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アジア映画れびゅう(7) 「麻花売りの女」 
 

(ご注意)かなりネタばれです。まだ観てなくてストーリーを知りたくない人は、お気をつけください。
 
また、記憶違いなども多いでしょうが、ご容赦ください。


「麻花売りの女」

(ストーリー)
 「ねじり菓子の麻花(マーファー)だよ〜」アルモ(二「女+莫」)の売り声がひびく。

 アルモと夫とは親子ほど年が離れている。夫はもと村長だが、今は腰を痛め、家でごろごろしているので、虎子という名の息子を含め、生計はすべてアルモが支えている。

 隣家の主人シャーツ(瞎子)は、大型トラックを持ちばりばりと稼ぐやり手で、村で唯一、カラーテレビを買っている。村の子どもたちはみんなシャーツの家に押しかけるのだが、シャーツの妻は、どうも夫がアルモに好意を持っているらしいこと、自分には後継ぎの男の子が生まれないことで責められていることがあって、アルモの子どもが来るとじゃけんに扱う。
 それでも、息子が隣家に行こうとするのが勝気なアルモには口惜しくてならない。

 ある日、アルモは、シャーツのトラックで連れて行ってもらった町で、大型カラーテレビを見て、「県知事でも持っていない」このテレビを買おうと決意する。
 それから、アルモのがんばりに拍車がかかった。シャーツに紹介された町のレストランで働く。金になると知ると、ひんぱんに血も売る。夜もろくろく寝ずに麻花つくりに精を出す。
 そのかいあって、ついに念願のカラーテレビを買えるだけの金がたまったのだが・・・・・・ 

(ひとこと・・・じゃなくて、いっぱい)
 麻花とは、小麦粉を練って、うどん状にしぼり出し、ねじって油で揚げたお菓子。

 暗いうちから起き出し、大きな金だらいの中の小麦粉を足で踏んで、こねる。巧みに足の甲に乗せて、小麦粉のかたまりをひっくり返す。足先をたらいの縁に沿ってす、す、すっと動かし、こびりついたわずかな小麦粉もこそげ取る。少し粉が足りないな、と思ったら、横に置いた袋に足を突っ込んで、たらいに粉を足す。
 中華料理店でコックが中華鍋とおたまで野菜などを炒め、同じおたまで、塩やタレや片栗粉などをちょいちょいとすくっては鍋にいれ、またがら!がら!がら!と炒めるシーンをよく見るが、そんな感じ。
 小麦粉が練れたら、木の棒のくぼみに入れる。その棒の端を「てこ」の要領でぐいっと体重をかけて押し下げると、棒にあけられた穴から、うどん状になってにゅるにゅるとしぼり出される。
 暗い中で、額に汗して働いているアルモの姿は、健康的だが妙にエロチックでもある。この女優さん、中山美穂とか、浅野温子って雰囲気がある。
アルモ

 ある日、隣家のシャーツが町のレストランでぜいたくな食事をおごってくれた。満腹して村に帰ると、アルモの夫が出迎えた。
  「いつも、町まで送り迎えしてもらって、すまない。めしはまだだろう。私がつくったんだ。一緒に食べていってくれ」
 砂ぼこりが舞うような庭の所に出された粗末な木の食卓について、断るわけにもいかず、食事を詰め込む二人。普段、料理など作ったことのないアルモの夫の手料理だ。大きな丼に山盛りのご飯の上に何かおかずがかけられているが、どう見ても美味そうには思えない。しかし、夫がにこにこと「いっぱい食べてくれ。おかわりはどうだ」とすすめるのが笑える。
 アルモの夫は、ベンガルとか小沢昭一を、シャーツは、ロンドンブーツの淳をイメージしてもらいたい。

