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仏画(19)平成17年度美術史ゼミナール  番外編「釈迦八相」について

1 はじめに

 館蔵品の「仏伝図」の各場面について、研究してみたい。


2 絵因果経・釈迦八相・八相涅槃図とは

(1) 絵因果経
 「『過去現在因果経』四巻に説かれる仏伝を下段に書き、上段に経文に見合う仏伝図を描いた経典」
(『仏画』P214)

(2) 釈迦八相
 「必ずしも八場面に限るわけではなく、入胎(兜率天(とそつてん)の浄幢(じょうどう)菩薩、摩耶夫人(まやぶにん)の胎内に入る)・誕生(摩耶夫人、ルンビニ園で右腋より悉多太子(しっだたいし)を生む)・試芸(太子、従兄弟の提婆達多(だいばだった)と力競べをして勝つ)・四門出遊(太子、城の四方の門から出て、老人・病人・死人・バラモンにあい、世の無常を感じる)・遊楽(父王、太子を結婚させ、遊楽を勧める)・出家踰城(しゅっけゆじょう。太子、愛馬カンタカに乗って城を出て出家する)・降魔(ごうま。もろもろの誘惑をしりぞけ、悪魔を降伏させる)・成道(じょうどう。悟りを開く)・初転法輪(しょてんぽうりん。成道後初めて説法する)・涅槃(死)・分舎利(遺骨を八ヵ国に分ける)等が描かれる例が多い」(『仏画』P187)

 「釈迦八相とは下天托胎誕生修学出家苦行降魔成道初転法輪涅槃の八つの釈尊の主要な事蹟をいうが、べつに取り決めがある訳でなく〜釈尊の四大事 誕生出家成道初転法輪涅槃はかならず組み入れられており〜」
(図録『奈良国立博物館 特別展 ブッダ釈尊』P355)


(3) 八相涅槃図
 涅槃図のまわりに釈迦八相の事蹟を配置した図をいう。形式には剣神社本のように下天托胎から初転法輪までを並べるもの、
 入涅槃の釈迦を中心に、まわりに涅槃の前後の事蹟 純陀供饌臨終遺誡再生説法金棺不動金棺拘尸城旋回迦葉接足荼毘分舎利などを描くもの(がある)」
(図録『奈良国立博物館 特別展 ブッダ釈尊』P356)



3 実例から(画像付き)

絵因果経 国宝 天平 京都 上品蓮台寺本

「試芸より始まって出家を決意するまでの分を描いた巻ニ上にあたり、図版は従兄弟の提婆達多との試芸の一場面で、提婆達多が象を打ち倒すところ」(『仏画』P215)

 京都国博HPにて(試芸、四門出遊)。 

  絵因果経断簡 (図録『奈良国立博物館 特別展 ブッダ釈尊』図版P159 解説P333)

  絵因果経 巻第二上 国宝 奈良(8世紀) 京都 上品蓮台寺本
   釈迦がカピラ城のシッタ太子として生まれ、美しい妃を迎えても楽しまず、やがて世間の無常を感じ  て出家するという諸図を描いている
  (図録『奈良国立博物館 特別展 仏教説話の美術』P38) 

絵因果経 重文 天平 奈良国立博物館本

 「四門出遊」の最末尾の場面すなわち、太子が北門を出て比丘と問答し、比丘は終わって空にのぼって去るという場面から、太子が馬に乗り帰城するところ、優陀夷が王に太子が比丘と会ったことを告げる場面、妃と太子と伎女の奏楽歌舞を見る場面、ついに太子が王に出家修道の許しを乞う場面が表される。 (※注 奈良国博HP解説文より)

  絵因果経断簡 
   「上品蓮台寺本の巻尾から逸脱した断簡一巻〜太子が城の北門を出て錫杖を執る比丘と会い、出  家の想いを固めるところ。父王に出家を願い出るところ。ヤショダラ妃や侍女を侍らせて太子の発心  を翻さんとするところなど」
  (図録『奈良国立博物館 特別展 ブッダ釈尊』図版P27、P159 解説P333)

  絵因果経 巻第二上 重文 奈良(8世紀) 京都 奈良国立博物館本
   太子が城の北門を出て浄居天の化身である錫杖を執る比丘と出会い、出家の志を固めるところ、  父王はヤソダラ妃や侍女を侍らせて太子の発心を翻さんとするところなどが描かれている。
  (図録『奈良国立博物館 特別展 仏教説話の美術』P38) 

