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仏画(20)平成17年度美術史ゼミナール  番外編「釈迦八相」場面別解説 「下天托胎」編
                           〜象さんは雲に乗って〜


1 はじめに

 釈迦八相とは前回でも説明したとおり、釈尊の生涯における主要な事蹟を挙げたものであるが、この八場面とする、といった明確な基準が定められているものではない。

  ここでは、主な場面について、大まかな特徴をあげていきたい。いわゆる仏伝図、釈迦八相図、八相涅槃図といった絵画において、この場面は画面のどの部分に描くといった明確な基準もない。よって、そうした絵画を鑑賞する時、大体の図柄を覚えていたら「ああ、ここは、この場面のことが描かれているのだな」とわかって楽しいと思うのだ。

 ただし、いつものことながら、こうした内容は私が図録の解説などからつなぎ合わせて自分なりに思い込んでいる内容にすぎず、いろいろ誤解もあると思われるので、お気づきの方はご指摘いただけると幸いである。また、画像について著作権の問題は承知しているのだが、実例をあげないとなかなか理解し難いので、説明用資料として加工した部分的な画像をあげさせていただきたい。

 さて、場面の説明に入る前に、いくつかの基本用語を整理しておきたい。

 釈尊とは「釈」迦牟尼世「尊」の略である。「釈迦牟尼」(しゃかむに)とは「釈迦族出身の聖者」という意味で、「世尊」とは悟りを得た(仏陀となった)者に対する尊称である。日本では親しみをこめて「お釈迦さま」と呼んだりする。
 釈尊は、現世ではカピラ(迦毘羅)城を治めていたシャカ族の浄飯王(じょうぼんおう。シュッドーダナー)と、その妃摩耶夫人(まやぶにん。マーヤ)の間に生まれた。俗名(本名)は、ゴーダマ・シッダールタ(瞿曇悉達多)で、以後、幼少の頃は(シッダールタ)太子と表記することとする。
 仏画ゼミの最初でも、いわゆる「仏さま」は悟りを得た「仏陀」のことであり、悟りを得るために修行中の段階は「菩薩」であると書いた。よって、いかに仏教の始祖「釈尊」といえど、「成道」前の段階では「菩薩」なのであるが、ややこしいので「釈尊」と表記しておく。


2−1 下天托胎

 下天托胎(げてんたくたい)、兜率天(とそつてん)とか降兜率(こうとそつ)、入胎(にったい)などと呼ばれることもある。

 要するに釈尊の前身が兜率天より降ってきて、摩耶夫人の胎内に入り込むという場面である。
 兜率天とは、弥勒菩薩の浄土であり、兜率天の浄幢菩薩(じょうどうぼさつ)が摩耶夫人(まやぶにん)の胎内に入る・・・と表現されることもある。(『仏画の観賞』P187)

 入り込む時には六牙の白象の姿となっていたようである。

 よって、画面で屋敷のところに雲などに乗った白象が飛来しているさまが描かれることが多い。<参考画像(20)−1>、<参考画像(20)−2>

釈迦八相図 滋賀 常楽寺本
<参考画像(20)−1>
釈迦八相図
滋賀 常楽寺本

鎌倉時代(14世紀)
釈迦八相図 静岡 MOA美術館本

 右上 <参考画像(20)−2> 釈迦八相図 静岡 MOA美術館本 鎌倉時代(13世紀)

 象だけでなく、その背中に誰かが乗っているものも多い。<参考画像(20)−3の2>や<参考画像(20)−4>など。

 これは、上で書いた浄幢菩薩なのであろうか。
 まあ、生まれ変わる釈尊の前身と考えてもいいのだろうか。

釈迦八相図 広島 持光寺本
<参考画像(20)−3>
釈迦八相図 広島 持光寺本 鎌倉時代(14世紀)

1 兜率天

2 象に乗った菩薩  

 

 左下
<参考画像(20)−4>
釈迦八相成道図 三重 大福田寺本 鎌倉時代(13世紀)

釈迦八相成道図 三重 大福田寺本  次のサイトも参考にしていただきたい。

 釈迦八相図
(海圓寺HP) 降兜率

 


 ご丁寧に、象などの乗った雲のはしっこが女性の体近くまで伸びている絵もある。<参考画像(20)−5その2>
 摩耶夫人がある日、白象の夢をみて、右脇に釈尊が宿ったといわれているから、この絵はその辺をより詳しく描いたものなのだろう。

釈迦八相図 鹿児島 個人蔵 <参考画像(20)−5>
釈迦八相図 鹿児島 個人蔵 明時代(16世紀)

1 象に乗った菩薩

2 摩耶夫人のもとに「夢」が伸びている

3 次の(21)でまた解説するが、右腕を上げている摩耶夫人と、誕生後の太子が同時に描かれている点は珍しいと思う。
 ところで、この太子(ロズウェルの宇宙人みたいだけど)は左手を上げているように見えるので、少し疑問。ひょっとして背中が見えていて右手を上げているのか?とも考えられるが足の格好を見るとそうも思えない。

 なお、本図の右上は「在天菩薩」といって、兜率天に菩薩がいらっしゃるところ。 

 既出ですが、下記のサイトもご参考に。

釈迦八相図(海圓寺HP) 入胎

八相涅槃図 重文 鎌倉 福井 劒神社本 


 

 それでは、皆さんごきげんよう♪ 


 

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