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アジア映画れびゅう(59) 「ドラゴンへの道」  

(ご注意)思い切りネタばれです。まだ観てなくてストーリーを知りたくない人は、お気をつけください。
 
また、記憶違いなども多いでしょうが、ご容赦ください。

 




(ストーリー)

 ローマの空港に中国人青年タン・ロンが降り立った。 
 チェンという若い女性が、ローマで食堂を営む父から経営を相続したが、地元マフィアの地上げ攻勢に苦しめられている。

 タン・ロンは彼女を救うために派遣されたのだ。

 最初は頼りなさそうに見えたが拳法の腕は抜群で、チェンや店員の信頼を勝ち取っていく。

 マフィアのボスは、タン・ロンのため地上げが進まないのに業を煮やし、アメリカ人空手家ゴートを呼び寄せた。

 コロッセオを舞台に二人の対決が始まった・・・・・・・・。 

 
 


(あれこれ)
 
(1) 腹ぺこリーさん

 タン・ロンがローマの空港に降り立ち、誰かを待っているのだが、横のイタリア人(?)のおばあちゃんが彼をずっとにらみつけてる。仕方なく愛想笑いするのだが、ガンを飛ばしまくる。
 そんな中国人が珍しいか。

 腹が減ってるタン・ロンは、ソフトクリームをなめてる男の子の横で、「くれ〜!」と大口を開けるが騒がれて慌てて退散。

 不安ながらも空港の食堂へ。

 案の定、言葉が通じず「タマゴ・・・・」と中国語で言っても、イタリヤ人(?)のおばあちゃんウェイトレスは、お手上げ!って表情。
 渡されたメニューはもちろん読めない。仕方なく、値段の数字だけを見て安いものが並んでるところがあったので、上から5つ順番に指差した。
 呆れた表情をしたウェイトレスが持ってきたのはスープばかり5種類

(2) 腸の弱いリーさん

 空港に迎えに来たチェンに、いきなり「トイレはどこ?」と訊いたのでげんなりした顔のチェン。
 チェンのマンションに行った時も「トイレはどこ?」
 チェンの店「上海」に行った時も「トイレはどこだ?」と訊いていた。腸、弱いん?

 店でトイレに行った時、タン・ロンは洋式便器に座るのではなく、便座を下ろし、入り口の方に顔を向け、便座の上に乗っかって、しゃがんでいた。(しゃがむまで扉を閉めてなかったので、後から来た外国人と目が合い、慌てて閉めていた)

(3) 高ビー チェンさん

 第一作「ドラゴン危機一発」では、屋台でニコニコしてるだけだった。
 第二作「ドラゴン怒りの鉄拳」では、可憐、純朴、けなげ・・・・・って感じだった。

 しかし、本作冒頭のチェンは確かに都会的ではあるが、田舎者のタン・ロンがトイレの場所を訊いたり、乗り付けてきたオープンカーの車種を訊いたりするたび大げさに舌打ちしたり、あからさまにバカにする、実に高慢な嫌な女である。

 まあ、彼女は父が死んでレストランを相続したものの、地元のマフィアが店を売れと迫り、客が来ないよう嫌がらせを続けるのでほとほと参っていた。それで香港在住の親戚に弁護士を送ってもらうよう頼んだのに、来たのが、ただニタニタ笑ってる若い男なんで心底がっかりしていたのだろう。

(4) おのぼり リーさん

 チェンはタン・ロンに「もっとイタリア人に心を開かないとダメ。笑顔には笑顔。相手が肩を抱いてきたら、こちらも抱き返さなきゃ」と教えた。
 と、派手な化粧のイタリア人女性がこちらに微笑んでいる。チェンの教えのとおり、微笑み返す。相手のウィンクには、ウィンクを。
 女性が横に座って肩を抱いてきたので、抱き返し、彼女が立って歩くようすすめるので、ついてゆく。

 彼女の家に通され、しばらく姿を消していた彼女が上半身裸で現われたので、やっと事態に気付き、ほうほうの態で逃げ出してきたのであった。

(5) 手の平返しのチェンと店員たち

 前作で日本人に媚びる通訳をやっていた俳優が、今度はマフィアの手先をやっている。で、格好といい、しゃべり口調といい、完全におかまさんなのである。いま、TVにあふれてるオネエキャラというか。

