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アジア映画れびゅう(19)「鬼が来た!」 
 

(ご注意)かなりネタばれです。まだ観てなくてストーリーを知りたくない人は、お気をつけください。
 
また、記憶違いなども多いでしょうが、ご容赦ください。


「鬼が来た!」

(ストーリー)
 太平洋戦争末期、日本軍占領下の華北の寒村掛甲台村。
 ある日、未亡人ユィアルとお楽しみ中だったマー・ターサンのもとに謎の男が現れ、銃で脅かしながら二つの麻袋を置いていく。袋の中身は日本兵花屋小三郎と通訳トン・ハンチンだった。
 生きて虜囚の辱めを受けず。花屋は「殺せ!」と叫び、村人を大声で罵る。
 しかし、事を荒立てたくないトンは、「私は料理人です。中国人は一人も殺していない」などと、友好的な台詞に変えて通訳する。 

 謎の男は、引き取りに来るといった期日がきても姿を現さなかった。すきを狙っては日本軍に連絡を取ろうとする日本兵を村人は持て余す。 
鬼が来た!  二人の始末を押し付けられたマーだが、手をくだすことはできなかった。
 剣の達人と言われるリウ長老を呼んできたが、彼もあえなく失敗。
 
 村人に心を開き、恩義を感じはじめた花屋の提案で、荷車2台分の穀物と引き換えに、二人を日本軍に引き渡すことになった。

 花屋の上官酒塚は、皇軍は信義を重んずるのだとして、6台分の穀物を村に渡すことを約した。

 村では、穀物と日本軍を迎え、盛大な宴会が始まった・・・

(あれこれ)

 異文化コミュニケーション(←英会話のNOVAか)ということが、「通訳」という行為で象徴的に表されている。
 花屋はトンに「一番汚い罵り言葉を教えろ。逆上すれば俺を殺しやすくなるだろう」と命じた。
 そして、いつも通り二人の世話をしに入ってきたマーとユィアルに、荒々しく、時に憎々しげに毒づいた。だが、二人は笑って
「よせ、一度言えばわかるよ」、
「でもどうしてそんなに怒った表情なの?」

 トンが教えた言葉は
「お兄さん、お姉さん明けましておめでとうございます」、
「あなたは私のおじいさん。私はあなたの息子です」
という言葉だったのだ。
(以前、西遊記の訳本の関係で飯香幻さんに「外公」という表現を教えてもらった。→「名せりふ」参照。要するに、年齢の上下関係で、相手を敬い、自分をへりくだる表現なのだろう)
 映画字幕にせよ、外国の小説等にせよ翻訳者のバイアスを通じてしか理解できないのは分かっているのだが、あらためて、そのもどかしさ、限界を感じた。

 和やかにはじまった宴は、凄惨な虐殺の場に変じた。ユィエルを船に乗せ口説いていたマーは、炎上している村を見て呆然とする。

 その後、マーは日本兵収容所に乱入し、村人の仇をとろうとした。マーは捕えられ、「日本軍と闘うのは抗日行為だが、無抵抗の捕虜を襲うのは破壊行為だ。お前は中国人の恥だ」と国民党の将校が日本人捕虜にマーの処刑を命じる。日本刀を振りかぶったのは花屋。
 白黒映画がここだけカラーになる。
 「首の目線」で視界がごろごろと回転し、数度まぶたが閉じられ、画面が暗くなる。場面かわって、地面の上の首を正面からとらえる。と、首がニヤッと微笑む。
 そう言えば剣の達人リウ長老は、処刑した遺族から毎年礼の品々が届けられるという話であった。(彼は処刑人、つまり首斬り役人であった)
 それは彼ほどの達人に斬られると、首が九度転がり、三度まばたきし、口の端が上がったかと思うと仙境にのぼることができる、と言われているから。マーも無事昇天したのだろう。
 
(資料)
2000年中国作品
監督:チアン・ウェン(姜文)
主演:マー・ターサン:チアン・ウェン(姜文)、花屋小三郎:香川照之、
    通訳トン・ハンチェン:ユエン・ティン(袁丁)、酒塚猪吉:澤田謙也、
   ユィアル:チアン・ホンパー(姜鴻波)
    
原題:鬼子来了 DEVILS ON DOORSTEP

★★★☆



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