絵過去現在因果経 国宝 鎌倉 根津美術館本

 鎌倉時代四巻本(各巻上下)に属し、巻二下に当たる。出家・剃髪・別離・苦行林一宿・挙宮悲泣の段である。 (※注 根津美術館HP解説文より)

過去現在絵因果経断簡 重文 奈良 MOA美術館本

 本断簡は、第四巻の前半部分の八十四行分に当り、釈迦が大迦葉を説度する過程が述べられている。 (※注 同館HP解説文より)

釈迦八相図 重文 鎌倉 根津美術館本

 出家した太子が落飾すると帝釈天が髪を持ち去り(左上)、馬丁は馬を引いて帰路につく(その下)、浄居天が漁師と化して出現した太子と衣装を替えて去る(右寄下方)、跋跏仙人との対談(その上)などのほか、苦行を捨てて水浴すると天人がこれを援けるところ(左辺)、父帝が太子のために建てた楼閣などが見える。 (※注 同館HP解説文より)

  釈迦八相図 重文 鎌倉 根津美術館本
   「剃髪・車匿(しゃのく。太子の御者)訣別、浄居天漁師となって化来、訪仙、尼連禅河沐浴(にれん  ぜんがもくよく)」 (以上『仏画』P215)

  釈迦八相図 重文 鎌倉 根津美術館本
   「剃髪、車匿訣別、浄居天の漁師と衣交換、山中訪仙、尼連禅河沐浴
  (図録『奈良国立博物館 特別展 ブッダ釈尊』図版P220、解説P359)

釈迦八相図(東林寺HP) 降誕  観相・出城  苦行・端座  成道・初転法輪  涅槃   

釈迦八相図(海圓寺HP) 降兜率  入胎  出胎(降誕)  出家  修行  降魔成道  初転法輪

 入涅槃   

釈迦誕生図 本岳寺本  

八相涅槃図 重文 鎌倉 福井 劒神社本

 大画面の仏涅槃図の左右両側に界線を引き、八相を描く。
 向かって右側下から上に、入胎、誕生、試芸、四門出遊
 向かって左側下から上に、出家踰城、吉祥献草、降魔、初転法輪(以上『仏画』P217)

  八相涅槃図 重文 鎌倉 福井 劒神社本

   向かって右側下から上に、下天托胎から四門出遊。
   向かって左側下から上に、出家踰城から初転法輪まで。
   (図録『奈良国立博物館 特別展 ブッダ釈尊』図版P231、解説P361)

    ※ 画像は、織田町HPにて。

八相涅槃図 重文 鎌倉(13世紀) 広島 耕三寺本 

    上左隅は純陀供饌、上部中央は最後説法、上右隅は一僧一女対座、右中ほどやや下が「金棺不   動」、その上が「金棺拘尸城旋回」、左中ほどが荼毘、「迦葉接足」と龍王灌水を併せ図す。その下   が「分舎利」が描かれている。

   (図録『奈良国立博物館 特別展 仏教説話の美術』P67)

   ※ 画像は、広島県HPにて。

八相涅槃図 東京 瑞林寺本

   ※ 画像は、台東区HPにて。

八相涅槃図 大阪 法安寺本

   ※ 画像は、寝屋川市HPにて。


4 実例その2(絵因果経)

絵因果経 国宝 奈良(8世紀) 京都 醍醐寺本

 出家した太子を父王や大臣らが追尋するところ、アララ・カランニ仙人と問答するところ、ボドガヤの尼連禅河の岸辺で6年苦行するところ、魔王や三魔女が太子の成道を妨害するところなど
(図録『奈良国立博物館 特別展 ブッダ釈尊』図版P160、解説P334)

  絵因果経 巻第三上 国宝 奈良(8世紀) 京都 醍醐寺本
    山中修行の太子を父王や大臣が追尋、二仙人問答、尼連禅河苦行、村娘スジャータから乳縻を  受けるところ、魔王・三魔女の妨害など。 
  (図録『奈良国立博物館 特別展 仏教説話の美術』P42) 

絵因果経 奈良(8世紀) 東京 出光美術館本

 上記醍醐寺本と共通
(図録『奈良国立博物館 特別展 ブッダ釈尊』図版P161、解説P334)

  絵因果経 巻第三上 重文 奈良(8世紀) 東京 出光美術館本
    上記醍醐寺本と共通 
  (図録『奈良国立博物館 特別展 仏教説話の美術』P48)