 で、そのオネエがチンピラを連れ、店の客に「出ろ!」と脅している時、タン・ロンはトイレに入っていた。チェンには「あなたは口ばかりね」と蔑まれ、他の店員からも、隠れていた臆病者扱いされる。

 しかし、次にチンピラ共が店に来た時、ジミーはひげ面の男に一発でのされたが、タン・ロンが「ドラゴン殺法その4 飛龍の拳」と「掉尾の拳」でやっつけたのでみんなは大喜び。

(ジミーは店員の一人。マフィアの嫌がらせで客が来ず暇なので、店員たちはジミーを師匠にして空手の稽古に励む毎日だった)

 一作、二作と李昆演じる男は口数が多く、主人公にきつい言葉を浴びせる役どころだったが、本作のカンは「みんな空手を練習してるが、あれは日本人のもんだ。中国人は拳法(カンフー)をやらなきゃ。俺に教えてくれ」と頼んだり、特製の朝食を用意したり、ずっと好意的だった。
 店員たちも「拳法は実戦では役立たないと聞いたぞ」なんて言ってたが、いざタン・ロンの技を見ると、「拳法に切り替えよう」と、さっさと空手着を脱ぐ豹変ぶり。

 チェンもそう。
 初日はあれだけバカにしていたが、タン・ロンがマフィアをやっつけた翌朝にはお手製の中華料理をふるまうサービスぶりである。

(6) 銃対策

 タン・ロンはチェンに「銃は誰でも買えるの?」と訊き「お金さえ出せばね」と言われ、対策を講じる。
 木を削って、ダーツのような投げ矢をこしらえたのである。本作ではこの投げ矢が大活躍し、マフィアどもはバタバタ銃を取り落とす。

 これは、ブルース・リーが、イタリアを舞台にするなら相手が銃を持っていることを前提にしないとな、と考え演出を工夫したようである。


(7) ダブル・ヌンチャク

 タン・ロンにやられたマフィアどもは、ボスともども銃を持って店にやって来る。あいにくタン・ロンはチェンと市街観光に出ていて留守だった。

 ようやく店に現われたチェンとタン・ロン。

 タン・ロンはチンピラ10人くらいと共に店の裏へ。そこで取り出したのがダブル・ヌンチャクである。

 ただ、ダブル・ヌンチャクだとどうしても、右上写真のように脇に挟み、ばしっ!と打撃して、また戻す・・・・という単調な動きになりがちだ。

 本作でも、わざわざ途中で一本は地面に置いて、残る一本で、体の回りをビュンビュン振り回す、あの動きをしていた。(で、一本を地面に置いたからこそ、ひげ面男が藁にもすがる思いでそれを拾い上げ、見様見真似で振り回してみるが、かえって自分の頭などを強打する・・・というギャグにつながるのだが)

(8) 怪しげな日本人

 オネエの提案で、マフィアはタン・ロンを始末するのに凄腕の空手家を雇うことにした。

 ある日、マフィアの事務所で争っている二人の空手家。一人は日本人、もう一人は欧米人(←すまん、大雑把で。彼の国籍は別に言ってなかったと思う)。この欧米人を演じているのは「燃えよドラゴン」で顔に傷のある妹の仇オハラ役だったボブ・ウォールである。

 二人が争ってるところに真打のゴート登場。欧米人空手家はゴートの弟子なので、すぐに争いをやめるが、日本人はゴートに戦いを挑み、あっさり負けて「順位」が確定した。

 オネエは、タン・ロンやチェンの父の弟、つまり伯父さんのワンや、ジミー、トニーら店員を仲直りするためレストランにご招待すると言ってだまして連れ出し、日本人空手家と欧米人空手家に襲わせる。

