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仏画(29)平成17年度美術史ゼミナール  番外編「釈迦八相」場面別解説 「降魔成道」編
                          〜 悪魔が来たりて、悟りを開く 〜


1 はじめに

 釈迦八相とは前回でも説明したとおり、釈尊の生涯における主要な事蹟を挙げたものであるが、この八場面とする、といった明確な基準が定められているものではない。

  ここでは、主な場面について、大まかな特徴をあげていきたい・・・・・のいよいよ10回目。


2−1 降魔(ごうま)

 降魔とは、悪魔の大軍が釈尊の悟りを邪魔しようとする場面である。
 多いのは端座する釈尊の上空にたくさんの悪魔、怪物などがたむろしている絵柄。

絵因果経 京都 醍醐寺本 <参考画像(29)−1>
絵因果経 京都 醍醐寺本 奈良時代(8世紀)

 例によって、絵因果経はわかりやすい。

 さて、釈迦八相図(東林寺HP)   苦行・端座   での上から四つ目の画像、そして  

釈迦八相図(海圓寺HP)  降魔成道  での釈尊の共通点はおわかりだろうか。もっと言うと、手の形の共通点は?

 正解は、いずれも右手を下に向けている点。  

 これら魔族を釈尊が退散させた時に示した印相が降魔触地(ごうまそくち)の印である。座禅を組んで右手の指先を地面に触れさせているのである。上のHPでは、も一つ明快ではないが、右手の人差し指だけをまっすぐ下におろして地面に触れさしているものもある。

釈迦八相図 静岡 MOA美術館本 釈迦八相図 滋賀 常楽寺本

左上
<参考画像(29)−2>
釈迦八相図 静岡 MOA美術館本 鎌倉時代(13世紀)

右上
<参考画像(29)−3>
釈迦八相図 滋賀 常楽寺本 鎌倉時代(14世紀)

 

釈迦八相図 広島 持光寺本 <参考画像(29)−4>
釈迦八相図 広島 持光寺本 鎌倉時代(14世紀)

 図録『特別展 ブッダ釈尊』の解説では、「釈尊を誘惑せんとする三魔女や折伏されてもとの老婆になって退散する魔女の姿がみえる」とある。

 釈尊は後光の差している人で、四角で囲んだところ。

 三魔女はどこだろう。画面左の3人の女性だろうか。
 老婆は、横長に囲った部分である。

 釈尊の上空には、矢を射かけようとしている悪魔などがいっぱいいる。

 さて、上掲参考画像(29)−4は持光寺本の第五幅なのだが、常楽寺本第七幅(下図)におもしろいものが描かれている。 

釈迦八相図 滋賀 常楽寺本 <参考画像(29)−5>
釈迦八相図 滋賀 常楽寺本 鎌倉時代(14世紀)

 この第七幅には、初転法輪三道宝階を描いているようなのだが、どうも、下方の「老婆」が気になって仕方ないのである。

 どこにも解説がないので確信は持てないのだが、これは上掲持光寺本と同じ場面を描いているような気がしてならない。

 なお、三道宝階は、次回にも解説する予定だが、簡単に言うと、悟りを開いた釈尊は、天上界へ説法に行った。生母摩耶夫人は、亡くなった後、三十三天となって、天上界にのぼっていたのである。

 天上界から現世に釈尊が戻られるときに現われたのが、この階段(「天国への階段」じゃなくて、「天国からの階段」と言うべきか)である。




 

2−2 成道(じょうどう。悟りを開く)

釈迦八相図(東林寺HP)  成道

 もう成道の瞬間といったら、上をクリックして一番上の画像に尽きるだろう。

 


 

 それでは、皆さんごきげんよう♪ 


 

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