絵因果経 国宝 奈良(8世紀) 東京芸術大学本

 マガダ国の王舎城で、火を祀る迦葉三兄弟を化度したところ、頻毘沙羅王が帰依して竹林精舎を寄進したところ、舎利弗、目犍連が帰依したところ、大迦葉が富家を捨て仏道に入ったところなど
(図録『奈良国立博物館 特別展 ブッダ釈尊』図版P162、解説P334)

  絵因果経 巻第四下 国宝 奈良(8世紀) 東京芸術大学本
    迦葉三兄弟化度、頻毘沙羅王帰仏、舎利弗・目犍連帰依、大迦葉仏道入りなど。 
  (図録『奈良国立博物館 特別展 仏教説話の美術』P44) 

絵因果経断簡 重文 平安(12世紀) 愛知 聖徳寺本

 太子がヤショダラと結婚したのち、父王がウダイを朋友に選び、侍女らの歌舞で憂愁をなぐさめたが、太子がカピラ城の四門から出遊して生老病死の四苦を知り、出家するまでの事蹟を描いている。
(図録『奈良国立博物館 特別展 ブッダ釈尊』図版P163、解説P334)

  絵因果経 巻第ニ上 重文 平安(12世紀) 愛知 聖徳寺本
    ヤソダラ妃と結婚したのち、出家するまで。 
  (図録『奈良国立博物館 特別展 仏教説話の美術』P50)

絵因果経 重文 鎌倉(建長6年=1254) 東京 大東急記念文庫本

 成道観照、梵天勧請、向鹿野園、ニ商供養、四天王奉鉢、優波迦外道、目真竜王、初転法輪、化五比丘
(図録『奈良国立博物館 特別展 ブッダ釈尊』図版P163、解説P335)

  絵因果経 巻第三下 重文 鎌倉(1254) 東京 大東急記念文庫本
    降魔ののち地獄、餓鬼、畜生、人、天、涅槃の輪廻を観照(成道)、梵天の請いで説法するところ  (梵天勧請)、鹿野苑(サルナート)に向かい、途中ニ商人から供養されるところ、ウバカ外道を調伏し  たところ、目真竜王が守護したところ、五人の比丘が帰依したところ、鹿野苑での初転法輪のありさ  まなどを描いている。 
  (図録『奈良国立博物館 特別展 仏教説話の美術』P52)

絵因果経断簡 鎌倉(13世紀) 京都 個人蔵

 太子が尼連禅河の沐浴を終え、天人が献じる乳縻を食して気力を回復したところ、憍陳如ら五比丘がこれをみて太子が堕落したと思うところなど
(図録『奈良国立博物館 特別展 ブッダ釈尊』図版P164、解説P335)

絵因果経 巻第四上 奈良(8世紀) 東京 五島美術館本
 ベナレスの長者の子ヤシャが七宝の衣を脱ぎ、仏に帰依するところ。
(図録『奈良国立博物館 特別展 仏教説話の美術』P46) 

絵因果経 巻第四上 奈良(8世紀) 兵庫 頴川美術館本
 ヤシャの朋友500人が出家し、のち五百羅漢となったところ。
(図録『奈良国立博物館 特別展 仏教説話の美術』P46) 

絵因果経 巻第ニ下 鎌倉(1254) 東京 根津美術館本
 出家踰城、山中剃髪、浄居天化身の漁師と衣交換、山中仙人訪問、チャンダカの帰還報告で王や妃が嘆く(挙宮泣悲)。
(図録『奈良国立博物館 特別展 仏教説話の美術』P52) 

絵因果経 巻第三上 鎌倉(13世紀) 福岡市美術館本
 山中修行の太子がアララ仙人とカラン仙人を訪ねるところ。
(図録『奈良国立博物館 特別展 仏教説話の美術』P54) 

絵因果経 巻第三上 鎌倉(13世紀) 奈良 大和文華館本
 太子の意志が固いため追尋をあきらめ、大臣たちが別れを告げるところ。上記福岡市美術館本と本幅は旧松永家本。
(図録『奈良国立博物館 特別展 仏教説話の美術』P54) 

絵因果経 巻第三上 鎌倉(14世紀) 滋賀 個人蔵
 旧勝利寺本の断簡。山中の太子を連れ戻すことをあきらめた大臣たちが帰還し、父王に報告しているところ。
(図録『奈良国立博物館 特別展 仏教説話の美術』P55) 


5 実例その3(釈迦八相図)

