 


 

9.聖語蔵の経巻(しょうごぞうのきょうかん)


 正倉院宝庫の南隣にある聖語蔵には五千巻にも及ぶ経典が収蔵されている。

67 大荘厳論 巻第四
(だいしょうごんろん)
 隋経。黄麻紙に淡墨界を引き、経文を墨書する。非常に整った楷書である。
 巻尾の黒漆塗りの軸も当初のものがそのまま残っているそうである。
縦:26.3
横:556.0
画像



 


 
 どうもお疲れ様でした。

 
  

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