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中国美術展(3)大阪歴史博物館「上海博物館展」鑑賞記その1

1 展覧会の内容について

 上海博物館は、故宮博物院、南京博物院と並んで中国三大博物館にあげられているそうだ。
 上海旅行の際に訪れたが確かに素晴らしい博物館であった。

 大阪市と上海市が友好都市提携30周年を迎えるのを記念して上海博物館の文物104点が展示されるとのことなので、さっそく行ってみた。

 なお、場所は大阪歴史博物館。会期は平成16年3月17日から5月10日まで。


2 鑑賞雑感

(1) 青銅器・銅鏡・玉器

 本展覧会は、4つのパートに分かれている。
 最初は、「第一章 青銅器・銅鏡・玉器 鬼神と神仙の世界」と題されている。

 第一章では、出品リストでいくと「1 雲文鼎」から「46 獣面穀文玉璧」までが展示されている。

 この展覧会でも音声ガイドの貸し出しがあった。私は借りなかったが、全体で30点が音声ガイドの対象になっていた。
 また、26点の国家一級文物(中国における「国宝」)が展示されている。

上海博物館展チケット

 さらに、開催に先立って、2月22日に情報先取り講演会「中国美術と上海博物館の名宝」があった。
 講師は京都大学人文科学研究所の曽布川 寛教授である。

 こうした色々な要素も取り混ぜて、適宜抜粋しつつ、ご紹介していきたい。


 まずは青銅器。

 リスト1の雲文鼎(うんもんてい。夏晩期。前18世紀〜前16世紀。高さ18.5、口径16.1)。
 図録の解説文では、「中国の青銅器は夏・殷・周の3代、約2000年の歴史を有」し、「河南省偃師県二里頭の夏代晩期遺跡(約前18〜前16世紀)から出土した青銅器が現在知られる最古のもの」とある。
 この雲文鼎は夏晩期とされている。雲だか波だかわかんない凸線がぐるっと取り巻いていて、実に素朴。


 リスト3の獣面文壷(じゅうめんもんこ。殷中期。前15世紀〜前13世紀。高さ25.3、腹径15.3)は音声ガイドの1番目。
 講演では、殷・周の青銅器は祭器として使用されたとあった。


 リスト8の鳳文卣(ほうもんゆう。殷晩期。前13世紀〜前11世紀。高さ35.3、腹幅26.6)は音声の2。
 卣(ゆう)は、酒を入れる器。いかにも殷の青銅器って感じ。(←何の解説にもなってないなあ)


 リスト11の鳳文犠觥(ほうもんぎこう。殷晩期。前13世紀〜前11世紀初期。高さ12.7、口径19.5)は音声の3。
 觥(こう)も酒を入れる器。ちゃんと4本脚がついた牛の形をしている。そして体表全面は鳳などの文様で埋め尽くされている。


 リスト16の「古方尊(きこほうそん。西周早期。前11世紀。高さ21.8、口径20.1)は国家一級文物。
 おおっ、こいつはものが違うなって感じがした。(←どうも具体性に欠けるなあ)
 図録に「四隅を扁平な鰭状の突起で飾り」とあるが、まるでステゴザウルス。


 リスト18の鄂叔簋(がくしゅくき。西周早期。前11世紀。高さ18.5、口径18.1)は国家一級文物で音声の4。
 底が見える展示がしてあった。内側に鈴が吊るされている。簋は、食物を盛る器。


 リスト20の小克鼎(しょうこくてい。西周中期。前10世紀末。高さ56.5、口径49)は国家一級文物。
 内側に72字の銘文が鋳込まれている。「上海博物館には大克鼎も収蔵されている」とあったので、以前買った『上海博物館 中国古代青銅館』という図録を見てみた。大克鼎は載っていたが、小克鼎はなかった・・・・・・。


 リスト21の史頌鼎(ししょうてい。西周晩期。前9世紀。高さ37.3、口径35.4)は国家一級文物で音声の5。62字の銘文。


 リスト22の楚大師登鐘。(そたいしとうしょう。春秋早期。前770年〜前7世紀。最大高さ25〜最小高さ14.2)は音階を形成するため大小の鐘を組み合わせた編鐘。
 音声ガイドの6番目。会場では、編鐘のメロディが流れていた。


 リスト23の鳥獣龍文壷(ちょうじゅうりゅうもんこ。春秋晩期。前6世紀〜前476年。高さ44.2、腹径25)は国家一級文物。
 50以上の動物が配された、リズミカルで華麗な青銅器。


 リスト24の双龍絡文」(そうりゅうらくもんれい。春秋晩期。前6世紀〜前476年。高さ28.3、腹径33.3)は国家一級文物。
 「れい」は、頸が短く、肩が強く張り、腹が底へとすぼまる器。(縄)絡文は縄で縦横に縛ったような文様。


