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アジア映画れびゅう(18)「活きる」 
 

(ご注意)かなりネタばれです。まだ観てなくてストーリーを知りたくない人は、お気をつけください。
 
また、記憶違いなども多いでしょうが、ご容赦ください。


「活きる」

(ストーリー)

 旧家のおぼっちゃん冨貴は、賭け事好きの道楽者。身重の妻家珍は、愛想をつかして娘を連れ実家に帰ってしまう。
 博打の借金のかたで龍二という男に家屋敷から家財すべてを巻き上げられてしまう。怒りのあまり父親は急死し、母親は寝込んでしまった。途方にくれる富貴だったが、同情した家珍が子供二人を連れて帰ってきてくれた。
 富貴は生活のため影絵芝居の巡業に出ていたが、国民党と共産党の内戦に巻き込まれた。戦場から命からがら帰ってくると、娘の鳳霞は病気で口がきけなくなっていた。

 貧しくても親子四人の楽しい暮らし。息子の有慶は姉思いの腕白坊主だったが、新任の区長の車にひかれ死んでしまう。弔問に来た区長とは、巡業仲間であり共に戦場を逃げ惑った春生だった。

 時は流れる。鳳霞は、優しい二喜という工員と結婚した。病院に産声が響く。3600グラムの元気な男の子が無事生まれたのだが・・・

(あれこれ)

 人生万事塞翁が馬。そんな言葉を連想させる。
活きる  富貴は借金で一文無しになったが、妻子が帰ってきてくれた。
 龍二に商売の元手を借りるべく頭を下げたが、断られる。しかし、代わりにもらった影絵芝居の道具で、生計を立てることができたし、戦争に巻き込まれても、慰問団のような立場で生き延びることができた。

 しかも、共産党によって、龍二は大きな家屋敷を持つ地主階級と認定され処刑されてしまう。

 もし、あのまま、あの屋敷に住んでいたら・・・

 有慶が事故にあった時の家珍の言葉は痛烈だ。墓前で「有慶、ごめんなさい。あなたが学校に行かされるのを止めることができなかった」と嘆く。
 家珍が「有慶は睡眠不足だから、このまま寝かせておきましょう」と言うのに、「新任の区長が来るのに、挨拶しといた方がいい」と、ぐずる有慶を無理やり起こし、学校までおんぶして連れて行ったのは他ならぬ富貴なのだ。
 もし、あの時学校に連れて行かなかったら・・・
 
 鳳霞が産気づいた病院では、文革の影響でベテラン医師は保守反動と追放され、子供のような女性紅衛兵しかいなかった。
 不安を感じた家珍らだったが、母子共に健康と言われ、安堵のため息をつく。しかし、次の瞬間、分娩室はパニック状態になっていた。鳳霞の出血が止まらないのだ。
 「どうしたらいいのかわからない。経験がないの」と両手を血まみれにしてヒステリックに泣き叫ぶ紅衛兵たち。
 念のため、主任医師をこっそり呼んでおいたのだが、肝心な時彼は、目を白黒させて倒れていた。監禁され、三日間も飲まず食わずと聞いて同情した富貴が、饅頭をこっそり渡したのだが、それを貪り食って咽喉をつまらせたのだ。
 湯を飲ませ、いったん意識を戻した医師だったが、鳳霞がけいれんし、どんどん血の気を失い蒼ざめていっている時、彼は再び、意識を失っていた。

 鳳霞の墓参りのたびに、富貴は悔やむ。あの時饅頭を7個も買わなければ・・・(富貴は、「あの時、湯を飲ませたのも良くなかった。饅頭(マントウ)は、湯を飲むと7倍にふくれるらしい。7個が7倍になったら、腹も破裂するわな」とも言っていた。しかし、二喜は「先生は、今でも饅頭は食べません」と言っていたから、何とか生命は取りとめたらしい。)

 文革時期を描いた映画では、主人公が告発され、ひどい目にあうのが通例だが、これでは春生や町長(春霞と二喜の仲人)は走資派と告発されるものの、富貴自身は土地の富豪であり、国民党に従軍していた過去を取り沙汰されることはなかった。
 それは良いのだが、子供の扱いがちょっと・・・。
 口のきけない姉をパチンコでねらう悪ガキたちに飛びかかっていく有慶。多勢に無勢でその場はやられたが、人民食堂で主犯の子供に、トンガラシをいやほどぶち込んだ麺をぶっかける。
 ああ、腕白だけどいい子だなあと思わせて、すぐ、レンガ塀の下敷きになって血まみれになって担ぎ込まれる。

 鳳霞もそう。二喜は一見ぶっきらぼうだが、工員仲間の人望も厚い、とても優しい男だった。
 二喜と鳳霞が酒と料理を持参のうえ妊娠を報告に来た時、富貴が二喜と、顔を見合わせカチンと杯を鳴らした。えもいえない良い表情で。
 それを見てしみじみと、鳳霞は幸せな結婚ができて良かったなあと思ったら、すぐに分娩室で血まみれになって死ぬ。
 こんなにアップダウンさせなくても、と思う。

 最後、義理の息子の二喜と孫のマントウ(病院で家珍が、「人間じゃないような幼名をつけると閻魔様の台帳に載らないから長生きするのよ。マントウとか」と言っていたが、実際につけたらしい。そう言えば、富貴のギャンブルに嫌気がさして実家で有慶を出産した時も、名前は「不賭」とつけたと冗談を言っていた。)に囲まれてる家珍を見て、まずまず幸せなのかな、二喜が実の息子以上に優しい奴で良かったなと思った。
 富貴(この人、サッカー日本代表の戸田に似てます)に対しては、まあこいつは昔から目をキョトキョトさせているだけで、あんまり深くは考えてないんだろうなあと感じただけなのだが。 

(資料)
1994年中国=香港作品
監督:チャン・イーモウ(張藝謀)
出演:富貴(フークイ):グォ・ヨウ(葛優)、家珍(チアチェン):コン・リー(鞏利)、
    鳳霞(フォンシア):十代チュアン・ルー(張璐)、
    有慶(ヨウチン):ドンフェイ(董飛)、二喜(アルシー):ジアンウン(姜武)

原題:活着

★★★



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