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アジア映画れびゅう(58) 「ドラゴン危機一発」  

(ご注意)思い切りネタばれです。まだ観てなくてストーリーを知りたくない人は、お気をつけください。
 
また、記憶違いなども多いでしょうが、ご容赦ください。

 




(ストーリー)

 ルー伯父さんに連れられ製氷工場に出稼ぎに来たチェン。 
 この工場には、チェンのいとこのシュウをはじめ、同郷の者が何人か働いていた。
 彼らは、シュウの妹のチョウメイや、弟らとともに共同生活していた。

 ある日、仕事帰りに工場長に呼ばれた仲間のウォンとチンが共同住宅に帰らなかった。

 その前にもファンという仲間が姿を消していた。 

 不審に思ったシュウが工場長に尋ねたが埒があかない。社長の屋敷まで問い質しに乗り込んだのだが・・・・・・・・・・。

 
 


(あれこれ)
 
(1) 「ドラゴン怒りの鉄拳」を先に観てしまったのだが、この作品がブルース・リーがブレイクした第一作。


(2) オープニング再論 

 
 別にこの作品に限った話ではないが、当時の香港映画はやたら低予算だそうだ。

 「ドラゴン怒りの鉄拳」のオープニングを「金、かかってなさそう!」と書いたが、本作のオープニングも、ブルース・リーの同じ飛び蹴りの写真をやたら使い回して、いかにも金かかってなさそう。 

 
(3) いきなりノラ・ミャオ

 伯父さんと一緒に船を降りたチェンが、道端の屋台で氷水を飲む。その店員がノラ・ミャオ。やっぱ、かわいい。
 シュウの聞き込みに行った時、やたらにこにこ笑ってチェンを見つめてるのだが、ちょっと不謹慎?


(4) 哀れなジェームス・ティエン

 ノラ・ミャオに地元のチンピラがからむ。そいつらをやっつけるのが、チェンのいとこのシュウ。

 メイリンという女性が泣いているので訳をきくと、夫のジーンが毎日バクチで・・・・と泣く。バクチ場に乗り込んで、ジーンに声をかけ、サイコロにイカサマがあるのを暴き、もう行くなと諭し、「金がいるだろう」と札を渡す。
 チェンが「やるなぁ」とばかり、肩をばん!と叩くほどの「漢」っぷり。

 工員の中でもリーダー格。仲間の行方不明の解決を鋭く迫り、社長宅でも「警察に言うぞ!最後に笑うのは誰か見せてやる!」と指を突き立てる

 しかし、庭で用心棒どもに襲われ、腹にナイフが突き立ってしまった。  

 何でも最初の台本では彼が主役だったが、ブルース・リーがあんまり凄いんで主役を交代したうえ、途中で殺されちゃったようである。

(5) キレるリーさん

 故郷から出てくる時、母の形見(?)の翡翠のロケットに「喧嘩はしない」と誓った。バクチ場の用心棒に襲われたシュウに加勢しようと服を脱ぎかけ、ロケットに触れ手出しをやめる。(自分の横を通り過ぎたチンピラに、そ知らぬ顔で軽いパンチと裏拳は見舞うのだが)

 その後、シュウも行方不明になったのでクインを先頭に抗議行動に出た。社長宅から用心棒の加勢が来て乱闘になる。
 その時もクインに「見てないで闘え」と言われたが、傍観者に。しかし、乱闘に巻き込まれ、ロケットが引きちぎられる。で、鎖が切れたのと同時にチェンもキレて用心棒どもを叩きのめし英雄になったのであった。

(6) 単細胞のリーさん

 チェンが腕が立つと知り、工場長は懐柔策で彼を監督に抜擢する。大喜びの仲間たち。おどけたステップでチェンを先頭に、列を組んで家まで行進してきた。
 周りも同罪だが、昇進の喜びで「兄のこと忘れちゃったの?」とチョウメイに泣かれる。

 気を取り直して、工場長や社長に対し、警察へ捜査を依頼するよう談判に行く。が、工場長に通されたのはレストラン。豪華な食事が並び、派手な格好の女性が横に座る。
 工場長と自分のグラスに洋酒を注がれるのをうらやましそうに見ているチェン。その視線に気付いた女がチェンのグラスに酒を注ぐと一気呑みしてしまう。

 へべれけになったチェン。試し割りとか余興で武芸を披露するは、女性に抱きつきに行ってすかされ、テーブルの周りで鬼ごっこするは、あげくは、知らない女性と一夜を共にする。
 翌朝目覚めて、横に全裸の女性がいるのにびっくり。慌てて二階の部屋を出て、表に出たとたん、たまたま前を通りかかったチョウメイとばったり出くわしてしまう。
 チョウメイは、チェンが出てきた店の看板を見上げて、いかがわしさに涙ぐむ。

 これではいかんと、社長宅に乗りこむが豪華な屋敷に気後れ気味。

(7) 手の平返しのクイン

 最初に「ここのブレインだ」と自己紹介したクイン。シュウの捜索の時は仲間に、お前は桟橋の向かいの屋台へ、お前は賭博場へ、お前は町の広場へ・・・と、情報を聞き出す先をテキパキと指示。
 チェンが監督に昇進した時には率先してうかれ歩いた。

