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仏画(28)平成17年度美術史ゼミナール  番外編「釈迦八相」場面別解説 「沐浴」編
                          〜♪ いい湯っだなぁ アハハン ♪〜


1 はじめに

 釈迦八相とは前回でも説明したとおり、釈尊の生涯における主要な事蹟を挙げたものであるが、この八場面とする、といった明確な基準が定められているものではない。

  ここでは、主な場面について、大まかな特徴をあげていきたい・・・・・の9回目。


2−1 尼連禅河沐浴

 太子は身体を苦しめても悟りは得られないとの結論に達し、苦行をやめた。
 そして近くの川(尼連禅河。ナイランジャナー川)できれいに体を清め(「尼連禅河沐浴」)、近所の村娘が差し出したミルク粥(「乳縻」=にゅうび)を口にした。(「牧女献縻」
 これを見て、太子とともに苦行をしていた5人の比丘は、釈尊は堕落したとして鹿野苑に去った。

絵因果経 出光美術館本 <参考画像(28)−1>
絵因果経 出光美術館本
奈良時代(8世紀)

 1は、川のほとりでふんどし(?)一丁になっている太子。

 川のほとりの太子(2)に、供養するため飛来した菩薩又は天(3)。

 上掲2、3と似た場面をもう一つ。

絵因果経 京都 醍醐寺本 <参考画像(28)−2>
絵因果経 京都 醍醐寺本 奈良時代(8世紀)

 尼連禅河のほとりで端座する太子のもとに飛来した二人の天は、いずれも「鉢」のようなものを持っている。
 おそらく、絶食していた太子の身体を養う食べ物を持ってきたのであろう。

 


 続いて、こうした場面のサイドストーリーを。

絵因果経断簡  京都 個人蔵 <参考画像(28)−3>
絵因果経断簡
  京都 個人蔵
鎌倉時代(13世紀)

 太子が尼連禅河の沐浴を終え、天人が献じる乳縻を食して気力を回復したところ、憍陳如ら五比丘がこれをみて太子が堕落したと思うところなどを描く。
(図録『奈良国立博物館 特別展 ブッダ釈尊』

 この五比丘は、太子とともに苦行林で修行をしていた仲間であるようだ。彼らは、苦行で身体を痛めつければ痛めつけるほど悟りに近付く。それが昂じて仮に命を失ってもむしろ祝福すべきこと、と考えていたのだろう。
 そうすると、苦行をやめて河でひとっ風呂浴びて身体をさっぱりとさせ、滋養のあるものを食べている太子の姿は堕落以外のなにものでもない。
 上の絵を観ていると「見ろよ、太子のやつの気持ちよさそうな顔」「ケツ割った(つらい修行を途中で投げ出すこと)な。けっ、もう少し骨があるかと思ったが」「しょせんはボンボン育ちだし」「しかし、うまそうなもの食ってやがるなあ」「おい!よだれ出てるぞ」なんて会話が聞こえてきそうだ。

(逸話その1)
 太子にミルク粥を供養した村娘の名がスジャータ。いまや、コーヒーの友として有名。

 画像としては、

釈迦八相図(東林寺HP)   苦行・端座      の上から三つ目の画像、又は

釈迦八相図(海圓寺HP)   修行    の右側の画像もご参照いただきたい。



(逸話その2)
 後ほども再登場する五比丘だが、単に苦行仲間、苦行林での先輩だったのか、父王が太子を後を追わせた(又は護衛のため送り込んだ)、そして、太子を説得して連れ帰ることはできず、逆にミイラ取りがミイラということで、一緒に修行を始めてしまった5人の従者なのか、いろいろ説があるようだ。


2−2 吉祥献草

 さて、苦行をやめた太子が菩提樹の下で瞑想にふけろうとした時、ある農民が、吉祥草と呼ばれる草の束を、いわば座禅の時の座布団として献じたという。これが「吉祥草座」である。

 図録の解説では「吉祥献草」という表記も多い。これは天人が献じたとされている。農民が献じた「吉祥草座」と天人が献じた「吉祥献草」は同じものなのだろうか。
 山中修行時代に、浄居天が姿を変えた猟師が、釈尊と衣を交換した(つまり、釈尊に修行に適した衣服を与えたということだろう)という場面もある。よって、この農民も天人が姿を変えたと考えるべきなのかもしれない。

絵因果経 出光美術館本
<参考画像(28)−4>
絵因果経 出光美術館本
奈良時代(8世紀)


<参考画像(28)−5>
釈迦八相図 静岡 MOA美術館本
鎌倉時代(13世紀)
釈迦八相図 静岡 MOA美術館本

 左上の画像の説明で図録『特別展 仏教説話の美術』(奈良国立博物館)では「畢波羅樹の下で瞑想すると帝釈天が吉祥草を献ずる」とある。となると、柿色の服を着た人が帝釈天ということになるので、やはり普通の人に姿を変えているとみるべきなのだろう。

 なお、ピッパラ樹という樹は、その樹の下で釈尊が悟りを得たということで以後、菩提樹と呼ばれるようになったらしい。


 

 それでは、皆さんごきげんよう♪ 


 

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