釈迦八相図 3幅 鎌倉 山梨 久遠寺本

 上記根津美術館本と一具の仏伝図であったらしい。
 
 第一幅 試芸、遊楽、出家踰城
( 第二幅 根津本)
 第三幅 ニ商主供養・四天王奉鉢・初転法輪、ニ迦葉帰依のうち火竜降伏、祇園布施
 第四幅 獮猴(みこう)奉蜜、提婆投石(?)、三道宝階 (以上『仏画』P215)

  釈迦八相図 3幅 鎌倉 山梨 久遠寺本

   上記根津美術館本と一具の仏伝図であったらしい。
 
   第一幅 試芸、三時殿娯楽、出家踰城
  ( 第二幅 根津本)
   第三幅 ニ商王供養、四天王奉鉢、初転法輪、化五比丘、火竜降伏
   第四幅 獮猴(みこう)奉蜜、提婆投石(?)、三道宝階
  (図録『奈良国立博物館 特別展 ブッダ釈尊』図版P220、221、解説P359)


釈迦八相成道図 重文 鎌倉 三重 大福田寺本

 右下より左下、次いで右中、左中、右上、左上とジグザグに一幅で八相を描く。
 下天入胎、誕生、試芸、遊楽、四門出遊、踰城、出家、降魔、成道、初転法輪、涅槃、分舎利(以上『仏画』P215)

  釈迦八相成道図 重文 鎌倉(13世紀) 三重 大福田寺本

   右下隅に下天托胎。左に誕生、ニ竜灌水。右に試芸。左下方大きく三時殿、四門出遊。右中ほどに  出家踰城、山中剃髪。同じ建物の中に追尋と車匿帰還。図中ほどに降魔。右上隅に成道(初転法   輪)。その左に頻王帰仏。左中ほどに涅槃。その上に金棺出現。左上隅に荼毘、分舎利。
  (図録『奈良国立博物館 特別展 ブッダ釈尊』図版P218、219、解説P358)

  釈迦八相図 重文 鎌倉(13世紀) 三重 大福田寺本

  (図録『奈良国立博物館 特別展 仏教説話の美術』P56) 

釈迦八相図 重美 鎌倉 滋賀 常楽寺本

 第一幅 兜率天宮、第二幅 入胎、第三幅 誕生と試芸、第四幅 遊楽から車匿帰城まで、第五幅 降魔と牢度叉(ろうとしゃ)闘術、第六幅 頻毘沙羅(びんびさら)王帰依、第七幅 三道宝階

 第五幅の降魔の下に描かれた仏弟子舎利弗(しゃりほつ)と須達長者の祇園精舎建立を妨害した外道牢度叉との闘術の場面は、日本の仏伝図では本図と広島持光寺本のみ(以上『仏画』P216)

  釈迦八相図 鎌倉(14世紀) 滋賀 常楽寺本

   第一幅 兜率天、第二幅 下天托胎、第三幅 出胎と試芸、第四幅 歓楽から山中苦行、第五幅  降魔と労度叉、第六幅 頻王帰仏と成道観照、第七幅 初転法輪と三道宝階。涅槃の幅を欠く。
  (図録『奈良国立博物館 特別展 ブッダ釈尊』図版P224、225、解説P359)

釈迦堂縁起 重文 室町 京都 清涼寺

 図版は、巻一第三段誕生と、巻ニ第二段苦行の二場面(以上『仏画』P216)

仏伝図幡 唐(8〜9世紀初) ロンドン 大英博物館本

 上から車匿・犍陟との訣別、太子剃髪、
 中段 剃髪する太子の傍らに剃刀を取る釈提恒因(帝釈天)の姿がみえ、その下方に五人の人物が太子の落飾を礼拝する相がみえる。 
(図録『奈良国立博物館 特別展 ブッダ釈尊』図版P216、解説P357)

釈迦八相図 重文 鎌倉(13世紀) 静岡MOA美術館本

 第一幅 六牙白象が摩耶夫人の胎内に入るところ(下天托胎)、太子の誕生を占うところ(占夢)
 第二幅 右脇出胎、ニ竜灌水、獅子吼、七歩を下方に。上方には三時殿の歓楽、城の四門には老、病、死、比丘を図す。
 第三幅 出家踰城と兵士たちの追尋。上方の山中には車匿らとの別れ、尼連禅河沐浴を図す。
 第四幅 吉祥献草、降魔、最上段には初転法輪を描く。
(図録『奈良国立博物館 特別展 ブッダ釈尊』図版P217、解説P358)

