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アジア映画れびゅう(35)「英雄」  

(ご注意)かなりネタばれです。まだ観てなくてストーリーを知りたくない人は、お気をつけください。
 
また、記憶違いなども多いでしょうが、ご容赦ください。


「英雄」

(ストーリー)
 紀元前200年、天下統一をめざす秦王が一人の小役人と謁見することになった。彼の名は「無名」。
 秦王は、毎日他国の刺客に命を狙われているので、常に甲冑を身から離さず、誰も百歩以内に近付けない。
 しかし、無名は、特に有名な刺客、長空、残剣、飛雪の3人を始末したというのだ。
 証拠として、無名は三人の武器、槍と剣を持参した。
 その功で、無名は、秦王に三十歩の位置まで近付くことを許された。
 秦王は、長空を破った時の様子を話すよう求めた。

 雨の棋院。長空は、秦の七剣士を簡単に退けた。しかし、無名の剣は、長空の身体を貫いたのだ。

 話に感動した秦王は、さらに十歩近付くことを許し、残剣と飛雪をどうやって破ったか、話せと求めた。

 無名は話す。
 残剣と飛雪は愛し合っている仲。しかし、昔、飛雪は一度だけ長空とあやまちをおかしたことがあり、残剣はそれをいまだに嫉妬していた。
 また、残剣の侍女、如月は主人を強く慕っている。

 無名は、巧みに残剣の嫉妬心をあおった。飛雪は、愛する長空の仇を討とうとしている。

英雄

 そう思い込んだ残剣は、飛雪が覗いていると知りながら、わざと如月を抱くところを見せつけ、さらに彼女を罵った。飛雪の剣が残剣を貫く。
 その後で、無名は飛雪と決闘したが、心が千々に乱れた飛雪はもはや敵ではなかった、と。

 その功で、秦王は、さらに十歩近付くことを許した。
 その時、秦王の脳裏にあることが閃いた。
「お前は、ある人物のことを見くびっている」 
「誰のことですか」
「わしだ。わしは、残剣と飛雪の二人に会ったことがある。嫉妬に狂って心を乱すような人物ではない。貴様・・・刺客だな」

 秦王の推理は、そして、無名から語られる「真実」とは・・・・・


(あれこれ)
 話は重層構造になっており、『藪の中』『羅生門』という感じ。思いっきり単純化すると、最初の無名の話、秦王の推理、無名の告白という3重構造。

 無名が予め用意していた話というのは、上記(ストーリー)に書いたとおり。
 で、秦王は「残剣と飛雪は、そんな器の小さい人物じゃない。だまされると思ったか。わしを見くびるな」と喝破する。
 それも見抜けぬ秦王なら、無名はさっさと命を奪っていたかもしれない。
 
 真実はこうだろうと、秦王が推理した内容は以下のとおり。
 無名は10年間の血のにじむような剣術修行によって「十歩必殺」という業を会得していた。
 十歩以内の位置まで近付くことさえできれば、無名は確実に秦王の命を奪うことができる。
 長空、残剣、飛雪。刺客としての願いは共通している。三人は、無名が十歩の位置まで近付けるだけの「功」を与えるために、あえて自分の命を捧げたのだ、と。

 このどんでん返しの後で、張藝謀監督は、もう一度ひっくり返す。
「秦王は、ある人物のことを見くびっておいでだ」
「・・・誰のことだ」
「残剣です」

 長空が秦の七剣士を撃退した、まさにその場で無名が勝負を挑んだのは、長空を倒す所を秦の七剣士に見せつけ、信用させるため。それは秦王の推理のとおりであったが、無名はピンポイントで秘孔を貫き、外見上は完全に死んだようだが、致命傷に至るほんの直前でとどめていた。

 残剣と飛雪の剣を携え、秦王のもとに赴こうとする無名を、残剣が訪ねた。
「秦王を殺してはならぬ」
「暗殺を止めたいなら私を殺せ」
「お前に書を贈ろう。これが俺の心だ」
 地面に字をえがく残剣。

