移動メニューにジャンプ

アジア映画れびゅう(61) 「燃えよドラゴン」  

(ご注意)思い切りネタばれです。まだ観てなくてストーリーを知りたくない人は、お気をつけください。
 
また、記憶違いなども多いでしょうが、ご容赦ください。

 




(ストーリー)

 謎の男ハンは麻薬を大量に扱っているとか、女性を誘拐し麻薬中毒にして売春させているなど黒い噂が絶えなかったが、正体がつかまれていなかった。
 リーは、ハンが3年に1回開催する武道大会に潜入して情報をつかんでほしいと諜報機関から依頼される。

 ハンは少林寺の名誉を汚した者であるし、ハンのボディガード、オハラは妹の仇でもあった。

 武道大会は、ハンの住む要塞島で行われる。その島に外部の者が入れるのは、リーのように著名な武道家として大会に招待される以外にない。

 先に潜入していた女諜報員メイリンと連携して、リーの調査活動が始まった・・・・・・・。   

 
 


(あれこれ)
 
(1) 日本でのブレイク作

 ブルース・リーは73年7月20日に亡くなった。日本公開は73年12月。だから、公開時既に本人は謎の死をとげていたというのが、余計話題になったのを記憶している。
 なお、以前「確か中一の時に公開・・・・」と書いたが、それは誤りでした。

(2) ドラゴンvsデブゴン

 冒頭、長老らに見守られ、リーともう一人のデブが対決する。
 しかし、二人は大きなファイティンググローブを着け、ずいぶん斬新な格好をしている。
 デブはまったくいい所なく、一発も攻撃は当たらない。唯一の見せ場は連続バック転で攻撃をかわすとこだけ。
 最後は3回ほど続けて投げ飛ばされ、腕を固められてタップする。今の総合格闘技を見ているようだ。

 このデブはサモ・ハン・キンポー。後に「燃えよデブゴン」シリーズでブレイクする。

 勝負を終えた後、黒服の老人らが向かい合って手を合わせゲートのようにする。(よく送別会の最後なんかで、出席者同士が二人ずつ向かい合って手を合わせ門のようにし、その門の中を主賓が通っていく。で、通り過ぎる時に「おめでとう」とか声をかける演出があるが、そんな感じ。長い説明スンマセン)

 で、リーがとんぼを切って、そのゲートを飛び越えるシーンは、最初見てびっくりしたものだ。

(3) 感じろ!

 諜報局のブレイスウェイドがリーに声をかける。お茶をすすめ、話をきこうとしたが、弟子の姿を見かけたので「ちょっと失礼します」と席を立つ。

 少年にリーは「蹴ってごらん」と声をかける。少年は横蹴りをするが「今のは何だ?見世物か?気持ちの集中、気合が大事だ」

 少年は、先ほどより真剣に蹴る。「どんな気分だった?」との問いかけに「う〜ん」と上を向いた少年をピシャッ!っと叩いて有名なセリフ。「考えるな!感じ取れ」

 最後に一礼。頭を下げた少年の後頭部を上からピシャッ!「決して相手から目をそらしてはならない」

(4) 妹の仇 オハラ

 オハラは、ハンのボディガードでもある。顔に大きくナイフで切られた傷跡がある。演じるはボブ・ウォールで、前作「ドラゴンへの道」ではチャック・ノリス演じるアメリカ人空手家の弟子の役だった。

 リーは諜報局に頼まれ武道大会に出演することになったが、出発前に父が妹スー・リンの死の真相を打ち明ける。
 父が妹と町を歩いている時、オハラやハンの島の者にからまれたのだ。父はオハラの顔をナイフで切りつけ、その隙にスー・リンを逃がそうとした。しかし逃げ切れず、辱めを受けるくらいなら・・・・と妹は自ら死を選んだのであった。

 つまり、オハラは妹の仇であり(いきなり顔をナイフで切りつけた父も相当悪いのでは?と思うが)、武道大会参加は復讐戦の意味も持つのであった。

 奇しくもリーの初戦の相手はオハラ。
 オハラは分厚い板を抱えて登場し、いきなりその板を拳で真っ二つにして威嚇するが、リーは「板っきれは反撃しないからな」と意に介さない。