 リスト25の象嵌狩猟画像豆(ぞうがんしゅりょうがぞうとう。春秋晩期。前6世紀〜前476年。高さ20.7、口径17.5)は国家一級文物で、かつ音声の7。
 本展覧会のメインの一つと言ってよいだろう。図録の表紙にも、チラシにも活躍している。(冒頭のチケットも同じ)
 真ん中で大写しになっているチラシ表面はここから。なお、豆とは、食物を盛る高杯。

  
 リスト26の宴楽画像杯(えんがくがぞうはい。戦国早期。前5世紀〜前4世紀中頃。高さ6.2、口幅14.9)は国家一級文物で音声の8。
 楕円形の飲食器で、内側、外側に建物、動物、人物などが鏨(たがね)による点描で描かれている。これに限らず、本展覧会では文様などを拓本で別途表示されているのでわかりやすい。


 リスト29の越王剣(えつおうけん。戦国早期。前475年〜前4世紀中頃。長さ54.7、剣束幅4.8)は国家一級文物。
 鐔(つば)の両面にはトルコ石が象嵌されている。越王勾践の子、與夷の剣。
 この越王剣も豪華な感じであったが、リスト30の円茎剣(えんけいけん。戦国早期。前475年〜前4世紀中頃。長さ61.6、剣束幅5.1)も刃先がぴかぴかと鋭利だったのが印象的。


 さて、青銅器のトリ、リスト31の八牛貯貝器(はちぎゅうちょばいき。前漢。前206年〜8年。高さ51、幅39)は国家一級文物で音声の9。
 貯貝器とは、安産を象徴する子安貝を貯めておく容器。その名のとおり、蓋の上には8頭の牛がいる。真ん中の牛は、一回り大きく、銅鼓の上に立つ。
 よく見ると、体表の模様が、全身単なる毛並み風の牛や、部分部分で丸印がうたれているものなど、それぞれ異なる。青色の顔料のようなものが残っている牛もあった。

 胴の部分には虎が二頭。蓋から牛が落ちてきたら喰っちまうぞと待ちかまえている。この、両側の虎が、いわゆる虎形の耳(取っ手)なのだが、片方の虎の背中には2箇所ちぎれたような痕が残っていたので、最初は虎の背にさらに半円形の耳が付いていたのかもしれない。
 画像については、チラシの裏面をどうぞ。

 なお、図録『上海博物館 中国古代青銅館』には、八牛はなく、代わりに七牛貯貝器が載っていた。
 最初は名称の誤記かな?とも思ったが、牛の角の感じ、虎の造形、足(八牛は「獣足」になっているが、七牛は指が分かれていない、ただの足)など、七牛の方がやや素朴な感じだった。
 そういえば、七牛の虎耳は、尾をくるりと巻いて背中に付け、環耳のようになっていた。八牛の虎もきっと最初は尾があったのだろう。

 

 


 続いて、銅鏡が5点、展示されていた。

 リスト34の張氏車騎神獣画像鏡(ちょうししゃきしんじゅうがぞうきょう。後漢。25〜220年。直径23.2)は、音声ガイドの10番目。
 リスト33の内清四霊鏡(ないせいしれいきょう。前漢。前206年〜8年。直径18.8)は、青龍・白虎・朱雀・玄武の四霊が配されているが、これは、天禄・辟邪(へきじゃ)などの神獣が配されているようだが、ちとわかりにくい。

 


 第一章最後は、玉器関係。

 リスト39の神像飛鳥文玉j(しんぞうひちょうもんぎょくそう。良渚文化期。紀元前2500年頃。高さ5.1、外径7.1)は国家一級文物で音声の11。
 玉jといえば、地を表す四角の中を、天を表す円が貫く。つまり、方柱の内側を円筒形にくりぬいて、王権を象徴するものだ・・・と以前本で読んだ。
 リスト38の玉j(良渚文化期。前2500年頃。高さ3.9、外径8.3)は白いが、これは全体に薄茶色で、ところどころ緑や濃い茶が混じっている。
 本来の「天円地方」というより短い円筒形に近く、ブレスレットに使われたらしい。

 
「神面の眼角の突起がこの神人のシンボルである」とのことだが、メンタマが両側に飛び出していて、ケロヨンのようである。(←どうも、比喩が古い)
 画像は、チラシの裏面で。


 
リスト43の緑松石象嵌銅内玉戈(りょくしょうせきぞうがんどうないぎょくか。殷晩期。前13世紀〜前11世紀。長さ27.3、幅7.3)は、権力と威厳を示すための象徴的な武器。


 第一章の展示物で、全体の約半数に及ぶとはいえ、少しのんびり歩きすぎた。
  長くなるのでここで、いったん区切るが、あとはもう少しスピードアップしたい。

※注
 大阪歴史博物館HPの「青銅器・銅器・玉器」のページで、上記の雲文鼎鳳文卣史頌鼎象嵌狩猟画像豆八牛貯貝器神像飛鳥文玉j緑松石象嵌銅内玉戈の画像が見られます。
 上海博物館展が終わってしばらくしたらリンク切れになると思われますので、お早めにどうぞ。  

 

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