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アジア映画れびゅう(57) 「ドラゴン怒りの鉄拳」  

(ご注意)思い切りネタばれです。まだ観てなくてストーリーを知りたくない人は、お気をつけください。
 
また、記憶違いなども多いでしょうが、ご容赦ください。

 




(ストーリー)

 20世紀初頭の上海、武術家フォック・ユンカップが急死したとの報に接し、急いで戻ってきたチャン。彼は、あの頑健な師匠が急死したことが腑に落ちない。
 師匠が創立した精武館の一門(精武門)が葬礼をしているところに、日本人鈴木率いる虹口道場の柔道家二人と通訳ウーが「東亜病夫」(東洋の臆病者)という額を持参し、侮辱しに来た。

 ファン師範は耐えるように命じたが、チャンはその後、単身虹口道場に殴り込みに行き、師範代の吉田以下を叩きのめす。

 当時の上海は日本人租界となっており、日本人は絶大な権力を誇っていた。鈴木は精武館を襲わせ、警察にも圧力をかけチェンを引き渡せ。さもなくば道場を閉鎖し、お前らを逮捕するぞと迫った。 

 道場の仲間は上海を離れるようにすすめる。最後の夜、眠れず師匠の祭壇の前に居たチャンは、フォンとティンのひそひそ話を聞きつけ、彼らが師匠を毒殺したことを知る。

 チャンの復讐が始まる・・・・・・・・・・。
 


(あれこれ)
 
(1) 師匠のフォック・ユンカップ(霍元甲)は実在の武道家。

(2) ブルース・リー演じる愛弟子チャンはどこか遠くにいたのか、人力車に乗り、白い詰襟姿で道場の精武館に帰ってくるが、既に門人らは埋葬に出ていた。玄関先で少し滑るのが、あれマジだろうなと感じ、おもしろかった。
 おりしも雨。使用人に傘を借りて墓地に急ぐ。
 チャンを見送る男がタバコを吸いながら意味ありげな表情を浮かべるのが、けっこう印象的。

(3) 既に師匠の棺は墓穴におろされ、門人らが土をかぶせていた。
 チャンは傘を取り落とし、墓穴に駆け寄り「なぜ、こんな姿に!」と絶叫しながら、棺の上の土を掘り返そうとする。
 ファン師範が「チャン!落ち着け!」と声をかけるが狂乱状態はおさまらない。
 で、何をするか、というと師範はいきなり手にしていたスコップで思い切りチャンの後頭部をどやしつける。
 4人の門弟に両手両足を持たれて墓地を去るチャンだが完全に失神状態。死ぬぞ、下手したら・・・・。

(4) タイトルバックは「精」、「武」、「門」の字が順々に大写しになる・・・・・・それだけ。金かかってなさそう・・・・。バックに流れる音楽も男声と女声だが歌詞もなく「♪ バンバン バンバンバン ア〜アア〜アアアアアア〜〜 ♪」。金かかってなさそう・・・・・・。シンプルでええけどね。

(5) 師匠の死が消化できず、祭壇の前で口をぽけ〜っと開け、呆然としているチャン。そこへリーがお粥を持ってくるが、何も口にしないチャン。
 ノラ・ミャオ・・・・・めっちゃ可愛い。ブルース・リーとどことなく似ていて、何か兄妹みたいな感じもする。

(6) 通訳ウーは「日本人お二人がお相手するぞ。かかってこい」とチャンの頬をピタピタ叩いて挑発。日本人は何故かハカマを後ろ前にはいている。
 何でも、出演した日本人俳優橋本力が抗議したのだが、羅維が「この方が格好いい」と譲らなかったらしい。

 その場は師範の制止で耐えたチャンだが、ウーが持ち込んだ「東亜病夫」の額を担いで日本人の柔道場へ。
 師匠の鈴木は留守だったが、門弟らを次々に倒す。
 両腕に門弟をつかんで振り回すが、ミエミエで人形なのがかえっておもしろい。