  釈迦八相図 重文 鎌倉(13世紀) 静岡MOA美術館本

    第一幅 六牙白象が摩耶夫人の胎内に入るところ(下天托胎)、太子の誕生を占うところ(占夢)、     下方大きく城門と朝賀する貴顕や車を描く。
    第二幅 右脇出胎、ニ竜灌水、獅子吼、七歩蓮華を下方に。上方には三時殿の歓楽、城の四門     には老、病、死、比丘を図す。
    第三幅 出家踰城と兵士たちの追尋。上方の山中には車匿(チャンダカ)らとの別れ。
    第四幅 吉祥献草、降魔、最上段には初転法輪を描く。

    (図録『奈良国立博物館 特別展 仏教説話の美術』P55)

釈迦八相図 鎌倉(14世紀) 広島 持光寺本

 第一幅(向かって左幅より右幅へ) 下天托胎。上右隅に兜率天、中ほどの建物に摩耶夫人と占夢。下方に夫人の托胎、朝賀に向かう大臣たちの行列を図す。
 第二幅 出胎、ニ竜灌水、七歩。下方の建物の中に占相。建物の四門に老、病、死。
 第三幅 試芸、三時殿、出家踰城。
 第四幅 剃髪。太子の瓔珞(ようらく)を車匿に与える。車匿ら下山、浄居天の漁師と衣交換、尼連禅河沐浴、吉祥草座、火竜降伏。
 第五幅 降魔。下方には釈尊を誘惑しようとする三魔女や折伏されてもとの老婆の姿になって退散する姿がみえる。
 第六幅 労度叉(ロードシャ)闘聖変。祇園精舎建立に反対した外道たちと舎利弗の方術くらべ。
 第七幅 初転法輪、頻王帰仏説法、霊鷲山説法など。
 第八幅 左半に入涅槃。右半上に荼毘、下に分舎利。
(図録『奈良国立博物館 特別展 ブッダ釈尊』図版P222、223、解説P359)

釈迦八相図 明(16世紀) 鹿児島 個人蔵

 第一幅 在天菩薩、下天托胎、誕生。
 第二幅 従園環城、占相、往謁天祠。
 第三幅 書算、試芸。
 第四幅、第五幅 納妃、歓楽、空中警策。
 第六幅 四門出遊。
 第七幅、第八幅 出家踰城、剃髪、車匿帰還。
 第九幅 苦行林、初転法輪、五比丘、牧女献縻。
 第十幅 降魔、魔衆洩瓶。
 第十一幅 三迦葉、尼連禅渡河、頻王帰仏(?)
 第十二幅 酔象調伏、忉利天説法、施食縁起(?)
 第十三幅 涅槃、荼毘、結集など。
(図録『奈良国立博物館 特別展 ブッダ釈尊』図版P226〜229、解説P360)
 


6 実例その4(八相涅槃図)


八相涅槃図 重文 鎌倉 京都 万寿寺本 

 「世尊(釈迦)空に昇り大衆に示す所」(左中)
 「世尊純陀の供養を受ける所」(左下)
 「世尊母のために起きて説法する所(金棺出現図)」(右下) 
 「力士棺を挙げるに動かざる所」(右中)
 「棺、鳩尸那竭羅城を七巡する所」(右上)
 「世尊迦葉(かしょう)のために棺より両足を出す所」(中上)
 「香姓婆羅門舎利を分つ所」(左上) (以上『仏画』P217)

  八相涅槃図 重文 鎌倉(13世紀) 京都 万寿寺本 

   向かって左下が「世尊純陀の供養を受ける所」、その上(左中)が「臨終遺誡」。
   右下が「再生説法」、右中が「金棺不動」、右上が「聖棺自飛旋拘尸那城」。
   中央上が「世尊迦葉(かしょう)のために棺より両足を出す所」、
   左上の「香姓婆羅門舎利を分つ所」で終わる。
   (図録『奈良国立博物館 特別展 ブッダ釈尊』図版P233、解説P361) 

八相涅槃図 重文 鎌倉(13世紀) 鹿児島 竜巌寺本 

 縁辺部向かって右、下から上へ。下天托胎、誕生、灌水、四門出遊、三時殿娯楽。
 同向かって左、下から上へ。出家踰城、追尋、山中剃髪、吉祥献草、降魔、初転法輪。

 内陣部に沙羅双樹の下、入涅槃の釈迦と聖衆五十二類の慟哭のさま、摩耶夫人の飛来を図す。

 内陣上方、向かって右より弧を描いて、
 「力士、金棺を挙げるに不動のところ」、 
 「金棺、拘尸那城を七巡するところ」 、
 「世尊(釈迦)、空に昇り大衆に示すところ」、
 「世尊迦葉(かしょう)のために棺より両足を出すところ」、
 「香姓婆羅門、舎利を分つ所」を描く。

