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(No102) お水取り(お松明)体験記 

 2007年3月10日(土)、奈良国立博物館主催の講演会を聴いた帰り、修ニ会のお松明を観に行くことにした。


 


 

 5時までの予定の講演会であったが、少しオーバーし、外へ出たのが5時15分頃。雨がぱらつき出していた。天気予報で夜は雨50%となっていたので、やっぱ・・・と思ったが、ほんと大したことない雨だったんで、ちょっと様子だけ観に行ってみようと思った。

 と、旅行社の旗を持ったガイドに続く団体さんが目立つ。え?って感じ。12日の籠松明の日は6時頃には鐘楼広場の辺まで行列が並ぶとは聞いた。また、土日は混むとも聞いた。しかし、ちょっとナメていたのかもしれない。

 南大門を出て、途中で右に曲がる二月堂参道でついつい早足になって、いくつかの団体客を追い抜いていく私がいた。

 四月堂横の石段を上がったのはだいたい5時半頃。すでに二月堂下の芝生はおろか、正面も過ぎて石灯籠あたりまでは人でぎっしりひしめいている。開山堂、四月堂、三月堂の前にも人が張り付き座り込んでいる。

 ええ?あと1時間半か。ずっと立ってるの?やってらんねえなあ。どうしようかなあ、明日息子とサッカー観に行こうと思ってんだから、今日はこれで大人しく帰ろうかなあ。

 そんなことを考えてるうちに、やんでいた雨がまたぱらつき出した。よし!帰るか。そう思ったが、私があれこれ考えてる間にもどんどん客は押しかけていたらしく、周りも人がびっしり、振り返ってもずっと先まで人がいっぱい。ここを出て行くのも大変だなあ。そう思えたので、これも何かの縁と、待ってることにした。



 (右写真は午後6時半頃。)

 横のおばちゃん達の会話がおもしろかった。


「もう!あの木ぃ邪魔やなあ」
「ほんまやなあ。あれ、桜やろか」
「あの照明も邪魔やわ」

「で、このお水取りて、何なん?」
「無病息災なんちゃう」
「そやかて、無病息災なれんのは、あの松明の火の粉かぶった人だけなんちゃうん?こんなとこおったら、そんなもん関係あれへん」
「この時間でこれやから、あのお堂の下の芝生におる人ら、何時から待ってんねやろなあ?」
「もう、昼くらいからおるんちゃう?お弁当でも広げて」
「ご苦労さんなこっちゃなあ。しゃあけど、こない大変て知らんかったなあ」
「ほんまや。TVやったら、すぐ松明出るもんなあ」
「そらTVは、こんなとこ映さへんもん」
「もう!はよやったらええのに」
「いや、明るいうちにやったら、あかんやろ」

・・・・・・そらそうやろ。もともと暗い中で上堂する足元を照らすもんやし、勝手に繰り上げたら、7時に来た人怒るやろし。


 奈良警察からは、午後7時に始まる。場内の照明が消えるから足元やスリに気を付けろ。押したりせずにその場で見ろ。25分くらいで終わるから、静かに戻れ・・・などのアナウンスが流れる。

 
待ってれば、やがて時間は来るもので、いよいよ7時が近づいてきた。

 時々、場内がざわめくのだが、やけに「炎」が小さい。どうやら、燭台が階段を上下しているようだ。

 照明が消える。どっと場内がどよめく。期待感が高まる。

 と、いよいよお松明が階段の下に現われた。歓声とともに盛んな拍手。

「いやあ、大きいなあ」
「ほんまや、あんなん一人で持てるんやろか」
「いやあ、階段の天井燃えてしまいそうやで」
「何人かで持ってるんちゃう?」
(正面に現われたお松明)

 階段を上がりきると、正面に回りこんでくるまで、一瞬お松明が姿を消す。

 そして、正面にやって来た。

 またも、歓声と拍手。

 正面の回廊、向かって左端のところで、お松明がいったん止まる。

 欄干の所からぐ〜〜っと突き出され、大きく炎が燃え盛り、派手に火の粉が舞い散ると、またまた歓声と拍手。

 
(次のお松明が上がっていくところ)

 私がいた辺りからは、良弁杉の陰になるので、左端のところでは少し炎は隠れる。
(良弁杉越しにみえるお松明)

「あの杉も、邪魔やなあ」
「ほんまや、切ったらええのに」

・・・・・おばちゃん、頼むから良弁杉は残したってほしい。

 欄干の上に乗せられたお松明は、少し手元に引き戻され、やや間が置かれる。
 そして、正面回廊を向かって右へと運ばれる。

 欄干の上で転がしているのか、炎が回転し、火の粉が渦を巻く。

 中には、運び方が違うのか、技術の問題か、お松明が回転しないまま運ばれるケースもあった。
 おばちゃんは容赦がない。

「今の人はヘタやな」
「ほんま、ほんま。いっこも回ってへんもん」
「拍手もあらへんかったな」

 運び方は決まっているのか、それともアドリブなのか分からないが、いろいろバリエーションがあるようだった。

 正面回廊を右端まで運ぶと、そこでお松明を消さねばならない。
 最後の見せ場で、一段とスピードアップして回転させ、火の粉をブンブン撒き散らすと、またまた拍手喝さい。
 正面回廊を運ぶのは1本ずつだったが、右端の所では一度、2本を上下にいっぺんに突き出し、振り回したことがあった。

 それと、火の「粉」じゃなく、明らかにでかい火のかたまりがぼたっ!ぼたっ!と落ちていくお松明もあった。

 あんなの、頭を直撃したらえらいことになるやろな。

 
お松明の後ろでは箒をもった人が、火の粉を廊下から掃き出していく。

「ほれ、見てみ。箒で火の粉掃いたはるわ」
「そらせやわ。あんなん置いてたら、えらいことなるやん」
「あ、ちょっとみ。あこ、燃えてるんちゃう?」
「どこどこ?あら、ほんまや。燃えてるやん。いやあ、気ぃ付かへんねやろか。はよ、掃かな」
「こっからゆうても聞こえんやろしなあ。近くにおるもん、何でゆわへんねやろ」
「いや、ねき(近く)ではゆうてるんちゃう」
「あ、あっ。落ちたわ。ああ、よかった」

・・・・ほんま、よかった。



 写真は三脚置いてスローシャッターでないと、きれいなものは撮れないのはわかっているが、何となく雰囲気だけでも・・・・と思い、載せさせていただいた。

 天気も悪いし、けっこう大変だったが、確かに現場ではTV画面からは伝わらないものもあって、なかなか良い体験ができたと思う。

 どうもお疲れ様でした。

 
  

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