 ヌンチャクで大暴れ。すね払いで、全員グロッキー。

 牛乳瓶の底みたいなメガネで太った吉田が師範代。赤髪の男が日本刀を手にしようとしたのを制する。それでチャンもヌンチャクを捨て、素手で勝負。吉田は多少抵抗したが、結局負ける。

(7) 上海の外灘にある公園は外国人専用で、その昔、「犬と中国人入るべからず」という看板があったという。
 入り口にインド人風の門番がおり、入ろうとするチャンを制止する。犬連れの西洋人は制止されないのだ。
 日本人がやって来て「犬の真似をしたら、俺たちの犬として入れてやるぞ」と言う。
 チャンはその日本人を叩きのめし、看板を飛び蹴りで打ち砕く。

(8) 昔のドラマ「君の名は」ではないが、やたらすれ違うチャン。

 チャンにやられ、師匠鈴木に「日本の武道家が腰抜けと思われていいのか!」とはっぱをかけられ、大挙精武館を襲う虹口道場の連中。
 さすがに橋本は後ろ前の袴を履こうとしなかったのか、鈴木が門弟を叱るシーンでは吉田らもちゃんと正しく袴を履いている。

 精武館の内庭で組み手などの練習をしていた所に虹口道場の吉田らに襲われる。師範は健闘するもののチャン不在は大きく、ほぼ全員ボコボコにされる。
 カーケイという門人は師匠の遺影の上に伏せて守るが、足蹴にされまくる。

(9) 吉田はチャンを引き渡さないと、圧力をかけ道場を閉鎖しお前らを逮捕させると脅すが、師範はチャンに、お前を引き渡せば殺される、明日、上海を離れろとすすめる。

 真夜中、師匠の祭壇の前に佇んでいるチャン。心配するリーに「君との結婚準備で戻ったのに・・・。先に休め」と声をかける。
 両手を合わせ、そこに首を曲げ顔を乗せてるチャンが可愛い。

(10) と、物音に気付く。「ウーさんが逃げろと言っている」「逃げれば、師匠を毒殺した証拠は残らない」というひそひそ声の会話が聞こえる。
 料理番のティンは腹巻みたいなのを巻いて、乳首が見えているのだが、それを見ていきなりチェンが「お前、日本人か?」
 
ティンはあっさりと認め、腹巻を少し上げて乳首を隠す。
 乳首の形とか色が日本人と中国人とは違うのか?それとも、中国人は乳首が見えるような服装はしないのか?(まあ、腹巻そのものが日本人の証拠なのだろうが、わざわざ乳首を隠す意味がわからん)
 まずティンに右拳を叩きこんで殺し「フォン、出て来い」と引っ張り出して「何故師匠を殺した!」と絶叫しながら腹に連続パンチ。

 なお、この料理番ティンは、冒頭でチャンに傘を渡した後、意味ありげな表情で見送っていた男。彼は実は虹口道場の吉田師範代の弟で、精武館の迷踪拳をスパイするため潜入していたのであった。

(11) 寝ている師範。と、枕元の目覚まし時計が鳴り、それを止める師範がけっこう可愛い。師範は眉が濃いなあ。それほど太くはないが、描いたような眉。「中川家」の弟礼二を老けさせたような顔。
 と、「師匠の死因は毒殺」と書いたチャンの手紙が。
 外の電柱には、フォンとティンの死体が吊り下げられていた。

 姿を消したチャンは、師匠の墓の側にいた。焚き火をして、何か変な動物をこんがりあぶって、かじっている。
 犬か?猫か?・・・・・・????