 しかし工場長に招待されたと知ると「飯が食えればシュウはどうでもいいのか。見損なったよ」となじり、翌日も「イカサマ野郎め」、「今日は招待されないのか。食うと思ってなかったから、冷や飯で気の毒だな。こんな飯は食えないか」と嫌味を言いまくる。
 チェンが警察に行ってるから飯を食うのは待とうとか言ってたから、余計腹がたったんだろう。

(8) みんな凍っちまった

 製氷工場では、氷を電動ノコで切ってレールみたいなとこを滑らせて、荷積みする場所へ運ぶ。

 普通は数人がかりで運ぶが、チェンは一人でぐい!と押した。ちょいコースがずれて、レールの壁を壊して、氷が下に落ちた。
 氷の中から麻薬の袋が出てきたのを見つけたのがウォンとチン。工場長に呼ばれ、1000元のボーナスをやるから仲間に入れと誘われるが断る。
 工場長が草むらにタバコの吸殻を投げたのが合図で、用心棒に殺され、電動ノコで・・・・・・。

 一夜を共にし情が移ったか、娼家の女性がチェンに「あの社長は氷に麻薬を隠している」とばらす。

 その後、製氷工場に捜索に行ったチェンは氷の中にシュウなどの顔を次々に発見。

 しかしなあ・・・・。わざわざ氷の中に入れるより、麻薬はもっと効率的な隠し場所があると思うが。死体の隠し場所にしても、透明だから見えちゃってるしなあ。

 南国だから、ほっときゃ溶けちゃうだろうし。

(9) みんな死んじまった

 (8)で書いたとおり、仲間のウォンとチンが早々に殺される。それを探そうとしたシュウともう一人も社長宅で殺される。
 チェンにばらした女性は、後をつけてたボスの息子に殺される。

 製氷工場を捜索していたチェンのところに息子と用心棒どもが来て、チェンに返り討ちにあい殺される。(この時、チェンに殴られた男が、工場の壁に「人間の形」の穴を開けて中に叩き込まれるという「トムとジェリー」など昔のギャグ漫画のようなシーンがある)

 返り血を浴びてチェンは家に帰ってきた。気が付くと仲間はみんな殺されている。チョウメイと弟が住む離れでは、幼い弟が背中にナイフを刺されうつぶせに。別室では、クインが死んでおり、憎まれ口を叩かれた相手ではあるが、チェンは彼の体を抱き寄せる。

 川べりでしゃがみこむチェン。みんな死んだ。神様は昨夜は何をしてたんだ。社長宅に行く。「怒りの鉄拳」と同じように、チンピラ共には用がない。しかし、立ち向かってきたので、みんな殺す。
 ボスが出てきた。ナマズひげで、あんまり強そうに見えないけど、こいつがTHE BIG BOSSなんだろうなあ。
 最後、ボスがナイフを投げてきたんで蹴り返して腹にぶっ刺す。これでだいたい死んでるけど、肋骨の間に両手の指を貫通させる。これで完全に死んじゃってるけど、馬乗りになって延々と往復パンチを叩き込む。
 チョウメイだけは拉致監禁(息子が「親父好みの若い娘がいるんだ」「小鳩のような娘か?今夜連れ去って来い」なんて会話を交わしてた)されてるとこを助け出されて無事だったが、あとはみんな死んでしまった。

(10) そのほか

 最後、社長宅に殴り込みに行く時、左手に茶色い紙袋を持ち、中の乾パンみたいなお菓子をかじりながら闘う。
 私は最初、社長宅にいるシェパードとかをてなづけるために何か食べ物を持って行ってるのかと思った。何でも、タイのある製菓メーカーで急遽スポンサーになってくれて、ようやく製作費用が工面できたそうだから、そこの製品かもしれない。
 私は、「怒りの鉄拳」でファン師範が目覚める時、ビニール袋に入った乾パンの下に手紙が置いてあったから、ああ、あのお菓子か、と思ってしまった。

 また、「怒りの鉄拳」が「怪鳥音」や「ヌンチャク」のデビュー作と聞いていたのに、本作のリーもアチャ、アチャと言う。
 動きとも合ってないし、変だなと思ってたら、「ブルース・リーと言えば怪鳥音」って感じになったので、別映画から取った怪鳥音を適当にかぶせているそうだ。


 タイトルの「危機一発」だが、もちろん熟語として正しいのは危機一「髪」である。昔「007」シリーズで銃のイメージを出すため、あえて邦題が「一発」とされたことがあるが、そのノリだろう。まあ「危機一髪」にしたって内容とは何の関連もないからどうでもいいだろう。

  


(資料)
『ドラゴン危機一発』   唐山大兄 THE BIG BOSS

1971年 香港作品
監督:ロー・ウェイ:羅維

 
主演 役名 俳優
チェン:鄭潮安 ブルース・リー[李小龍]
シュウ:チェンのいとこ   ジェームス・ティエン[田俊]
チョウメイ:シュウの妹  マリア・イー[衣依]
製氷会社の社長 ハン・インチェン[韓英傑]
社長の息子 トニー・リュウ[劉永]
クイン:製氷会社で働く先輩  リー・クン[李昆]
屋台で氷水を売る女 ノラ・ミャオ[苗可秀]


★★★


 お疲れ様でした。

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