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(No139) 大阪歴史博物館  特別展「聖地チベット」関連講演会 「チベット文化の白眉 〜密教の美術〜」聴講記 その2

 平成22年2月14日(日)、上記講演会を聴きに行った時のメモの続き。


チベット文化の白眉 〜密教の美術〜

                     種智院大学学長・教授 頼富 本宏

 

 

4.チベット仏教のパンテオン(尊格構成)
 
(1) 仏・如来 顕教仏:釈迦、阿弥陀など 密教仏:大日、薬師など
(2) 菩薩 弥勒、観音、文殊、金剛手など
(3) 守護尊 ヘーヴァジュラ、サンヴァラなど
(4) 護法尊 マハーカーラ、ヤマ、ラモなど
(5) 女尊 ターラー、マーリーチーなど
(6) 財宝尊 ジャンバラ、毘沙門など
(7) 雑尊 十二宮、九曜など
(8) 祖師 パドマサンバヴァ、ツォンカパ、ミラレパなど

 

 

(石野註)

 いつものように、先生からいただいたレジュメの内容は、別囲みで示す。

 また、これもいつも通り、録音はしてない(できない)ので、殴り書きのメモとぼんやりした記憶で、「こんなこと、おっしゃってたかな?」と再構成してるし、若干、レジュメの記載順に合わせて編集しているので、会場でお聴きになっていた人は、「違うな?」と思われるかもしれないが、お許しいただきたい。


 如来とは、悟りを開いたほとけの究極。菩薩は、如来に至る進行形。ここまでは、日本と同じです。

 (3)から(7)がチベット独自のものです。(3)と(4)は、日本でいう明王、 (4)、(5)、(6)、(7)が天部でしょうか。

 あの有名な阿修羅は、(4)か・・・・(7)でしょうか。

 

(石野註)

 ヘーヴァジュラやサンヴァラについて、特に説明はなかったが、ここのHPに参考画像がある。

 頼富『密教』に「『般若・母タントラ』〜本尊にあたるものの多くは、ヘールカという名前で総称される尊格であるが〜ヘーヴァジュラ、サンヴァラ、ブッダカパーラなどの固有名詞をもっている。

 ヘールカは〜ほとんど裸形である。〜明らかにヒンドゥー教の破壊の神シヴァからイメージを借りている。また、明妃(みょうひ)と呼ばれる配偶者をともなう例が多い」とある。


 護法尊は、守護尊よりは、やや地位が低く、単独では本尊にはなれません。

 マハーカーラは大黒天です。
 大黒天には、3種あって、第一が、このマハーカーラのような怖い、戦闘神の大黒。
 第二が台所の神の大黒で、第三が七福神の大黒です。

 ペルデン・ラモは、インドの神々から貰った贈り物を持っています。

(石野註 左写真:ペルデン・ラモは講演会資料から転載。

 騾馬に乗っている。ラモの足の下に見えるのは、人間の頭。
 人間の生皮を敷いた騾馬にまたがっているのである)

 

 

 女尊のターラーとは、観音の奥様です。

(右写真:白ターラーは、講演会資料より転載)

 白ターラーは結跏趺坐(けっかふざ)をしています。

 
 マーリーチーとは、「陽炎」とか「威光」という意味です。

 日本でも戦国武将が守り神としています。
 日本語訳では摩利支天
(まりしてん)です。

 七福神とは、インドと中国と日本の神々、つまり文化が合体されたものです。

 毘沙門天は財宝の天部です。富を表す黄色で描かれることが多いです。

 祖師は、日本の法然や親鸞と同じように宗教の対象となっています。

 ツォンカパは、日本でいう親鸞のような存在です。

 

 


 

 

5.チベット仏教の美術表現
 
塑像・石像    寺院の本尊は木心塑像、庶民のほとけは路傍の石版像
鋳像(金銅仏) 地下資源豊富なチベットは、金銅仏の宝庫。
銅造、青銅造、赤銅造など多種多様
壁画 寺院の白壁は、仏伝図や秘密仏、護法尊の壁画で埋め尽くされる
布画(タンカ) 携帯可能な巻物状の布画。自身の念持仏としたり、供養のために寺院に収めたりする。
 内容は、チベット仏教の尊格全般に及ぶ
木版画  釈迦八相やパドマサンバヴァの八変化などを図案とし、民衆に普及
経典絵(木画) 経典の表紙にあたる板(経板)などに、諸尊の彩画や浮彫を施す
マンダラ  密教経典に説かれるほとけを、一つの聖域空間に収めた一種の世界図。
その精緻さと迫力は、チベット密教における教理と美術の頂点に位置する
法具(仏具) 僧侶が法要で用いる道具やほとけに捧げる供養具を法具という。金剛杵、金剛鈴、金剛橛、仏塔、マニ車(マニコル)など多種
塼仏(ツァツァ)  粘土を金属製などの凹型に押し込んで作る。
供養のため、死者 の遺骨の一部を粘土に混ぜることもある

 


 日本の仏像は木彫りがほとんどで、国宝、重文クラスの像の8割は木像といわれています。

 平安時代までは一木造りでしたが、寄木造りの技法の開発で、大きな木像も可能となりました。

 一方、チベットは、木材は少ないのですが地下資源が豊富なので、亜鉛を混ぜた真鍮など、金銅仏の宝庫です。

 金銅仏は持ち運びにもすぐれています。

 

(右写真:金剛杵・金剛鈴は講演会資料より転載)

 タンカ(布画)は、今回の展覧会でヴィヒヤサマージャやカーラチャクラのものを展示しています。

 ヤマーンタカとは『西遊記』に出てくる牛魔王のモデルです。
 このヤマーンタカなどが描かれた壁画の迫力はすごいのですが、残念ながら、持ってくることができません。


 木版画のテーマとしては、「パドマサンパヴァの八変化」などが有名です。

 経典絵として、日本の平家納経などでは巻物状の経典の最初の部分に描かれていますが、チベットの経典は、1枚ずつに分かれています。

 マンダラは、地面に描かれることも多く、灌頂のとき花を投げて、落ちたところのほとけが念持仏となります。

(石野註 左写真:金剛橛は講演会資料からの転載。

 下の三角の台座上の人間(魔)を橛が突き刺している)

 密教では、左手に金剛鈴、右手にはバジェラ(金剛杵)を持つのが代表的なポーズです。

 この二つは、知恵と慈悲の象徴です。


 ツァツァは、レジュメにあるように遺骨、遺灰を混ぜ込むこともよく行われます。

 六道輪廻で、来世で、少しでもよいものに転生できるように、との願いをこめるのです。

 

 


 

 
 どうもお疲れ様でした。

 
  

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