 
 そこへ来たのがリー。
 道場へ戻ってこれからのことはみんなで相談しましょうと誘うが、チェンは手を振って「もう決心した」と拒否する。

「君への愛は変わらない」
「信じるわ」
「それでいい」

 リーは、チャンと背中合わせに座り、「夢を語り合ったこと覚えている?あなたが道場を開き、私が家事をする。子どもをもうけて・・・・」 

 二人は見つめ合い、伝説的なキスシーン。
 最初は軽いもので、「あっ、軽く唇を合わせただけか」と思ってたら、あと、けっこうディープでした。

 しかし、彼女との会話で「ウー」というのが鈴木の通訳であると知り、復讐の相手方を知ったのであった。

(12) 料亭の座敷での宴会シーン。レコードで鳴らされてるのは「ソーラン節」。日本髪を結って着物を着た芸者風の女性がストリップをしている。
 ものすごい腰のグラインドなんで、日本女性らしさはかけらもない。見ている通訳ウーさんは大喜び。

 鈴木の横にいるのがペトロフ。彼はロシアの裏世界のドンで武道の腕も立つが、トラブルがあってロシアから逃亡し、鈴木が面倒をみることになり、今日は歓迎の宴。

 ペトロフとの日本酒呑み比べで酔いが回ったウーが途中退席しようとするが、鈴木に「帰りたければ犬の真似をして這って出て行け」と言われる。
 さすがにムッとした表情なので、これで民族意識に目覚めるかと思いきや、思い切りなりきって出て行き、料亭の前で人力車を拾う。

 この人力車夫が、チャンの変装第1号。まあ、帽子を目深にかぶっているだけなのだが。
 袋小路で梶棒を持って人力車ごと高々と差し上げ壁に叩き付ける。

(13) ウーが、フォンとティンが吊り下げられていたのと同じ電柱に吊り下げられている。「奇妙な果実」という単語を思い出す。
 鈴木は警察署長を呼びつけ、証拠があろうとなかろうとチャンを逮捕しろと脅す。

 道場を出てきた警察署長は、新聞売りの老人から一部買う。この白髪交じりの新聞売りの老人がチャンの変装第2号

(14) 虹口道場の近くの電柱に登って電話線か何かを切っている工事人。その後、その工事人が黒ぶちメガネをかけ、ニヤニヤ笑いながら「電話の修理に来ました」と道場へ。予想はつくでしょうが、これが変装第3号

 道場ではペトロフが力自慢の演武をしていた。素手で板に釘を打ち込んだり、腕に太い金棒を曲げて巻きつけたり。「見物してないで、さっさと直せ」と注意されたりしてる。

 正直言って、この第2号と第3号の意味がよくわからない。道場の間取りなどを確認するためなのか?

(15) 様々に行きかう人の流れ。
 師範ら5、6人は、チャンの行き先に心当たりがあるというリーの言葉に従い、墓地へ探しに行く。

 虹口道場では、さらに強硬手段に出ようと刀を下げた連中が大挙して、精武館に向かう。

 そしてチャンは虹口道場へやって来た。

 

チャンは直接奥の鈴木を倒そうとし、柔道場に残っていたチンピラ共は相手にする気がなかったのだが、手向かってくる。愚か者!と一喝し、叩きのめす。

 前回のチャンとの対決では刀を使わなかった吉田だが、今回は刀を手にする。チャンは刀を空中高く跳ね飛ばし・・・・・・・吉田の体を抱え込む。刀は吉田の背中に突き立った。

 ずっと鈴木の側にいた日本人の用心棒には股間へのパンチが止(とど)め。釣鐘を叩いたようなすごい効果音。

 ペトロフには腕固めを決められピンチになるが、足首に噛み付いて危機を脱する。

 鈴木が、ペトロフがやられている間、手を出さずにじっと見守っているのが妙にフェアな感じ。



 鈴木がいったん身を隠したので、猫のような足取りで障子を開けて様子を探るブルース・リーは格好いいなあ。

 ヌンチャクで鈴木の刀を横へ跳ね飛ばす。と、チャンはヌンチャクを床に叩き付け、素手と素手の勝負に切り替える。チャンは、最初の殴り込みの時もそうだったが、一対一で、相手が日本刀を持っていなければヌンチャクを使わない。

