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アジア映画れびゅう(44) 「雨あがる」
(ご注意)思い切りネタばれです。まだ観てなくてストーリーを知りたくない人は、お気をつけください。
また、記憶違いなども多いでしょうが、ご容赦ください。
「雨あがる」
(ストーリー)
長雨で川が渡れず、足留めをくらった多くの旅人が安宿に長逗留していた。
その中に、仕官先を求めて諸国をまわっている三沢伊兵衛、たよ夫妻がいた。
足留めが長引き、気持ちもすさんで旅人どうしがいがみ合う。そんな雰囲気を気にした伊兵衛は、酒と肴を用意した。思わぬ宴に、歌や踊りを楽しみ、すっかりうちとける旅人たち。
ある日、伊兵衛は、地元の藩の若侍たちが斬り合いをしようとしているところに、たまたま通りかかり、事もなげにいさかいを収めてしまった。その様子を見かけた藩の殿様が、伊兵衛のなみなみならぬ剣の腕を見抜き、城に招く・・・・・。
(あれこれ)
伊兵衛は、「こんなええ人、現実には、いてへんやろう?」というくらいの「ええ人」。
剣の腕はめっぽう立つのだが、争いごとは好まず、人を押しのけて・・・というところがないので、なかなか仕官もかなわない。
奥方のたよも、そんな夫を不甲斐ないと責めるでなく、穏やかに従っている。
三船史郎(三船敏郎の長男)は、せきこまんばかりの勢いで「きばって」しゃべる。わがままで強引だが純粋な若殿ぶりを表現しているのだろうが「クサイ演技」と感じる人も多いだろう。
夜鷹のおきんが、爺さんに「私の飯を盗み食いしただろう!」と食ってかかる。宿の雰囲気がギスギスする。
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ところが、伊兵衛の差し入れた酒、肴を囲んで、農民が、行商人が、旅芸人がにこにこ笑い、踊り、歌う。人間ばんざい・・・・・・そんな雰囲気。民衆を描く黒澤映画の雰囲気を感じる人もいれば、「クサイ演出」と感じる人もいるだろう。
伊兵衛は、やたら剣を抜かず、間合いを見切り、体さばきで相手の剣をかわしていく。剣を抜いても峰うちで、人の命は奪わない。
そして、相手を倒すと「大丈夫ですか」と気遣う。
殿様が自ら腕試しに立会い、あえなく庭の池に突き落とされてしまう。すっかり不機嫌になる殿様。奥方にたしなめられ、少し冷静になり、伊兵衛がこれまでよその藩で召抱えられてもしばらくすると暇を出された理由に思いが至る。
心配されると腹が立つのだ。完膚なきまでに打ち倒された上に、優しく気遣われてしまうと確かに罵倒されるよりムカツクであろう。
さて、町の剣術道場の連中に襲われた時、相手の同士討ちで首筋を斬られた男が血しぶきを噴出したシーンは、「椿三十郎」のオマージュだろうか。
いよいよ雨があがった。三々五々、旅人たちは伊兵衛たちと名残りを惜しみつつも立ち去っていった。たよは出発しようとするのだが、伊兵衛はまだ少し仕官の口に未練がある。
と、藩から使者が来た。石頭の喜兵衛(家老)が「賭け試合をするような者を剣術師範にはできぬ。これは些少ながら・・・」と金包みを出す。(妻からは固く禁じられていたのだが、貧乏な伊兵衛は、宴会の酒肴を用意するため、こっそり町道場で賭け試合をして小遣い稼ぎをしたのであった。伊兵衛が殿様に気に入られ、最近死んだ藩剣術指南番の後釜に座りそうだと知った道場主たちが、伊兵衛憎しで恥を忍んで藩に密告したのである)
ややムッとして断ろうとする伊兵衛を押しとどめ、たよが「いただきます。確かに主人は賭け試合をしました。しかし、大切なのは何をしたか、より何のためにしたか、です。あなたたちのようなでくのぼうには、お分かりにならないでしょうが」とたんかをきる。
帰った喜兵衛らからそれを聞いた殿様が「馬引け!」と大喝し、伊兵衛の後を追う。
ただ、追いついた後、殿様は伊兵衛にわびるのだろうか、それとも頭ごなしに指南番になってくれと強引に頼むのか、そして伊兵衛はどう応えるのかが気になった。
もう、たよのせりふで完結している。ぐだぐだした台詞は必要ない。もう両者を会わさないでほしいな、と思っていたら、最後、とんびが空で輪を描いているシーンで映画は終わった。ああ、よかった。
(資料)
1999年 日本作品
監督:小泉堯史(脚本:黒澤明)
主演 |
三沢伊兵衛 |
寺尾聰 |
三沢たよ |
宮崎美子 |
永井和泉守 |
三船史郎 |
奥方 |
檀ふみ |
石山喜兵衛 |
井川比佐志 |
榊原権之丞 |
吉岡秀隆 |
おきん |
原田美枝子 |
説教節爺 |
松村達雄 |
剣豪(辻月丹) |
仲代達矢 |
★★★☆
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