 今日も今日とて、町から村へトラックで帰る。シャーツはアルモに告白しようとして注意がおろそかになり、通行人が連れていたロバにぶつけてしまう。500元の金を握らせてその場をおさめ、なおも車を進める。 と、人気のない所でトラックは脇道に入って止まった。
  「故障だ」「どうするの」「お手上げだ」「どうなるの」「わからん」
 そして、突然アルモにがばっと抱きつこうとする。しばらく、もみあうが、突然シャーツが「ぎゃっ!」と悲鳴をあげて悶絶する。どうやら、アルモがシャーツの急所を握って反撃したようだ。
 だめだ〜、そんなしょぼんとした表情のシャーツ。すると、アルモが自分で上着を脱ぎ始める。眼を丸くするシャーツ。
 この辺、運転席と助手席の二人を真正面から撮っているので、まるで映画「家族ゲーム」のような、真横に並んだ二人のやり取りがおもしろい。そして、二人は朝帰りをする。もちろん、家に帰るのは時間をずらせたのだが。

 翌朝、町へ向かうトラックの中の二人。ハンドルを握るシャーツに自分の食べていたパンを差し出すアルモ。嬉しそうな表情で横をむいてかじるシャーツ。中国映画なので、昨夜のシーンでも具体的な描写は一切ないが、いかにも、肌合わせました〜ってとこを表現しているシーンだなと思った。

 ホテルの一室に入るアルモ。ホテルといっても、鍵はちゃちな掛け金ひとつ。その部屋にシャーツが入ってくる。見ていて、やっぱ、中国にもラブホテル(てゆうか「連れ込み宿」)があるんだなって変なところで感心してしまった。二人の仲は伸展しているようだ。
 「女房は追い出すよ。虎子を後継ぎにする」「主人はどうするの」「いいさ、二人で養おう」
 えてして、こんな時男はええかげんとゆうか、調子のいいことを言いがちなもんだが、「二人で養う」ってわけにはいかんでしょう。

 二人の仲も突然破局が。シャーツに紹介された町のレストランで働いていたアルモだったが、シャーツが金を出して自分の給料に上乗せしていたことを知ったのだ。同僚に比べて給料が高いのを不思議に思っていたが、500元ほどはシャーツの金だったのである。アルモは札束をシャーツにたたき返して、こう言った。
 「あんたに養われてるって知らなかった。500元じゃ私は買えない。ロバは買えても」

 その数日後、隣家で大騒動が持ち上がる。シャーツが町で大怪我をして家にかつぎこまれたのだ。町で女を買ったらヒモがいて殴られたと評判になる。
 翌朝、「ここの敷居またぐの何年ぶりだろ」と言って、シャーツの女房が来て、アルモに愚痴をこぼす。
 「私のどこが悪いんだい。ただ、男の子を産まなかっただけ。あの人は、帰るとすぐ、私に背を向けて高いびきなんだ」そして、アルモの手を取って、
 「今まで誤解しててごめんね。決まった女がいたんだ。あんたをダシにして町に行くなんて」
 シャーツが女を買ったのも、アルモにふられたからなのだが、「男ってそんなもんよ」と慰めたので、すっかり女房はうちとけ、「虎子が大人になったら、うちの娘のむこにちょうだい」なんて言うようになる。ブタ女と呼ばれ、たしかに憎々しげな表情の女房なのだが、なんだか可哀相になってくる。

 ラスト、ついに金がたまり、家に29インチのカラーテレビがやって来た。「テレビは卵。家は鶏だ」と言って、テレビを買うくらいなら、家を建て直そうといっていたアルモの夫だが、すっかり張り切って、「玄関から入らないなら、窓から入れよう」とか大はしゃぎ。一方、アルモは、「水がめの上に置こう」「じゃ、水がくめないじゃない」「では、ここに」「どこに寝るのよ」とそっけない。
 いわば「燃え尽き症候群」というやつか。村人みんなを呼んでのテレビお披露目式。家の中いっぱいに、学校から持ってきた椅子を並べたため寝床もなくなり、折り重なるように座り込んだまま眠りこけているアルモたち。放映が終わり、TV画面が「砂の嵐」状態になったところでエンドマークを迎える。おもしろうて、やがて哀しき映画といっていいだろう。

(資料)
1994年中国・香港作品
監督:チョウ・シアオウエン(周暁文)
主演:アルモ(二「女+莫」)→アイ・リーヤー(艾麗婭)、
    アルモの夫→カー・チーチュン(戈治均)、
    シャーツ(瞎子)→リウ・ベイチー(劉佩h)
原題:二「女+莫」 Ermo
★★★☆



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