 鈴木が最後の反撃で飛びかかってきたところを迎え撃つチャンの飛び蹴り。鈴木は障子をぶち破って、庭までぶっ飛んで行く。背中を見せてぶっ飛んで行くシーンのスタントをやっていたのが若い日のジャッキー・チェンだった・・・・というのは有名な話。
 

 墓地から師範らが帰ってきたら、精武館の中は死体だらけ。虹口道場に襲われた後だった。腕組をし、考え込む師範。「耐えてきたのが間違いだった。チャンは正しい」

 一方、精武館の入り口では日本領事館が警察署長に強制捜査せよと強談判していた。ちょうどそこに帰ってきたチャン。二階の窓から館に忍び込んだのだが、惨状を見て激しく後悔する。
 階下で「恨むならチャンを恨め。奴は人を殺し、身を隠している。道場のことを考えるなら自首すべきだ」という声を耳にして、「俺はここだ!」と宣言し、階下におりる。階段の途中でリーとすれ違う。お互いに見つめあうが、ついに言葉は交わさない。
 
 警察署長に迫る。「約束してくれ。自首したら、道場を閉鎖しないと」。「中国人の名にかけて誓う」。

 門のところでは多くの外国人や警察らが銃を構えている。そして伝説のラストシーン。飛び蹴りをするストップモーション。鳴り響く銃声・・・・・。

 

(16) 日本人柔道家を演じるは橋本力。東宝映画「大魔神」に出てたそうなんだが、着ぐるみの中にいてたと言われても・・・・。

 日本人の圧力に表立って反抗はしないが、できる範囲で民族の誇り、抵抗を見せる警察署長を演じるは監督の羅維。
 何でもこの映画を撮ってる時、ブルース・リーとロー・ウェイは、かなり険悪な関係になっており、リーが監督のとこへ行って殴りつけたなんて事件があるそうだが・・・・・。

 
(17) リー・リンチェイ(ジェット・リー)もいい。ジャッキー・チェンもいい。しかし、やはりブルース・リーは別格だ。
 確か、私が中学1年の時に「燃えよドラゴン」が公開された。私はたまたま試写会が当たって、クラスメートより先に知った。
 これはすげ〜ぞ!と興奮して級友にしゃべりまくり、やがて日本中で大人気になりクラスの連中も騒ぎ出して「そうじゃろ、そうじゃろ」と思ったのを覚えている。

 私らの年代の男で、ブルース・リーの真似、たとえば、右肩、左肩をちょいとゆすって体勢をぐっと低くして、半身に構え、頭をぷるっ!と振って見得を切る。そんな格好をしてみたことのない奴がいるだろうか? 魚肉ソーセージのような棒を2本、紐でつないで、ヌンチャクをぶんぶん体の周りで回す、そんな練習をしてみたことのない奴がいるだろうか?

 まあ、むちゃくちゃな反日映画ですが、ブルース・リーの魅力は横溢してます。

 

 


(資料)
『ドラゴン怒りの鉄拳』   FIST OF FURY

1972年 香港作品
監督:ロー・ウェイ[羅維]

 
主演 役名 俳優
チャン:陳真 ブルース・リー[李小龍]
リー:チャンの恋人 麗児  ノラ・ミャオ[苗可秀]
鈴木:虹口道場主 橋本力
ファン:精武館の師範 ティエン・フォン[田豊]
カーケイ:精武館の門人 ジェームス・ティエン[田俊]
精武館の門人 マリア・イー[衣依]
精武館の門人 リー・クン[李昆]
ペトロフ:ロシア人武術家 ボブ・ベイカー
ウー:日本人に媚びる通訳  ウェイ・ピンアオ[魏平澳]
警察署長 ロー・ウェイ[羅維]


★★★☆


 お疲れ様でした。

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