 最初に拳を合わせた位置から、そのまま、目にも止まらぬ速さで拳がオハラの顔面に炸裂する。

 助走をとっての横蹴りは、後ろでオハラを支えようとした連中ごと吹き飛ばす威力があった。

 まともでは勝てないと悟ったオハラは、両手にビンを持ち、かち合わせて割って、背後からリーに襲いかかった。

「オハァ〜ラァ〜〜」 制止するハンの野太い声が印象的。

 リーはさっ!とそのビンを蹴り飛ばし、倒したオハラの腹の上へジャンプして踏みつける。その時のリーの「悲しみの表情」は有名である。

(5) 好漢 ウィリアムス

 蜂の巣みたいな強烈なアフロのウィリアムスは、実に好感の持てる男である。
 演じるジム・ケリーは実際にアメリカの中量級空手チャンピオンだったそうだ。道理で、劇中パーソンズというニュージーランド人の男と試合するシーンがあったのだが、動きがいいなと思った。
 下から突き上げるように伸びていく蹴り足や、両腕の構え方なんかが何とも言えず格好いい。

 性格も庶民的かつ正義感あふれる感じ。だから、スパイ行為を疑われ(地下基地などを嗅ぎまわっていたのはリーだったから、無実の罪)早々に殺されたのは残念だった。

(6) にやけ男 ローパー

 ローパーはウィリアムスとは知り合いのようだが、冒頭、ことごとく対照的に描かれる。

ローパー ウィリアムス
白人 黒人
洒落男らしく、トランクを20個ほども持って移動 かばん一つで身軽に移動
香港の街を人力車で駆け抜ける。 興味深そうな表情で、街を歩き回る。
若い女性のこぐ渡し舟に乗る。 赤ん坊をおぶったお母ちゃんのこぐ渡し舟に乗る。船上生活者の子どもたちにも気軽に手を振ったりしている。
「旅行はファーストクラスさ」とうそぶき、ウィリアムスに「相変わらずだな」と言われる。 船上生活者たちの貧しい生活に心を痛め、ローパーに「変わってねえな」とからかわれる。
ハンの贅沢なパーティーをそれなりに楽しむ。 どの料理も、もう一つ口に合わない。
タニアに、夜伽の女性を薦められるが、タニア本人を指名し「お目が高い」と言われる。(量より質?) タニアに、夜伽の女性を薦められるが、連れてきた候補ほとんど全部を指名する。(質より量?)
アメリカ全域を任せたいと、仲間に入るよう誘われる。 リーのやったスパイ行為の犯人と間違われ、早々に殺される。

 
 ローパーは金と女に実に甘い男である。ヤバイ筋から相当多額の借金もしているようである。

 ギャンブルは大好きだが、どうもバク才はそれほどないみたいである。
 回想シーンで、賭けゴルフをやっていて、一気に賭け金のレートを吊り上げたが、いきなりミスショットしてる。
 ハンの要塞島に行く船中で中国人が始めたカマキリ相撲にも賭けたが、これまたリーに負けている。

 唯一ギャンブルセンスを感じたのは自分をネタにした賭け試合である。ウィリアムスの試合の時、ローパーは横の中国人に賭けを申し込んだ。(余談だが、この中国人、頭がはげていて、メガネをかけ、ちょびヒゲを生やしている。早い話、ちょっとたとえは古いが「カトちゃん」なのだ)
 次にローパー自身の試合。ローパーは、ウィリアムスに「あいつは絶好のカモだ。大きく俺の相手方に賭けさせろ」と言う。
 ローパーの相手を演じているのはトニー・リュウ。「ドラゴン危機一発」では社長のドラ息子を演じ、その後の作品にもずっと出演している髪の長い若い男優である。

 ローパーは、続けさまに相手にやられる。地べたに這って、情けなさそうな表情でウィリアムスの方を見やるローパーも、それに応えるウィリアムスも、はたまた横で眺めてる「カトちゃん」も、皆「だめだ、こりゃ・・・・」てな顔で首を横に振るシーンがおもしろい。

 勢い込んでカトちゃんが大きく張ってきた。ウィリアムスからのGOサインが出たとたん、一発逆転。


(7) 筋肉マン ボロ

 ヤン・スエ演じる筋肉の固まり、ボロ。1回目のリーのスパイ行為(地下基地の偵察)の翌朝、ハンは警備担当者のみせしめのため「残るべき価値があるか身をもって証明させる」と称して彼らをボロと闘わせる。まあ、大人と子ども・・・というか赤ちゃん。瞬く間に、抱え上げられ、抱きすくめるようにして全身をへし折られてしまう。