「何という字を書いたのだ」
「・・・・・天下。国同士が争いあう、こんな時代に終止符を打つためには、天下を統一せねばならぬ。それが出来るのは秦王だけだ、と」

 秦王は天を仰ぐ。
「何ということだ。諸国の民はわしを恨み、わが国の近臣ですら、わしを我欲のかたまりのように思っている。
わしの一番の理解者が刺客とは!
・・・・・・残剣という知己を得た以上、死んでも悔いはない」

 秦王は、自分の剣を無名に渡し、背中を向ける。
「私が大王を殺せば、更に多くの人が死ぬ」
 無名は静かに秦王の前から立ち去る。

 「秦王は死んでいない」
 そのニュースが飛雪に伝わる。無名が秦王の前に行っているのなら、秦王が死なない筈はない。秦王が死んでいないということは、残剣が無名の命を奪ったに違いない。
 そう判断した飛雪は、残剣に「剣を抜け!」と命じる。
 飛雪の剣が残剣に迫る。その剣をかわすのか、剣で受け止めるのか、反攻するのか。いや、残剣は、自らの剣を手から離した。
 飛雪の剣を身体に突き立てた残剣は、眼を閉じて「お前と二人、ただの男と女になって、お前の故郷に帰りたかった・・・・」とつぶやく。
 号泣する飛雪。ものいわぬ残剣の身体をやさしく後ろから抱きかかえる。そして、残剣に突き立った剣の柄に自分の手を添えると・・・・一気に深く深く刺し貫いた。剣が残剣の心臓も、飛雪の心臓も一つに貫き、二人をつなぐ。
 生前の誓い、「二人は心も剣も離れぬ」ということをまさしく成就したのだった。

 打ちのめされた秦王に家臣たちが迫る。「ご決断ください、大王。刺客成敗のご命令を」
 宮殿の門の扉の前で、無名は秦王を振り返り、やわらかく微笑んだ。
 
 葬送の列が進む。
 門の扉には・・・何百、何千という矢がびっしりと突き立っていた。中央の、人の形をしたわずかな空間を除いて・・・・・。


 「映像美」ということには、とにかく力をいれている。
 スローモーションの多用、色調の統一、豊富なCGなどなど。

 ま、私にとって一番印象が強かったのは、冒頭で、広大な原野にそびえる山脈の山肌に、空を飛ぶように流れていく雲の影が映るシーンだったのだが。

 あと、趙に攻め入った秦の大軍で、無数の兵士がいきなりごろ〜んと尻もちをついて座り込むシーンもおもしろかった。
 いわゆる「弩」という、足で突っ張って支えて、体全体の力をつかって引き絞るボウガンみたいな弓なのだが、その無数の兵士が体育座りみたいな格好から、弩をセットして、足先を空中に差し上げる。あれはなかなかよかったな。
 
 


 三角関係(?)にある残剣、飛雪、如月の3人を日本人でイメージしてみます。
 残剣はあまりエネルギッシュにばりばり行くタイプじゃないし、ファンには怒られるかもしれないが「ダメ男」キャラなんで、奥田瑛二でどうでしょうか。
 飛雪は、ずばり「常に眼を細めている浅野温子」。

浅野温子 奥田瑛二  と、いうことで残剣、飛雪は左写真のようになりました。

 あと、如月です。
 チャン・ツィイーは、「初恋のきた道」では、ひたすら可愛い、可愛いってキャラでしたが、この映画では、ちょっとしんどかったですね。

 なんか、やたら顔をしかめ、鼻をふくらませて・・・って印象が残りました。
篠原涼子  ちょっとタイムマシンで昔にもどっていただいて、デビュー当時の「とんがってた」頃の篠原涼子が、割とイメージ的には近いような気がします。

 左は、最近の写真ですね。ちょっと貫禄がつきすぎてます。




(資料)
2002年 中国作品
監督:張藝謀(チャン・イーモウ)
主演 無名(ウーミン):李連杰(ジェット・リー=リー・リンチェイ)
残剣(ツァンジェン):梁朝偉(トニー・レオン)
飛雪(フェイシュエ):張曼玉(マギー・チャン)
如月(ルーユエ):章子怡(チャン・ツィイー)
長空(チャンコン):甄子丹(ドニー・イェン)
秦王(チンワン):陳道明(チェン・ダオミン)

原題:英雄
  HERO

★★★☆



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