 訓練を積んだ店員たちも健闘するが、やはり相手の方が強い。まずタン・ロンは欧米人の方を倒した。

 日本人空手家は、ジミーやトニーに「オマエワ〜 タン・ロン ガ〜?」か何か変な口調で問い質しながら闘う。で、本物のタン・ロンに股間を痛撃されグロッギーに。


(9) 豹変するおじさん

 オネエが「私はここだ。追いかけてこい」と挑発。伯父さんは、タン・ロンに「奴を逃がすな」と送り出す。

 ジミーとトニーは、タン・ロンに股間キックと股間パンチを見舞われ戦闘能力を失った日本人空手家にとどめを差すべく、二人でサンドバッグにする。
 ヘトヘトになった二人をねぎらうように背中に回った伯父さんはいきなりナイフで二人を刺す。

 トニーが背中にナイフを突き立てられながら気丈に「なぜこんなことを?」と理由を尋ねる。

 ワン伯父は、兄の店に長年尽くしてきたのに、兄貴は俺に譲ってくれなかった。俺も香港で待ってる妻子に錦を飾りたい。あの店が売れれば俺に金が入るんだと、律義に教えてくれた。しかし、唐突に刺すってのもなぁ。

(10) コロッセオの死闘

 コロッセオ内でタン・ロンとゴートが決闘する。何でも撮影許可がおりず、書割による合成撮影らしいが、そんなことは別に気にならない。

 いきなり闘いには入らない。上着を脱ぎ、ウォーミングアップに励む。肩甲骨がぼっこん!ぼっこん!飛び出る。前屈したり、足を蹴上げたり。

 正式な武術大会の試合のようだ。闘う前に一礼するか、グラブを軽く合わせるか?って思っちゃったくらい。
   最初はパワーに勝るゴートが優勢。倒れる時、ゴートの胸毛につかまって毟(むし)っちゃうシーンもあった。

 しかし、この辺まではタン・ロンが様子を見ていたと言ってよい。

 特有の軽いフットワークを使い始める。

 スローモーションで、相手の攻撃を軽くかわしていく場面が映し出される。

 出鼻をくじく膝へのローキックなどが有効にヒットし出す。

 ついにタン・ロンはゴートの右手と右足を折った。

 

 ゴートは、もはやまともに立つこともできない。しかし、立ち向かっていくことをやめようとはしない。タン・ロンは、抱きとめるように彼の体を抱え込み、そして首の骨を折った・・・・・・。

 本作で、タン・ロンが命まで奪ったのは彼が最初ではないか。

 タン・ロンは、彼の遺体に空手着を掛けてやった。これは、タン・ロンのゴートに対する敬意の象徴である。

(11) そのほか

 オネエの声がコロッセオに響くシーンはなかなか印象深かった。そのオネエは、現場にやって来たマフィアのボスに撃たれてあっさり死んでしまう。

 ボスは内通していたワン伯父も撃ち殺す。で、タン・ロンは撃ち殺せぬうちにチェンの通報を受けて現場に駆けつけた警察につかまってしまうから、結果としては悪者を一掃した感じ?

 マフィアを一掃し、タン・ロンは香港に帰る。涙ぐみそうなチェン。カンが珍しく真面目な表情で「行く手には銃とナイフ。それがタン・ロンの運命なのかもしれない」。おいおい!李昆!どうした?なぜ急にマジになる??

 本作では、マンションでの鍛錬シーンなどで見せる引き締まったブルース・リーの筋肉質の身体が印象的である。背中から見たとこなんざ、ももんがみたいな羽根でも生えてるのか?と思うほどみごとな逆三角形。

 

 


(資料)
『ドラゴンへの道』   猛龍過江 THE WAY OF THE DRAGON

1972年 香港作品
監督:ブルース・リー:李小龍

 
主演 役名 俳優
タン・ロン:唐龍 ブルース・リー[李小龍]
チェン・チンホワ:陳清華    ノラ・ミャオ[苗可秀]
ゴート:アメリカ人の空手家  チャック・ノリス
ワン叔父さん:チェンの父の弟 ウォン・チュンスン[黄宗迅]
トニー:「上海」の店員 トニー・リュウ[劉永]
カン:「上海」の店員 リー・クン[李昆]
ジミー:「上海」の店員  ユニコーン・チャン[小麒麟]
マフィアの腰ぎんちゃく ウェイ・ピンアオ[魏平澳]
日本人空手家 ウォン・インシック[黄仁植]
ゴートの弟子の空手家 ボブ・ウォール
マフィアのボス ジョン・ベン


★★★


 お疲れ様でした。

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