 ラスト近くで、仲間になることを拒否したローパーはボロと闘わされるのだが、あっけなくボロが負けたのは意外だった。
 いや、ボロが腕ひしぎ逆十字を固め、もう少しで腕が伸びきり逆関節が極まるとこだったのだが、ローパーが足に噛み付いて窮地を脱したのであった。
(これは、「ドラゴン怒りの鉄拳」では、主人公がロシア人武道家に腕を固められ、足に噛み付いて逃れるというシーンがあったので、アクション部分の演出はほぼ一手に引き受けていたというブルース・リーが、その「裏返し」を演出したのかもしれない)

 それからも、ローパーは急所攻撃を連発。ついにボロは、まるでうっとりと目をつぶり眠りにつくが如く、ローパーの足元に横たわったのであった。


(8) 伝説のヌンチャクさばき

 再び地下基地を偵察しようと、小さなリュックサックに降下用のロープを入れて、通気口のところにやって来たリー。
 植木鉢をどけると、そこにはコブラが潜んでいた。あわてず、ひっ捕まえて、ロープを入れていた袋に入れてしまう。
(余談だが、ブルース・リーは、撮影中このコブラに噛まれて怪我をしたそうだ。もちろん毒は抜かれていた。また、既述のオハラが割れビンで襲ってくるシーンでも怪我をしたらしい)

 監視室の前で袋からコブラを出し、頭をぺしっ!と叩いて覚醒させ、部屋の中にほうり込む。監視員はパニックになって窓ガラスを割って飛び出していったので、その隙にこの部屋の無線で諜報局のブレイスウェイドに状況を連絡。

 その後で、警護の者を4人ほど倒す。すると、いきなり背後から飛びかかってきた男がいるが、リーはあわてず、そいつの首を抱え込む。リーの顔のアップになり、その男の首の骨をへし折ったところが表情で表現される。
 これまた余談だが、この首をへし折られる男を演じているのがジャッキー・チェンである。


 さて、リーはできるだけ身軽な格好で忍び込んだため、武器は事前に用意していない。

 たまたまその場にいた蛇とか、警護の者が持っていた武器を奪って使う。長い棒で闘う。次に短い二本の棒で闘う。太鼓の乱れ撃ちのように左右から乱打され、がくがくがくっ!と痙攣するように振動して崩れ落ちる男のシーンは印象的。

 そして、さらに日本中で注目されたのが、その後でヌンチャクを持ってリーに向かっていった男。そのヌンチャクは、リーの棒でからめ取られてしまった。
 リーはいったんヌンチャクを両手でかざし、それから自分の身体の周りでまわし始める。ヒュンヒュヒュッヒュン!ヒュッヒュンヒュン! ヒュンヒュヒュッヒュン!ヒュッヒュンヒュン! 
 すごい効果音。そして、さっと脇に抱え込み、「あちゃっ!」と見得を切る。

 ヌンチャクの動きを目で追おうとして、眼球泳ぎまくりだった男が、はっ!と我に返ったようにリーに向かっていくが、あっさりとやられる。ああ〜、なんべん観てもかっこええ。 


(9) 鏡の部屋

 メイリンが、ハンが捕らえて牢に入れていた囚人たち(別に犯罪を犯したのではなく、香港の街からハンに拉致されたのである)を解放し、ハンの手下らと大乱闘になった。
 ハンは左手のアタッチメントを「熊のかぎ爪」に取り替えたが、テーブルに刺さって抜けなくなった。あわてて屋敷の中へ逃げたハンと、それを追いかけたリーが対決。
 ハンは、ナイフを並べたような「鉄の爪」に取り替えて闘うが、圧倒的劣勢。

 中学生の時、ブルース・リーに比べ、ラスボスであるハンの動きがドン臭くて迫力ないなあと感じた。リーが飛び蹴りでジャンプし、ハンもそれに呼応してジャンプするのだが、「いやだ、いやだ」と泣きながら飛んでるみたいだなと感じたことを記憶している。
 ハンを演じるシー・キエンは超ベテラン俳優で、若い頃はかなりのアクションスターだったようである。

 ハンが投げた槍は、リーがよけ、壁に深々と突き立った。その壁はどんでん返しになっており、その壁の奥にハンは逃げてしまった。
 その壁の奥は、そこらじゅう鏡貼りの部屋だった。(映画解説者の水野晴郎によると、この細かく鏡が貼りめぐらされた部屋・・・というのはブルース・リーが敬愛するオーソン・ウェルズが『上海から来た女』という映画の中で取り入れた演出だそうである)