(図録『奈良国立博物館 特別展 ブッダ釈尊』図版P230、解説P360)

  八相涅槃図 重文 鎌倉(13世紀) 鹿児島 竜巌寺本  

    上部中央に最後説法、右下に金棺不動、その上に金棺拘尸城旋回、左上に荼毘と龍王灌水、迦   葉接足、その下に分舎利を描く。
    さらに外陣左右辺を区画し、下天托胎から初転法輪までの仏伝図を描く。
   (図録『奈良国立博物館 特別展 仏教説話の美術』P69)

八相涅槃図 重文 鎌倉(文永11年=1274) 広島 浄土寺本 

 左右下辺の外陣を十六に区画。

 向かって左辺上から
(1) 迦葉接足、
(2) 純陀供饌、
(3) 須跋陀羅(スバダラ)詣倒、
(4) 不明(車争い)、
(5) 不明(羅睺羅悲嘆?)、
(6) 不明(地獄の釜、餓鬼)、
(7) 須○陀羅火定、
(8) 不明(宝座上の釈迦と迦葉童子?)。

 右辺上から
(9) 阿那律、上天して摩耶夫人に告げる、
(10) 摩耶夫人飛来、
(11) 再生説法、
(12) 臨終遺誡、
(13) 金棺内の釈迦と哀泣弟子たち、
(14) 不明(提婆投石?)、
(15) 不明(文殊、阿難?)、
(16) 分舎利

(図録『奈良国立博物館 特別展 ブッダ釈尊』図版P232、解説P361)

  八相涅槃図 重文 鎌倉(1274) 広島 浄土寺本 

    向かって左辺上から(1) 迦葉接足、(2) 純陀供饌、(3) 須跋陀羅詣到、(4) 不明(車争い)  、(5) 不明(阿難悶絶?)。
    下辺左から(6) 成道観照、(7) 須跋陀羅火定、(8) 不明(宝座上の釈迦と童子)。
    右辺上から(9) 阿那律上天して摩耶夫人に告げる、(10) 摩耶夫人飛来、(11) 再生説法、   (12) 虚空に昇る釈迦(臨終遺誡?)、(13) 金棺内の釈迦と哀泣弟子。
    下辺右より、(14) 不明(提婆投石?)、(15) 不明(文殊と阿難?)、(16) 分舎利。

   (図録『奈良国立博物館 特別展 仏教説話の美術』P67)

八相涅槃図 重文 李朝(14世紀) 長崎 最教寺本 

 涅槃図のまわりに、「金棺不動」、「聖棺拘尸城旋回」、「臨終遺誡」、「迦葉接足」、「分舎利」。
 その他、「純陀供饌」、「摩耶説法?」を加える。

(図録『奈良国立博物館 特別展 ブッダ釈尊』図版P234、解説P362)

八相涅槃図 重文 鎌倉(13世紀) 岡山 遍明院 

 涅槃図のまわりに、左下隅に工師純陀から最後の供養を受けるところ、その上に、釈尊虚空に昇り大衆に示すところ(臨終遺誡?)、右下隅に再生説法、その上に末羅力士、「金棺不動」、右上隅に「聖棺拘尸城旋回」、上部中央に「迦葉接足」、左上隅に「分舎利」が描かれている。

(図録『奈良国立博物館 特別展 仏教説話の美術』P64)

八相涅槃図 重文 鎌倉(13世紀) 岡山 自性院・安養院 

 中央の涅槃図(菩薩、比丘、羅漢、大衆、動物の悲嘆の相や虚空から阿那律に先導され降下してくる仏母摩耶夫人を描く)のまわりに、左下隅に工師純陀から最後の供養を受けるところ(純陀供饌)、その上に、最後説法、右下隅に再生説法、その上は「金棺不動」、右上隅に「金棺拘尸城旋回」、上部中央に荼毘と「迦葉接足」、左上隅に「分舎利」が描かれている。

(図録『奈良国立博物館 特別展 仏教説話の美術』P65)

 


 

 それでは、皆さんごきげんよう♪ 


 

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