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(No21) OSAKA演博 2010 鑑賞記 その3

 「OSAKA演博2010」とは、何なのか?

 ともかく、そんな大きな国際イベントが旭区の区民センターや芸術創造館で開催されている・・・・・の続き。

 


名無しのエリーゼ

出演:シアター・メトロノーム(ドイツ/演劇)

 キャスト:カリン・シュルダー/アンドレアス・ゲール 

 懐中電灯を持った軽装の少女が立っている。
 舞台には線路のようなものの上に転がったいくつもの鞄、トランク。

 そして、電話が上の方についた簡単な事務机風のもの。
 床に置かれた旧式のタイプライター。


 舞台奥には、コートのかかったハンガー台。

 雷鳴が轟く中、少女の独白が始まる。



「雨の日には屋根裏部屋を探検するの。素敵な古いものがたくさんあるから・・・・」

 少女はほこりだらけの日記を見つける。おばあちゃんの若かった頃のことがつづられている。

 彼女は、おばあちゃんの花柄のワンピースを着て、ハンガー台のコートを取って身にまとう。

 コートがかかっていた部分には時計が隠れていた。
 時計の針は猛烈な勢いで逆回転を始める。(無論、昔に戻っているということ)

 と、ハンガー台の奥にいたのか、制服を着た駅員が動き出す。

 線路を飛び越え、事務机にタイプライターをセットし、報告文を打ち始める。

 と、トランクを椅子代わりに座っているエリーゼと目が合う。

 彼女は戦争で爆撃を受け、この国境の小さな駅まで逃げてきたらしい。家族も、身分証明書も、身を寄せる場所も何もない。

 駅はホテルではない。しかし、駅員ルーカスには彼女を追い出すことはできなかった。
 それどころか、眠り込んだエリーゼに自分の毛布をかけてやり、温かいコーヒーを振舞う。

 興に乗って一緒に踊ったり、我に返って「規則じゃ駅で踊っちゃいけないんだ」とたしなめてへそを曲げられたりしながらも、幸せな日々が続く。

 彼は報告書に綴る。「彼女が来てから、一本も電車が来ない。きっと、もう来ないんだろう」。
 しかし、駅の電話のベルが鳴った。モラトリアムの終焉を告げるベル。
 さて、駅員ルーカスの取った行動は・・・・・・?


 具体的には書かないが、ルーカスの行動は非常に「男前」であった。

 さて、今日は昼からマイム、歌と朗読、ダンスと演奏、人形劇と続いたので、本格的な演劇はこれが初めてであり、歌を別として、台詞があるのも初めてだった。
(なお、60分前後のプログラムが効率的に組まれており、1日に何本もの作品が鑑賞できるのも「演博」の特徴の一つである。私は、この日、5作品をハシゴした)

 今回、ドイツ語の演劇ということで、日本語字幕が出たが、非常にしぼりこまれた字幕で、延々ドイツ語の会話が続くが字幕が出ない場面もしばしばあった。

 観終えて、1階まで階段を下りている時、同じように下りている後ろの親子の会話が聞こえた。
 父親が「もっと、字幕あったら良かったのにな」
 すると、娘(年格好などは振り返っていないので分からない)は「でも、出んでも分かるゆうことちゃう?」

 「どこまで説明するか」というのは、永遠の大きなテーマだと思う。落語を聴いていて、よくそう感じる。
 古典落語には、時代が変わったので現在では一般的でない事柄、用語などがよく出てくるし、それがオチに関わる場合も多い。

 しかし、それらをあまりくどくど説明してしまうと、知っている者にとっては「野暮の極み」のように映るし、想像力を働かせる余地がなくなるやないか!と思う。
 されど、そもそも分かってもらえなければ何にもならない。

 逐語訳的にすべて漏れなく訳せ、とはもちろん言わない。
 エリーゼが線路のところで轢かれるような格好をして、目玉が飛び出るような手つきをしてるのは、まさにそんな意味だろうし、ルーカスが、はぁ〜っと手先に息を吹きかけ、こすり合わせた後で、外を歩くとき、ギュエッ、ギュエッと蛙のような声を出しているのは、積もった雪を踏みしめる時にそんな音が出るのを表現してるんだろうなぁとは想像がつく。
 「(雪がきしむ音)」なんて字幕は要らない。

 しかし、この劇は無言劇ではなく、普通の演劇だ。なら、すべての台詞には、それなりの意味があるから言葉として発せられているのだろう。

 ドイツ語の分かる人と、分からない私とでは、楽しめ方に相当の差があるのでは?もう少し字幕が多ければ、もっと良く内容が理解できたのでは?と感じた。

 あまり延々とドイツ語会話が続くのに字幕が出ないと、「いったい、今の会話は何ゆうてんねんやろ?」「字幕出す機械、壊れてるんちゃうかな?」などと感じてしまい、ややストレスを感じてしまうのだ。

 もっとも、本劇団は世界中で公演しているということだから、演者側で、明確な意図のもと国際版の字幕を規定しており、それに従ったんだ・・・と言われたら一言もないが。


 
 どうもご退屈さまでした。
  
 

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