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(No103) 講演「音声菩薩の奏でる音とは」聴講記 その2 

 2007年9月26日(水)、講演者は東大寺執務執事 狭川普門先生・・・・・の続き。


 


【 3.東大寺の木のお話 】

 全国的に、ここ数年松が枯れるというのが話題になっています。
 これはマツクイムシのせいと言われていますが、これは冤罪なんですね。実は酸性雨のせいなんです。

 東大寺では100年以上の松がことごとく枯れてしまいました。大仏殿の境内にある樹齢300年の松も枯れてしまいました。

 酸性雨で松が弱ってしまったところにマツクイムシがたかるから、枯れちゃうわけですね。

 それで、100年以上の松が枯れてしもたんで、残ってる松は若くなりましたので、さすがになかなか枯れません。

 ところが、東大寺はお水取りの時、大量の焚き木が要ります。最近松が枯れないんで焚き木が不足してきました。
 で、私がひらめいたのが県の公園管理課に相談することでした。奈良県は山も持ってますからね。もう何本かもらってます。

 境内で松が1本倒れても文化庁に報告せな、あかんのですよ。「うたて」の最上級ですわ。
 あ、「うたて」ってわかります?「うたて」ゆうのは「めんどくさい」の最上級なんですが、そん中でも最上級なんです。

 現状維持の報告だけでも大変やのに、現状変更ゆうたら、書類を9種類出さないとあかんのですよ。許可が出るまで早くて半年ですわ。
 この辺は全部第一種風致地区ですからね。

 東大寺近辺でも、県の土地や手向山(八幡宮)の土地、うちの土地とすごく入り組んでるんです。
 つい、こないだも北門近くの木が倒れたんですが、文化庁から、さっそくねぇ、「普門さん、木ぃ倒れたら、すぐに報告してもらわんと」とかゆうて電話がかかってきました。

 すぐにねぇ、「あら、県の木ぃでんがな!」って、久しぶりに文化庁にツッコミ入れることができました。

 さて、江戸時代に大仏殿を復興した時、4年で建築してるんですよ。今では全く無理です。仮に建築技術が発達したとしても、建築用のヒノキがありません。
 文化庁が復興した大極殿でもう終わりですわ。それも、こないだ見学に行きましたが、使ってる木も細いですし、もう割れてました。

 興福寺さんなんかは、もう国内では無理やゆうことで復興用の木材はアフリカで確保してはるそうです。

 ともかく山が荒れて、保水能力がなくなっています。以前は長いこと雨が降らんでも川は流れてましたが、この頃はすぐ枯れます。
 逆に、ちょっと雨が降ると鉄砲水みたいに上流から木ぃだの何だのいろんなものが流れてきます。

 最近はちょっと雨が降ると白蛇川があふれましてね。大仏殿の横の水路があふれ出して、大仏殿がタージマハールみたいになるんです。水の上に浮かぶんです。こんなことは、ほんま今まではありませんでした。
(※ 石野注)

 手向山八幡宮や白蛇川などの位置については、こちらのHPの境内図を参照していただきたい。



【 4.最近のモラル・マナーの低下について 】

 
八角灯籠の横に手水舎(ちょうずや)という、水で手や口を清める場所があります。大仏殿の参拝は5時半までです。それも、別に時間になったから出て行けとせかしたりはしません。
 手水舎の水は5時28分で止めます。止めても、半までは充分水は出るんですよ。ですが、先日、そのことを2時間かけて文句を言った親子連れがいました。

 金銭的なことは言わないんですよ。向こうも慣れてるんでしょうね。でも、この2分間の精神的損害はどうしてくれるんだと言うわけです。

 まあ、こちらもちゃんと顧問弁護士とか社会保険労務士さんとも相談して対応してます。

 お水取りの時、中書院が焼けたのもお松明の火ぃや、ないんです。タバコの火の不始末なんです。

 最悪なんはカメラマンです。なんぼあかんゆうても、三脚、立て放題です。もう、勝手にこっちで片付けてしもたるんです。 
 すると向こうもフェンスに三脚を鎖でくくってしまいよるんですが、こっちもチェーンカッターで鎖切ってしまうんです。県警の協力もろてね。

 警察も「ええ加減に、お水取りの間だけでも入場料取りなはれ、そしたら、観客減るのに」てゆうんですが、あれは観光行事やのうて、宗教行事ですからね。

 先日、転害門が落書きされました。それで柵を15cm高くしたんですよ。
 たくさん監視カメラも仕掛けてるんですが、切り替えで2分半ほどタイムラグがありましてね。その間にやられてしまいました。まあ、水で落ちたんですけど。

(※ 石野注)

 平成19年6月8日付けの奈良新聞によると、「奈良市雑司町の東大寺転害門(国宝・奈良時代)で7日までに、柱と柱をつなぐ腰貫(高さ約1.5メートル、長さ約4メートル)の中央部分に、水性塗料で落書きされているのが見つかった。同寺関係者が同日、水で塗らしたタオルで拭き消した」とある。

 鳩が多いんです。ハッとしてGOOD!ってゆうてる場合やない。土鳩が多いんです。こないだ掃除したら鳩の糞塚ゆうか、バケツで120杯になりました。

 転害門の上にとまる鳩がね、ポッポウ、ポッポウ・・・・・って、阪神巨人の阪神かっ!

 猫も多いんです。でもね、猫が集まるゆうことは近所の人がエサやってるからでしょう?でも、東大寺さん、猫何とかしなはれってゆうてくるんです。

 やっぱ多いのは鳩ですね。昔も門の内部に網をかけたことがあるんですが、よく鳩がそこの網に首を引っ掛けてねえ。ぶら〜んとぶら下がるんで、やっぱり、これは具合悪いなあ、と。
 最近は文化庁も現状を守るためなら・・・ということで多少はギザギザの鳩除けの設置とかも認めてくれるようになったんですけどね。

 二月堂のぼんぼり灯籠にも鳩がとまるので、最近は忌避剤という薬品を塗ったりするんですが、これもすぐに住民から、人体に影響はないですか・・・とか問い合わせが来るんです。そんな危ないもんは使ってませんて。
 いろいろしてるせいか、最近は少し鳩が減ってきたような気がします。興福寺さんも減ったとおっしゃってます。ま、どっかよそへ行っただけなんでしょうが。代わりにカラスが増えてきたような気もします。 

 梨木神社や城南宮を爆破したゲリラが、天皇がいらっしゃる東大寺を狙った時、警察の指導でずっとごみ箱が撤去されることになりました。爆弾が仕掛けられては大変ですから。
 しかし、何万人も参拝される東大寺で、ごみ箱がないと大変なんです。
 それで、大仏殿の境内だけごみ箱を復活させることになったのですが・・・・すぐに紙おしめが捨てられていたんですよ。全く目を疑いました。

 


 ここでいったん切らせていただく。

 どうもお疲れ様でした。

 
  

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