 ハンが鏡の迷路で待ち伏せし、顔を出したリーを殴るシーンがある。なぜか、鉄の爪の根元の部分で横殴りにしているが、刃の先を頭に刺していたら、その時点でハンの勝ちだと思う。
 その後も、突き刺せばいいのに、優しく背中を袈裟懸けするシーンもあった。

 鏡で反射するから惑わされる。そう気がついたリーは、次々に鏡を叩き割っていく。びしっ!と鏡の表面がひび割れていくが、何回目かでけっこう大きく割れて鏡のガラスがぽろっと落ちてしまうシーンがあった。抜け落ちた跡には細かい英単語みたいなのが並んでいるのが見えた。つまり、鏡の下地には新聞紙が貼ってあったのである。

 ついに、鏡の部屋の真ん中でリーとハンが相対した。横蹴りが決まり、後方へ吹っ飛ぶハン。
 後ろの壁は、最初にハンが槍を突き立てた壁(の裏側)だった。つまり、鏡の部屋の内側から見ると、外から貫通した槍の穂先がむき出しになっているのだ。
 吹っ飛んだハンは、あっけなく、その槍の先に突き刺さってしまった。壁のところで昆虫採集の標本みたいにピン留めされちゃったハン。どんでん返しの壁を押して外へ出て行くリー。勢い余って、ハンが刺さった壁がクルクルクルクルクル・・・・・・・・・・・・。


(10) モブシーンはグダグダ

 これも初めてこの映画を観た中学生の時から感じていたことだが、要塞島の中庭でハンの道場の門人らが空手着を着て、正拳突きなどの型の稽古をしている。そこが、どうにもグダグダなのだ。

 前で見本を見せている男の中にも、全然腰が入っていない奴がいる。後ろで稽古している連中の中にも、やたら変な風に左右に身体を揺らしてる奴がいる。上段受けのところでは、左右の上げ方も揃っていない。

 聞くところによると、本作でこうした場面のエキストラは映画俳優志望の方々じゃなくて、香港黒社会のヤヤコシイ方々がほとんど。また、ハンの取り巻きの女性がたも風俗系というかヤヤコシイ方々がほとんどだそうである。

 さらに「相当年配の」、どうも、戦闘能力なんぞあるのかしらん?と疑われるような方々もけっこう混じっている。

 また、ボロが倒されるシーンでも大笑いしてるエキストラがいてるなんてのが、ずいぶん話題になった(「トリビアの泉」で取り上げられた)そうである。残念ながら私が観たTV放映分では確認できなかった。

 既述のとおり、最後、黒白相乱れての大乱闘(囚人服は黒っぽく、空手着を着たハンの手下らは白)だが、そこもまとまりがないというか、けっこうグダグダ。

 途中で抜けたリーが戻ってくるが、ローパーは疲労困憊のていで椅子に座っている。死闘を終えたリーが親指を立て、ローパーもそれに応えるシーンの表情はなかなか良い。

 諜報部がヘリでやってくるが、それまでにだいたいカタはついていたって感じで終るのだが、何かラストが中途半端でしまらないなあと、これまた最初の時から思っていた。 

  
 


(資料)
『燃えよドラゴン』   龍争虎闘  ENTER THE DRAGON  

1973年 アメリカ・香港作品
監督:ロバート・クローズ

 
主演 役名 俳優
リー ブルース・リー:李小龍
ローパー    ジョン・サクソン
ウィリアムス ジム・ケリー
ハン シー・キエン:石堅
タニア アーナ・カプリ
ボロ  ヤン・スエ:楊斯
オハラ ボブ・ウォール
スー・リン:リーの妹 アンジェラ・マオ・イン:茅瑛
メイ・リン:女諜報員 ベティ・チェン
冒頭でリーと戦うデブ サモ・ハン・キンポー:洪金寶
ローパーと戦う男 トニー・リュウ:劉永
地下基地で後ろから襲う男 ジャッキー・チェン:成龍


★★★☆


 まあ、これでブルース・リー関係は終わりでしょう。
 お疲れ様でした。

←前のページへ 次のページへ→
「アジア映画」メニューに戻る
トップページに戻る

inserted by FC2 system